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大怪獣がトリックです ~第1怪:戦艦亀~  作者: 天草一樹


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15/19

犯人は○○

「皆さんお待たせしました。考えがまとまったので、今から全てをお話しします」


 宣言通りきっちり十分後。

 宗吾は立ち上がり、堂々宣言した。

 ぞろぞろと人が宗吾の前に集まってくる。

 全員の聞く準備が整ったところで、宗吾は粛々と語り始めた。


「最初に、誰が三村さん、鏑木さん、北條さんの三人を殺したのかについて話します。その答えが、僕らが全滅する理由にも繋がりますので」

「僕実験できなくてちょっとイライラしているから、パパっと誰がやったか指摘して終わらせてほしいんだけど」


 早速天木からヤジが飛ぶ。

 宗吾はヤジを受け入れ、「分かりました」と素直に頷いた。


「待ちきれない方もいるようですので、答えから言いましょう。三人を殺害した犯人は、人間怪獣(・・・・)です」


 その言葉を聞くと同時に、一倉と二宮が銃口を御園生に向ける。

 銃を向けられた御園生は訳が分からないと言った様子で、一歩後ろに下がった。

 そんな彼女に対し「動くな!」と命令した一倉は、「意外だな」と続けた。


「てっきりお前は御園生のことを信頼していると思っていたが、まさか犯人として名指しするとは。いや、北條が死んだ以上、俺たちの中にこんな異常な殺害ができるのは御園生だけなのだから当然か。それで、一体こいつはどうやって三村たちを殺したんだ」

「ぼ、僕は誰も――」

「違いますよ。犯人は御園生さんじゃありません」

「何?」


 御園生自身よりも早く、彼女を指摘した宗吾自身が否定の声を上げる。

 依然彼女に銃口を向けながらも、一倉が抗議の目を向けた。


「どういうことだ。お前は今、犯人は怪獣人間だと言っただろ。ならそいつ以外に当てはまる奴はいない。それとも、死んだ北條が実は生きていたとでもいうつもりか」

「違います。僕は人間怪獣・・・・が犯人だと言ったんです。御園生さんや北條さんのように、人間だった者が怪獣の力を手にした怪獣人間ではなく、怪獣が人間の姿を取っている、元々が怪獣である人のことを言ったんです」

「……一体それはどういうことだ」


 今度こそ銃口を下した一倉が、意味が分からないと眉間に皺を寄せる。

 それは勿論一倉だけでなく他の隊員も同様。

 最初に宗吾の言いたいことを理解した心木が、「それ本気?」と首を傾げた。


「私たちの中に怪獣が紛れていて、そいつが三人を殺したって言いたいの? 何それ、この任務のどこかで入れ替わられたわけ? それとも最初から? どっちにしろあり得ないと思うんだけど」

「あり得ないと言うのは構いませんが、それ以外に今回の事件を説明することはできません。犯人は、いわば人間の思考が可能な怪獣だった。それゆえ怪獣のようにひたすら人を殺すのではなく、計画的に一人ずつ殺していた」

「言わんとすることは分かるわよ。怪獣であれば心理的に、人間であれば物理的に殺された後の状況に矛盾が生じる。その矛盾を解くには、怪獣の力を持ちながら人間的思考が必要だって。でもそれでどうして怪獣が紛れてたって話になるわけ? 世界中探せばどこかには擬態する怪獣もいるかもしれないけど、少なくとも今日までそんな怪獣は報告されていないわ」


 心木の反論に、大半が賛同の意を示す。しかし宗吾は一切臆することなく、「いるじゃないですか」と返した。


「食べた兵器を、自律的に動かせる兵器として再生産できる怪獣が」

「……は? それって、あなたまさか」

「はい。犯人は戦艦亀が作り出した人間兵器・・・・。人間と同じ体を持ちながら怪獣のために動く兵器(スパイ)だったんですよ」

「!!!」


 まさかの告発に、皆声も出せず大きく目を見開いた。

 戦艦亀が食べた兵器を作り出し、甲羅から生やす能力があることは知られている。しかし具体的にどんなものまで作り出すことができるのか、その全ては分かっていなかった。

 唖然として誰も何言えないのを見て、宗吾はあり得ないことではないはずだと語り掛ける。


「もともと戦艦亀が作り出した兵器は自律的に動いていました。つまり兵器それ自体に思考能力か、AIのように特定の行動をさせるプログラミング能力を持っていたわけです。そして自身とはまるで構造の違う兵器を作り出す能力があるなら、人間のような生物を作りだすことだって不可能ではないはずです」

「……確かにあり得ないことではないのかもしれないが、信じられない」


 二宮が思わずと言ったように声を漏らす。

 怪獣に人間の理屈は通じない。存在自体が科学的に見てあり得ないものも多く、その構造を認識することすらできない。そんな怪物が、食べた兵器を作り出す能力を持っているとして、その兵器の概念を無機物だけと考えるのは楽観視が過ぎているのではないか。それが宗吾の主張だった。

 元よりウイルスや細菌を用いた生物兵器は存在し、御園生や北條のような怪獣人間も生物兵器と呼べる存在。

 どれだけ信じ難くとも、宗吾の意見は否定し難い真実だと考えられた。

 比較的この中では驚きの少なそうな天木が、「それで」と尋ねた。


「犯人が戦艦亀が作り出した兵器(人間)だったとして、それでどうやって三人を殺したの。戦艦亀から作り出されたとはいえ、能力的には普通の人間と同じじゃないの? 仮に多少人より強くても、シルバースターである三村君や、怪獣人間である北條君をあっさり殺せる強さがあるとは思えないけど。というか、結局誰が犯人だと思ってるのかな?」


 推理の核心に迫る問いかけ。

 全員が固唾をのんで見守る中、宗吾は緊張した面持ちで息を吸い、吐き出した。


「出来たら名前を宣言すると同時にその人を、いえ、その怪獣を取り押さえるか殺してほしいんですけど、おそらく難しいと思うので取り敢えず名前だけ言います。それからなぜその人が怪獣なのかについて説明していきますので、納得した段階で行動していただけると嬉しいです」


 宗吾は人差し指を立てると、ゆっくりある人物に向けた。


「三人の隊員を殺した怪獣は――天木先生、あなたですね」


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