表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エテルネル ~光あれ  作者: 夜星
第五章 竜剣士ルナ
59/93

才能の片鱗 

 レミナレス王家は、太古より神竜の血を継承する一族として、三つの龍の氏族を従える。


 それは(すなわ)ち、〝黄龍族〟と〝白龍族〟そして闇に()ちたがゆえに、今はもう滅びてしまったとされる〝黒龍族〟であった。


 人の身でありながら神の力を宿(やど)すレミナレス王家──すなわちルナが生をけた〝神竜族〟は、黄龍族(ライガルの一族)・白龍族(ベテルギウスの一族)と同様、代々、一子相伝としてその秘儀と力を受け継いできた。


 しかし、その強大過ぎる力をまっとうできた者は、神竜族の歴史において(かい)()のみ。

 そして真の継承者に恵まれぬまま、永い時の流れにそって〝神竜族〟より独立した三つの分家である龍族──黄龍族・白龍族・黒龍族を〝神竜族〟は自らの「守護龍族」として(まつ)り上げていた。


 つまり、すでに語られた双頭守護神たちは、本家である神竜族の従族であり、王女ルナのレミナレス王家を守護する宿命のもとにある。



           挿絵(By みてみん)



 ルナは、幼い頃から特別な力を持って生まれた。


 その()(てつ)もない力の片鱗(へんりん)を見せたのは、彼女がまだ六つの歳を数えたばかりの頃である。


 周辺の()(じゅう)(とう)(ばつ)(おもむ)いた国王の遠征(えんせい)間隙(かんげき)を突き、魔女王配下の魔物たちが、エルシエラに(きゅう)(しゅう)()()けたのであった。


 さらにはクレティアル城にいる魔女王側の内通者がこの(いち)(まく)()(たん)していたため襲撃はあっさりと成功し、王女ルナは拉致(らち)された。


 だが驚くべきことにルナは彼らに連れ去られた後、獰悪(どうあく)な魔物たちから単身逃げきり、その(さい)に敵の幾体かを自身の剣で()()いたのだった。

 まだ、ほんのたしなみ程度にしか伝授(でんじゅ)されておらぬはずの剣術の心得を頼りに、物心のついたばかりの幼い娘が、である——。


 そして、幼女の救出劇に手を貸した何者かによる(ちから)()えもあり、彼女は無事にエルシエラに()(かん)することができた。


 幼い王女がさらわれるという、痛ましい大事件に騒然となっていたクレティアル城の早朝の正門前で——漆黒のマントに身を包んだ女に付き添われて、赤紫マゼンタ色の髪をした女児がひょっこりと現れる。


「ルスタリアの王女ルナ」を()(しょう)する、愛くるしい幼女の身元確認に(しゅ)(えい)たちが泡を喰らっていた間に、随伴(ずいはん)していた黒衣の女は忽然(こつぜん)と消え去った。

 それまでの経緯いきさつや立ち会った守衛たちの印象から、その女の(じょ)(りょく)があってこそ王女が生還できたのは間違いないと判断された。


 神話に登場する魔女のごとくかおまで黒いフードでおおい隠しながらも、匂い立つような妖美さを感じさせる若い娘であった。


 王家は国を挙げて、恩人とおぼしき〝漆黒の魔少女〟の行方を捜したが、彼女の手掛かりは(よう)として(つか)めなかった。


 その後ルナは、レミナレス王家に伝わる秘剣の奥義を本格的に学び、また、積極的にルスタリアの格闘術までも身につけて、若干十四歳にして剣術・体術の双方において(かな)う者のいない無双の使い手となっていた。


 少女は密かに限りない高みを目指していた。目標とする者が——彼女の中で(つよ)(あこが)れる存在があった。


 必ずや、いつか会いたいと思う人……そして、いつの日か並び立ちたいと願う人……そのためにも……。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ