みんながみんな仲がいいとは限らない
村長の名前とヒルズ村は続けて書かないようにしていますので、たぶん大丈夫。
神像を掲示板等で募集しなかったのは、色々と理由がありますが、深く気にしなくていいです。
大砲移動があるので実は早急に必要というわけでもない、ってのもあります。
さてと、村の名前も決まったし、まだ作っている最中の設備が色々残っている。
アクア王国までの間に海があるわけだが、その間に橋を架けることのできるクエストが発生したので全員で受注してちまちま素材集めを続けている日々だ。他の施設などは、全員で分担している。先ほどのように和風二人が教会担当だったりって形で。
みんなで協力――ようやくMMOらしくなってきたなと思って来たけど、素材集めて建物直したり橋を作ったり……これ、サンドボックスだっけか?
いや、定義としては違うんだっけか……そのあたりそこまで知識がないから何とも言えないが。
しかし、こう地味な作業が続くと飽きてくるなぁ……一人の時は黙々とやっているだけだったが。いや、時々古代遺跡につっこんだりしていて暇つぶししていたか。
そうだ、古代遺跡で思い出した。
「みんなで古代遺跡に挑戦してみない?」
「……えぇ、それこそレベル上限到達とかで挑むような場所じゃないのよ」
「メンバーはどうするんじゃ? 全員で挑むのはさすがに無理じゃぞ」
「それなんだよねぇ6人は無理でも、4人欲しいな……せめてあと一人いればいいかなぁって。和風コンビ引き留めておけばよかったかな」
「ワシ、村長にみょーん……あと一人、どんな人がいいじゃろうか」
「え、ワタシ入ってるの?」
「古代兵器のパーツは欲しいし、行ってみたいんじゃが……絶対死に戻るじゃろ?」
「まあ、そうだね」
「とりあえず金とアイテムは預けておくか」
「…………しかたがないわね。ワタシも気になるし、次に来た人捕まえて連れて行きましょう」
「よーし、とりあえず誰かコイコイ」
というわけで、5分ほど待っていたらキラキラとした粒子と共にプレイヤーが出現する。さて、誰が来るかなぁ…………ぴょこんとしたネコミミに、しなやかな尻尾。伸びた身長と彼女の戦闘スタイルに合わせてディントンさんが作ったカンフー服。
つい最近ケットシーに種族変更した、生贄がログインしたのであった。
「桃色アリス、参上です」
「よくきたアリス――待っていたよ」
「そんな、待っていただなんて……でも、今日は橋の建設をしないと…………あと、夏イベントに向けて綿花を生産したいんですが」
「まぁまぁ、そう言わずに。橋を作るなら鉄鉱石もいるだろう。さあ、行こうぜ」
「遠慮します! いくらお兄ちゃんのたのみでも、その顔の時は大抵えらい目に遭うんです。具体的には大砲移動でのお使いとか! あれ結構大変なんです!」
「確保ー!」
「うにゃぁー!?」
「まーたやってるわよ……」
「まあ、遠慮がなくなってきたという事じゃ。良いことじゃと思うぞ」
ケットシーに種族変更して以来、アリスは以前よりとっつきやすくなった。いい意味で我が強くなったように感じる。
「よし、確保したしさっそく突入しよう」
「じゃな!」
「ああもう……どうしてこうなるのかなぁ」
「……ど、どうしましょう。無理やりも悪くないって思う自分がいるです」
最後、アリスがとても恐ろしいことを呟いていたが、僕は何も聞かなかったことにした。
ただ……ライオン丸さんとみょーんさんがかわいそうなものを見る目で、僕たちを見ていた事だけが深く心に刻まれた…………
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「さて、古代遺跡前まで到着したわけだが……何か意見のある者、挙手」
「やっぱり帰らない? 古代兵器を手に入れても無用の長物なのよアレ」
「…………いや、みょーんさんが一番必要な装備構成じゃないか」
「そうじゃな。アンタ、武器は杖だけで魔法特化じゃろ」
「ええ、そうよ。だから古代兵器を手に入れたところで――」
「古代兵器って特殊カテゴリだから内蔵されている専用スキルしか使えないし、起動していなければ箱型のコンパクトな形になって腰とかに引っ付くんだよね」
「懐に入られたら無防備なみょーんさんは、保険として装備しておくほうがいいとおもうんじゃがのう」
「たしかに、あった方が便利です」
「あ、アリスちゃんまでそういう事言うの」
「実際問題、対策は必要でしょうに」
せっかく武器を二つ装備できるのに、魔法特化にするため杖しか装備していないのである。もしくは、護身用短剣か。しかし、そもそもリーチの無い短剣だと懐に入られた時点で筋力値と防御力の低いみょーんさんは戦えない。というかあっという間にやられる。
だからこそ、魔法に特化させた装備でそもそも近寄らせない戦法なのだろうが……
「絶対に魔法防御貫通とか出るだろうな」
「だからその対策で防御力を上げるためにもヒューマンで遊んでいるのよ」
「焼け石に水……むしろ魔法特化でエルフかフェアリーにすればよかったじゃろそこは」
「アリスみたいに種族変更すればよかったじゃないですか……アリスはモール使えませんので、有料で変えられませんけど、みょーんさんならすぐにできますよね?」
「……いいの! 気に入っているのよヒューマン! それにアバターって結構高いのよ!?」
「なんかその魔女ローブキラキラしているなと思ったら有料のアバターなのかよ」
「…………ディントンさんなら性能の良くてデザインのいいもの作ってくれるじゃろうに」
「あの人、そういうことはしっかりやるんですから頼めばいいじゃないですか」
「頼んだらどんな水着着させられるかわかったものじゃないのよ!?」
……たしかに、そういうところあるけど…………どうせ夏イベントの時に水着着せてくるよあの人。まだハッキリとした情報は出ていないけど、水着着用するイベントなのは告知があったし。
水着だとボーナスが入る、ってことぐらいしか明かされていないが……そのおかげでマーケットの水着の値段が上がっていた。まあ僕は既に持っているし、村のみんなの分もディントンさんが張り切って作っていた。そのため、彼女は建物と橋の建設にはあまりかかわっていない。
「こちとらいい年した大人なのよ? あんたら十代の若者じゃないんだからはしゃいだ水着着れないのよ!」
「……別にゲームでくらい良いと思うです」
「ワシが十代じゃとなぜわかったし」
「っていうかネトゲ婚ははしゃいだウチに入らないんですかね」
「ネトゲ婚!? 詳しく聞きたいです!」
「アリス、ステイ」
「なんであんた知って――ライオン丸ぅううううう!!」
「わ、ワシは何も知らん」
「嘘つくな! あんたは嘘つくと鼻の穴が広がるの知ってるんだからね!」
そう言うと、みょーんさんはライオン丸さんの口を横に広げ始めた。
前々から思っていたが、この二人ってどういう関係なんだろう。ライオン丸さんはみょーんさんがネトゲ婚なのを知っていたし、なんか気安い関係だし。
「……仲良しさんです?」
「前々から知り合いっぽいけど」
「あー、別ゲームで同じギルドにいたことがあるだけよ。最近思い出したんだけどね」
「ネトゲ婚もその時に聞いたんじゃよ」
「なるほどです。それはそれとしてネトゲ婚について詳しく」
「アリスちゃん……若気の至りってね、一生後悔するのよ。旦那のことは愛しているわ。でもね、それはそれとしてネトゲ婚ってフレーズは一生ついて回るのよ。このフレーズに耐えられないのなら、おすすめはしないわ」
そのみょーんさんの言葉は、とてつもない実感が込められていました。
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【ネトゲ婚】この空気を何とかしてください【アリかナシか】
1.名無しの村長
パーティーメンバーがネトゲ婚した人なんだけど、ネトゲ婚のフレーズの重さに闇を背負ってらっしゃるので、何とかする方法を教えてほしい
2.名無しの村長
……だれか早く書き込んでくれ、この重苦しい空気をどうにかしたい
3.名無しの錬金術師
面白いスレを見つけたと思ったら……ヤバいスレだった
4.名無しの狩人
スレタイの時点で地雷臭していたけど、開いたら予想以上の闇だった
5.名無しの忍者
拙者としてはー、メッチャアリでござるからぁ、バッチこいなんでござるけどぉ、向こうの人がぁ、煮え切らない態度でェ
6.名無しの剣士
>5そういう話しているんじゃねぇよ
7.名無しの盗賊
なんかウザいんだが……
8.名無しの村長
…………いや、参考になるかもしれない
具体的にはどんな感じで?
9.名無しの剣士
おい>1何考えてんだ
10.名無しの忍者
彼ー、拙者と同じ和風職業でぇ、コンビを組んでいるんでござるけどぉ……なんか、最近この人と一緒にいると楽しいなぁとか色々? みたいな?
11.名無しの村長
へ、へぇ……本当に好きならそれでいい、的な?
12.名無しの忍者
そう! 好きならそれでいい――最近、そう思うの
13.名無しの村長
とりあえず好きならそれでいいんじゃないですかね、ってアドバイスしたら
「旦那のことは愛しているのよ! でも、ご近所にネトゲ婚のことが知れ渡ったらと思うと――ああ、恐ろしい!」って
14.名無しの盗賊
あー……そうか、そういうことか
15.名無しの鍛冶師
そうなるとアドバイスできないなぁ……結婚、羨ましい
16.名無しの剣士
むしろ羨ましいまである
17.名無しの狩人
気持ちはわかるけど。確かに周りのことが気になるよな
それを割り切れる人がネトゲ婚するんだろうけど
18.名無しの演奏家
まあ、最近は珍しくないんだけどな。ネトゲの主流がVRになってきているから、大分生身の人間に近い感覚で知り合うし
DWOで結婚したカップル多いんだぞ
19.名無しの村長
それは知っている……目の前の人もそうなんだ
20.名無しの探偵
大切なのは、自分がどう思っているかだ。周りの目じゃない、自分が選んで納得したのならそれでいいんだ
21.名無しの旅人
周りの目なんか気にしなくていいんだよ
自分が相手を好きかどうか。結婚ってそういうものだろ――だから、親が勝手に決めるとかダメだと思うんだよ、オレの自由意志を尊重しないあいつら……いつか絶対
22.名無しの狩人
別の闇が漏れてるよー
23.名無しの村長
絶対の後なんて言おうとしたんだ……
24.名無しの忍者
いつか良い人が見つかるでござるよ
25.名無しの旅人
上から目線とかやめてくれますー? どうせまともに告白も出来ていないくせに
26.名無しの忍者
ハァ!? 勝手に決めないでくれますー? 少なくとも今は二人っきりで素材集めの真っ最中ですー
27.名無しの旅人
素材集め中なのになんで書き込めるんですかねぇ……
28.名無しの忍者
ちょっと休憩中なだけですー、彼が奥義スキル覚えたから素振りしている間休憩しているだけですー
29.名無しの村長
あ、相談した人立ち直ったんで帰りますね
30.名無しの狩人
それは良かった。それじゃあ僕らも帰りますね
31.名無しの旅人
放置プレイとかワロスなんですけどー
32.名無しの盗賊
やっぱりヤバいスレだったか……
33.名無しの剣士
っていうか、村長については誰もつっこまなかったな…………
そんな職業あったのか
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「…………っていうかこの忍者、桃子さんだよな。ござる口調だし。それに、旅人ってもしかして………………気がつかなかったことにしよう。色々な意味で」
職業が旅人のまま掲示板に書き込んでいる人なんでほぼ一人だけである(大体はレベル上げたらすぐに変えるため)。




