3-4「だんごむし」（3P）

「これで！　わたしも！

　いっちにんまえの！」

「────誰と話してるんだ？」

「パタンナあああああああああああああああああああああああっ！？」

　──────ドンッ！

　びたぁっ！！

　

　突然、声をかけられて。

　ミリアは腹の底から声を上げ、後ろの棚に勢いよく張り付いた。

　見計らったかのような声かけ

　勢いよく振り向けば、そこにいたのはエリック・マーティン。

　黒毛で癖毛の、この前から来るにーちゃんである。

「…………ア、あ……」

　その。

　いつの間にか現れた”おにいさん”に

　

　ミリアは、言葉が出ない。

　しかし。

「…………？

　…………いや、そんなに叫ぶことないだろ？

　幽霊というわけでもないんだから。

　それより、客は？　姿が見えないけど」

　エリックは不思議そうに、キョロキョロと店内を見回すのだ。

　その現実を──ミリアは、受け止めきれないでいた。

「あ、あぁぁぁぁぁぁ…………」

　

　震え・動悸・息切れ・発熱を伴いつつ

　ぴたぁ──────っと

　頬に手をつけ、彼女は悶え、小刻みに震える。

　

「…………？

　なに？　その反応」

「…………アァ、ァぁ……」

　まるでわかっていないエリックに視線をうけて、ミリアの頭の中

　ここ数分の行いがぐるぐるぐるーーっと渦を巻き────……

「…………イ、

　イツ

　カラ」

「────？

　『いつから』？　

　えーと……

　……『負ける気がしな』」

「　声　を　か　け　て　よ　ッ！　」

　全　身　全　霊　。

　声を張り上げ叫ぶ！

　彼女の体の中、全身の血液が湯になり体を駆け巡っているようで耐えられない！

　見られた

　見られた

（────見られたああああああああああ！！！）