3-14 事件捜査開始《ケース・スタートアップ》①
違法増築されたアパートに湾港工業地帯、サイケデリックな歓楽街にゴミ溜めのスラム街など、清潔感からかけ離れた景観ひしめくプロメテウス最下層にあって、A区は漂白された空間と呼ぶに相応しい区画である。
B区の北、ネザー・リバーを支流とするミッドランド・リバー沿いに位置して、最下層の行政と治安の司令塔を司る重要機関がひしめく土地。はるか東側に位置するE区――かつて《番外地》と呼ばれていた巨大スラム街へ鋭い一瞥を投げかけるのは、階層別に組織化されたプロメテウス市警のひとつたる第四警邏部門の本庁舎……特殊加工された外壁模様から《虹鱗盾塔》と渾名される三十階建てのビルこそ、ブランドンとルル・ベルが今まさに向かっている場所だった。
「見知らぬ女が暮らしてた? ピートさんの自宅アパートにですか?」
運転席に座ってハンドルを握り締めるルル・ベルが、バックミラー越しに怪訝な表情をブランドンへ向けた。運転はマニュアルだ。自動運転に切り替えても良かったが、万が一の事態に備えて、計器類への電子的干渉を警戒してのことだった。
「え、でも、お母様と一緒にプロメテウスを出ていくつもり、だったんですよね?」
「ああ、そのはずだった。少なくとも、俺はそう聞いていた」
ブランドンは頷いた。意識せず、神妙な面持ちになってしまう。
「玄関先に出たのは若い女だった。それもフューリーオーグだ。俺が見た感じでは、女性は一般人って感じだったが……ピートなんて人は知らないの一点張りだ」
「その女性の発言が真実なら、ピートさんはブランドンさんに嘘をついていたってことになりますが」
「そうなるな」
「もしそうなら、なんのために?」
「……わからない」
ブランドンの途方に暮れた台詞を乗せて、ギルド所有のオイル・カーは、ミッドランド・リバーに架かるファイアウッド・ブリッジを走行していた。
「(本当に俺は、アイツのことを何も知らなかったんだな)」
後部座席に座るブランドンは、物憂げに窓からの景色に視線を向けている。汚染されて銀色に乱反射する水面をじっと見つめながら、彼はつい一時間ほど前の出来事を思い返していた。
ピートが自分宛てにとギャロップ・ギルドに預けた謎の小包みと、その中身。自らの血に沁み込んで拭うこと叶わない悪夢的な事件を思い起こさせる、琥珀色の液体。超小型冷却保管筒に収められたEN。いったいピートはどこでそれを入手したというのか。ENとブランドンを引き合わせて、何かしらの化学反応が起こることを期待していたというのか? だが、なんのために? 考えてもわからなかった。
『ひとまず、ブランドンとルル・ベルは本件の事件担当官に会って、状況の再確認と捜査に当たるように。アイリスはマリオに連絡をとって、発破をかけてやってくれ。それと、ストリートでの聞き込みも頼む。ぼくとナヴィは、メモリーカードの解析を進めるよ』
てきぱきと指示を出し、そして最後に、ミハイロはブランドンへ得意げな笑みを投げかけた。
『担当官へはすでに必要な書類一式を電子メールで送付済だ。君の経歴が邪魔立てして事件に介入できないという事態は、これでどうにか避けられそうだな』
それこそ、昨晩ミハイロと夜通しで作成した申請書類一式が大きく関係していた。
市警の外部協力者に関連する協定に基づいて考えるなら、前科持ちのブランドンが現場捜査を主とする暫定捜査官に任命されるなど、まずありえない。だが、被害者が死亡する直前にホワイト・ギルドへ事件に関連していると思しき証拠品を送付し、同封されていた手紙にブランドンの名が言及されていたとあっては、話はまた変わってくる。すなわち、ブランドンは事件の重要参考人という立場に立たされたのだ。
これはある意味、市警を相手にした情報戦でもあった。どちらが先にブランドンへ接触できるか。図らずとも、先に唾をつけることになったのは、ミハイロの方だった。彼はエックスから受けた連絡を契機に、ブランドンを重要証人としてカテゴライズすることが可能かどうかの検討に入り、法務局とギルド協会の許可を得て、ルル・ベルを動かした。
この状況下でブランドンを暫定捜査官に任命することは、同時に、彼の行動監視業務の履行条件を満たし続けることが必須となる。無論のこと、捜査活動中にブランドンがギルドの監視を離れて逃亡を計るか、捜査の妨げになるような事態を引き越した場合は、監督業務を怠った罰則として、ギルド側に金銭的および社会的ペナルティが発生する。
そこまでのリスクを背負ってまで、ミハイロはブランドンを本件に引き込むことを画策した。ひとつの賭けに出たというわけだ。
さらに、不幸中の幸いというべきかどうか。ブランドンは身元不明者からの襲撃を受けている。これがダメ押しとなった。事件の重要参考人という立場の他に、重要保護対象者としての属性をも獲得することになったからだ。
ミハイロは監視と保護の両側面から、ブランドン・ブリッジスの暫定捜査官任命を申請し、さきほど受理されたばかりだった。
「そのお話、あとで秘匿通信でギルドのみんなに共有させてもらっても良いですか」
「ああ、そうしてくれ。俺ひとりじゃ、この謎は解けそうにもないからな」
「すみません」と、ばつが悪そうにルル・ベルは言った。「規定上、暫定捜査官は外部協力者という立ち位置になるので、秘匿通信のアカウントを割り当てられる権利がなくて……」
「それに、行動を監視されている立場だからな」
「た、建前ですよ!? あくまで建前であって! 書類上の戦略というやつで!」
不満げに声を漏らしたブランドンを宥めようと、ルル・ベルが必死に言い訳を口にした。その慌てぶりが妙におかしくて、ブランドンはピートの事件以降、はじめて表情をほころばせた。
「わかってるわかってる。もちろん冗談で言ったんだ」
「そ、そうですか。それはなにより……」
「ちなみに聞くが、これから会う予定の事件担当官にも、この話を共有させるんだろ?」
「え? あ、はい。まぁ……そうなりますね」
「どういうヤツなんだ? 知らない仲じゃないんだろ」
「何度かお仕事をした相手ではありますけど、正直、あんまり良い印象はありません」
ルル・ベルの声色は強くないが、それでもはっきりと悪印象を持っていることを言い切った。ブランドンは意外に感じた。誰に対しても誠実な対応を取りそうな彼女がこんな態度を見せるということは、よほど難のある人物なのだろうか。
「ホワイト・ギルドのことを嫌っているんですよ、その人。口には出しませんが、言葉の端々からそういう匂いが伝わってきます。管理監督人って役職が、バッチリ似合う人って感じで」
「ギルドの行動をがんじがらめに支配 したいタイプか。典型的な市警幹部だな」
「まぁでも、ボスがあの手この手を使って煙に巻いてくれるので、そこまで行動上の制限は受けませんけどね」
そこで、車体がわずかに左側のガードレールへよれる感覚があった。海から吹く強風のせいだ。それでも、ルル・ベルの表情に緊張は走らない。見た目の割には運転に慣れているのか、慌てることなくステアリングホイールを切り返して、バランスを取り戻す。自動運転に悪い意味で慣れている若者では、こうはいかない。
「……すまない」
「え? どうしました?」
「いや、その……運転、任せっきりになってしまって……」
声が萎んでいくのは、若干の不甲斐なさのせいだった。しかしこればかりはブランドンにもどうしようもなかった。
あの事件が起こってから、一度も車を運転しようと思ったことはない。ステアリングホイールに手をかければ、血濡れた記憶がフラッシュバックするのは目に見えていた。本当は後部座席に座っているだけでも精一杯なのだが、さすがにそんな我儘を言っている場合ではない。己の心が痛むことより、いまはピートの受けた苦痛の根源を突き止めることの方が先決だった。
「変に気負わなくても、大丈夫ですよ」
ルル・ベルが朗らかな調子で言った。そこに、朝食の場で見せた翳りは微塵もなかった。
「わたし、運転好きなので」
「そうなのか」
「なんというかハンドルを握っていると、自然と考えがまとまってくるというか。そもそも機械をいじるのが好きなんですよ。はじめて車を運転した時も事故起こさなかったし。性分に合っているんでしょうね」
「ずいぶんと手慣れているようだが、免許取得からだいぶ経つのか?」
「この仕事を初めてからだから、五年くらい前? えっと、十七歳の時ですね」
――すると、いまは二十二歳ということか。
ちらりと、バックミラー越しにルル・ベルの顔を盗み見る。宝石のように赤い瞳には幼さの余韻があり、白磁のように白い肌の描く曲線はシャープだ。あの身元不明の蟲人間の強襲を受けた日の夜も思ったが、大人の女性といった雰囲気はなく、どことなく少女然とした印象が強い。かなりの童顔と言って良いだろう。
その童顔にはそぐわないほど、いまのルル・ベルの衣装は「ちぐはぐ」で「過激」の一言に尽きる。腰の回りにはドロップ入りのポーチのほかに、色とりどりのカラビナを節操なく括りつけ、ジーンズの風合いは左右非対称だ。見ると、右足の部分はダメージ加工が酷くて、細い素足が露出してしまっている。半袖ブラウスはくすんだピンクベージュでありながら、刺繍はキューバシャツのそれに似て、南国文化の陽気な印象を与えつつ、蝶の羽模様をしたタトゥーシール・タイプの封言呪符を両腕に呪身しているせいで、麗しさや可憐さとは皆無。むしろ、得たいのしれなさを見るものに与える。
いや、そういう効果をわざと期待して、ルル・ベルが自ら選んだのだのだろう。きっとそうだと、ブランドンはアタリをつけた。外部の視線から来るストレスが、呪学療法士らが体内で飼う呪力生成菌の格好の栄養となるからだ。呪術関連の事件を担当したこともあるブランドンは、そんな豆知識を思い出しながら、興味本位に尋ねた。
「呪術はどこで習ったんだ? 最近はいろいろと物騒だから、《アカデミック》の試験を受ける人も年々減少していると聞くが」
「もちろん、正規の師弟教育を受けました。二年間。幸いなことに試験は一回でパスできたから、安心しました」
「たった二年で現役合格? すごいな」とブランドンは素直に驚嘆した。「試験の平均合格必要年数は七年くらいだと聞いたことがあるが」
「たまたま、ラッキーだったんですよ。私は人に恵まれていたというか。環境が特殊だったのもあって……えっと、その、そういう自分がやっていけるのは、周りに良い人たちがいてくれたおかげです」
「本人の資質も大いに関係しているんじゃないのか? 俺も市警にいたころ、呪術関係の事件をいくつか担当したことがあるが、呪学療法士は才能が全てだと言い張る奴らが多かったよ。そもそも、呪力の核になる《細菌》を腹の中に飼わなきゃいけないわけだし。そこで拒絶反応が出てしまうケースも多くあると聞くが」
「それは確かにそうですよ。呪学の系譜は血筋の系譜とも言いますから。血統と生まれながらの才能だけでのし上がってきた人のほうが主流で。私みたいなのはマイノリティもマイノリティですね」
でも、とルル・ベルは続ける。
「生まれや才能が全てじゃないですからね。呪学……私は呪術じゃなくて呪学って言うタイプですけど、大事なのは感情のコントロールや、自分が受けるストレスを、どう力に変換するかってところにありますから」
「それが呪術……呪学の要諦ってわけか」
「そうです。それに――」
ルル・ベルが遠くを見つめるような目で言った。
「生まれですべてが決まるだなんて、牢で鎖に繋がれているようなものじゃないですか」
「……ピートも」
「え?」
「ピートも、そんなことを言っていたな」
懐かしむような口調のブランドンをそのままにしておくべきか悩んでから、ルル・ベルは腫れ物に触るような慎重さで訊いた。
「ピートさんと出会ったのは、最下層へ降りてすぐだったんですか?」
「いや、俺が《殴られ屋》を初めてから、しばらく経った頃だな。出会ったのは……半年後か、そのあたり。あいつが言うには、つまらない窃盗グループの片棒を担いで、矯正施設に送られたとかでな。娑婆に出たのが、俺が最下層に降りてきたのと同じくらいのタイミングだったらしい」
「ピートさん、前科持ちだったんですか?」
「意外か? 元警官と元窃盗犯が仕事仲間ってのは」
なんとなく水を向けると、ルル・ベルは「うーん」と考え込んでしまった。双方を傷つけずに、その仲を肯定するにはどういう表現をすれば良いか迷っているのだろうことは、ブランドンにも手に取るように理解できた。
「すまん。意地悪な聞き方だったな」
「ああ……いえ、そんなことは」
「気にならなかったよ、俺は」
手負いの野良犬と擦れた猫が友情を育むこともあるだろう、とでもいうような自然さで、ブランドンは言った。
「俺もアイツも、市警にうんざりしていたという部分では共通していたしな。それにしても……あいつが元窃盗犯というのも、いま考えれば、似合わないことをしていたんだなぁって思うよ」
「そうなんですか?」
「素直にDJの道に進んでいればよかったのにな。あいつ、人を沸かせる才能に関してはピカイチだったから」
「沸かせるって……パフォーマンスが上手かったんですか?」
「それもあるが、人を焚きつける能力に長けていたのさ。でも、アイツはそれだけじゃない。場が白けたり、不穏な予感が漂い始めたら、すかさず状況を諫めてみせた。自由自在に場をコントロールする力だ。これには助かったよ。俺は、ほら、有名人だからな。最下層でも悪名が知れ渡っていたから、ひとりで始めた頃は色々と邪魔が入って、ろくに仕事にならなかった。でも、あいつと出会ってから変わった。ピートには、場のベクトルを変える力があったんだ。間違いなくな」
「場のベクトルを変える……」
「空気を変えるって、言ったほうが伝わりやすいか。敵意剥き出しの野次馬たちが今にも俺に飛びかかりそうになったら、絶好のタイミングで独演をかますのさ。そうしたら、どんなに血の気の早い奴でも敵意を喪失して、あとには純粋な熱狂だけが残る。野次馬たちは、ひとり残らず善き客になって、俺を殴る。すべてが丸く収まる」
DJに興味が湧かないなら、スタンダップ・コメディアンにでもなってみたらどうだ――《ヴァハール》で遅めの夕食を摂りながら、話の流れで、そう提案したこともあった。ピートは遠慮がちに否定していたが、ブランドンにしてみれば半分は本心だった。彼がプロメテウスを出ると口にした晩も、彼の食い扶持を心配しなかったのは、その非凡な話術と空気を読む才能があれば、どこでもやっていけるだろうと、ほとんど確信していたからだ。
オイル・カーはファイアウッド・ブリッジを渡り切って、大通りにはいった。おなじ最下層でも、そこは一切の不浄の侵入を許さない区画。もう五百メートル先に視線をやれば、中層岩盤備え付けの疑似太陽光でプリズム乱射を繰り返す、菱形の巨大エンブレムが特徴的な建物、《虹鱗盾塔》が見えてくる。T字の大通りに入る手前では、一部道路工事に伴う規制が敷かれていて、小規模の渋滞が発生していた。
「あの日の晩……ブランドンさんを襲った身元不明の襲撃者についてなんですけど」
渋滞に捕まったタイミングで、ひと呼吸おいてから、ルル・ベルが唐突に話題を切り替えた。
「あの不気味な蟲みたいな奴か。そういえば、君はあいつと因縁があるような口ぶりだったが、ありゃあなんだ。更新強化人か?」
「あれは、魔導機械人形です」
「なに? なにロイド?」
聞き慣れない単語に、後部座席からやや身を乗り出す格好になって、ブランドンは訊いた。
ルル・ベルが、慎重に前方との車間を目で測りながら、口にする。
「ディエゴ・ホセ・フランシスコという人物は、ご存じですか?」
「俺以上の有名人だな」とブランドンが思い出すように言った。「この都市一番の富豪と噂される、水銀色の髪を持つ人物。いや、噂されていた、か。最近亡くなったんだったな」
「富豪か……あながち間違いではありませんね。晩年になると猜疑心が強くなったのか、現実の邸宅の警備に莫大なお金をかけたり、電脳空間の裂け目の向こう側に閉じこもって、高稠密仮構造物を積み上げるのに躍起になっていたそうですから。《ワイザツ・フォーラム》じゃ、いまでも彼のゴシップで持ちきりですよ」
「……で、その富豪がどうかしたのか?」
「彼の本分は科学者です。ご存じでしたか? 三統神局と呼ばれる独立独歩の公的研究機関。そこのトップを務めていたのが、ディエゴ・ホセ・フランシスコ。魔導機械人形は、彼が科学者として現役だった時代にこの都市に産み落とした、人間と同等の知性を持つ機械仕掛けの人形です」
一息にルル・ベルは言い切った。その断定的な口調から、彼女が口にした内容が冗談の類でないことは雰囲気でわかる。だがそうだとしても、認めるまでに、ブランドンには抵抗感があった。
「あれが人形だって言うのか? しかも、機械仕掛け?」
何十、何百もの硬い甲蟲が分離と結合を繰り返し、自由自在に牙を変えて襲いかかってきた尋常ならざる姿は、くっきりと脳裏に焼き付いている。あの真夏の夜の出来事を悪夢のひとことで片づけてしまうし、その正体に関する知見を耳にしたことで、更なる泥沼にはまっていきそうな感覚に陥った。
「なんだそりゃ……映画じゃあるまいし……」
嘆息するように、そう呟くので精一杯だった。座席のシートに背を預けて、ブランドンは眉間を押さえながら思案に耽った。
「にわかには信じがたい話かもしれませんが、しかし事実です。ディエゴは亡くなる直前まで魔導機械人形を造り続けていました。企業連合体や、都市公安委員会に対する尖兵として。その生き残りが、まだいるということです。それも、どうしたことか最下層に」
「君のことを知っている風な口ぶりだったが……なんだ……類を見ない愚か者、とか? 出来事のショックが大きすぎて、あんまり会話の内容は覚えてないが、向こうはずいぶんな物言いだったな。ああいう得体の知れないのを相手取るのもホワイト・ギルドの仕事のうちなのか?」
「まぁ、そうですね」
当然の義務であるかのように、ルル・ベルは口にした。
「市警上層部から流れてきた、トップ・シークレット級の長期案件のひとつです。放っておいたら、大変なことになる。早くケリをつけなきゃならないと思っていたところだったんです。だから、交戦中も結構驚いていたんですよ。ブランドンさんを襲撃したのが、まさか魔導機械人形だったとは、全くの予想外でした」
「しかし、そんな危なっかしいヤツが、どうして俺を狙うんだ?」と口にしたところで、慌ててブランドンは訂正した。
「いや、たしか……あの蟲人間、《鍵》がどうとか言っていたな……あのメモリーカードのことを言っているのか。それともENのことを言っているのか」
「メモリーカードの解析の進み具合に依りますね。それがわかるまでは――」
渋滞が解けた。スムーズなオイル・カーたちの流れに乗って、ルル・ベルはハンドルを右に切り、第四警邏部門の来客用の駐車場へ、カーを滑らせていった。
「私たちは、私たちの仕事に集中しましょう」




