レイドボス、がしゃどくろ
ちょいちょい時間がかかってしまっていますが、なんとか投稿。
あとがきにお知らせを載せておきます。
常設のレイドボスについて以前少しだけ話したことがあると思う。
改めて説明するが、レイドボス戦クエスト受注用アイテムを使用し、クエストを発生させて参加メンバーを集めるだけのシンプルな手順だ。ただし、現地でしか使えないが。
というわけで、クエストを進めていたら手に入ったアイテムでレイドボス戦を執り行いたいと思います。
「ただし、ホラー系ボスのがしゃどくろ先輩だからアリスちゃんは抜きで」
「いきなり最大戦力がいなくなったんじゃが」
「フレンドにも募集かけたけど、らむらむさんも指輪職人さんも友人の結婚式とかで都合が悪いって」
「2人同時とか共通の知人だったんじゃろうか?」
「タイミング的にありえそうだニャ」
「かもしれないけど、問題はそこじゃない。その話を聞いたせいで桃子さんが再びの狂戦士と化したことだ」
BFOの和風エリア、ヤシノ島。その中に常時薄暗い森があり、おどろおどろしい妖怪チックなモンスターが出現するポイント――その奥、紫色のオーラを放つ石碑がレイドボスクエスト受注場所だ。
必要なのは参加プレイヤーと、クエスト受注アイテム。どちらも共にそろっている。今回のメンバーは僕、ライオン丸さん、あるたんさん、狂戦士桃子さん、ふくよかになってしまったニー子さん、真っ白に燃え尽きたらったんさん、きれいなジャイ○ンみたいな顔になっているほむっと仮面さん、魔法少女の格好をしている銀ギーさん。以上8名。
「……いやいやいやいや。流石にスルー出来ないんじゃが!? 村長とあるたんはいつも通りじゃが、他の全員はなにがあったんじゃ!?」
「そうだニャ。桃子はある意味いつも通りだけどニャ。他のメンバーも様子がおかしいのはどういうことだニャ!」
「いや、フレンドに適当に声をかけてこれる人に集まってもらったんだけど――なぜかこんなことに」
「どこからツッコんでいけばいいかわからないからとりあえず一人ずつ片づけるニャ。まずニー子さん! どうしたニャ! 未来から来た猫型ロボみたいな体形で!」
「…………しょ、正月太り」
「限度があるニャ! そしてBFOのキャラクリだとリアル体形からある程度変えられる幅に制限があるはず――リアルはもっと悲惨ニャことにニャってりるニャね」
「ぐふっ!?」
一人脱落。
「貴重な戦力が!?」
「見た目戦力外ニャんだけどニャ」
「じゃあ次はらったんじゃが……どうしたそこの黒ギャル。真っ白になっておるぞ」
いや、肌の色ではなく感情表現による影響でキャラクターが白く表示されているだけなのだが――よほど落ち込まないとこうはならない。
「……友ピッピたちが、彼ピッピとのラブラブツーショットを送りつけてきた」
「ああ、桃子さん二号か」
「ひどい言い草ニャ」
「歓迎するでござる、世のリア充を撲滅でござるよ」
「暗黒面に誘うんじゃニャい」
「んゆー? ……ッ、師匠!」
「嫌な師弟関係が結ばれたんだけど」
まあ、よぐそとさんの様子次第だけど、すぐに解散しそうな気はする師弟関係だが。
そして次は……力士ことほむっと仮面さん。さて、どうしたんだろうか。
「あまり聞きたくはないけど、聞きますね。何があった」
「ははっ。何を言っているんだいロポンギー君。別にボクにおかしなところはないと思うが――そうだね、あえて言うならば。世界はこんなにも美しいことに気が付いた、ってところかな」
なんだろう、ぶん殴りたい。キラキラしたエフェクトをまき散らしているのも殴りたい欲求をさらに高めてくれている。
あれかな? バレンタインで誰も彼もが色ボケているってことだろうか。
「あえて言うならば――もう一周、彼女たちのバレンタインボイスを堪能しなければという使命感が芽生えただけさ」
「あ、違った。色ボケは色ボケでも運営の思惑にはまっただけだ」
「あー、あのNPCにバレンタインアイテムを渡すことで聞けるって話のイベントボイスじゃな」
「かわいそうにニャ。魂がネットに囚われてしまったんだニャ」
「もう戻ってこれないかもしれないな……」
「イベント終了まできれいな力士なんじゃろうか」
「それはそれで嫌だニャぁ……」
でもまあ、戦闘に支障は出ないと思うから彼についてはスルーでいいか。というか今の彼とは会話をしたくない。心が汚染されそう。
そしてできれば目を逸らしていたかったもう一人。変わり果てた銀ギーさんだが、何があったんだ?
「銀ギーさん、どうしたのいったい」
「別にわたしは酔ってないのらー」
「また酒飲んでログインしたのこの人!?」
「前回それで大変なことになったのに何をしておるんじゃ!?」
「惨劇が、惨劇が始まるニャ!?」
まさかの事態。レイドボスどころではないとこの後始まる惨劇に体を震わせていると――特に銀ギーさんは何もアクションを起こさない。ふらふらとはしているが、ちょっとろれつが回らないぐらいで、暴れだす気配はなかった。
「あれ? 銀ギーさん? お酒、飲んだんですよね?」
「別に飲んでないのらー! 今日はまだ、知り合いに貰ったチョコぐらいしか食べてないのらー!」
「――それだ!」
「酒入チョコを食ってしまったんじゃな」
「量が少ニャいから奇行に走るだけで済んでいるんだニャ」
「だけど時間の問題だね。今はまだいいけど、今銀ギーさんのリアルボディは寝た状態だ。そして、いい感じに酔いが回っている――寝落ちまでのタイムリミットが迫っている。寝落ちRTAの始まりだよ」
「嫌なRTAじゃな」
「やっぱりもう少しレイド参加者欲しいんだけどニャ」
そうは言っても、集まらないものは仕方がない――と、その時であった。岩陰から4つの人影が飛び出したのは。
謎の爆発と共にビシッとポーズを決めて彼らが名乗りを上げる。
「情熱の戦士! 暗黒四天王改め――ネガレッド!」
「紺碧の戦士! 暗黒四天王改め――ネガブルー!」
「深緑の戦士! 暗黒四天王改め――ネガグリーン!」
「神速の戦士! 暗黒四天王改め――ネガイエロー!」
『日陰に潜む、4つの闇! 暗黒戦隊ネガレンジャー!』
「――え、ナニコレ」
暗黒四天王――4つ子のプレイヤーで、前に起きた謎のPK騒動の犯人たち。ランナーBさんの手によってほむっと仮面ともども更生したのだが……また何に影響されたのか、戦隊ヒーローみたいな恰好で現れた。
よく見ると、デフォルトのヒーロースーツとは若干異なっており、色味が暗くなっている。
「ちなみに、ブラック募集中だ」
「確かに黒い肌だけど、加入はしないからね。フルフェイスヘルメットも持っていないから」
(ワシは持っているんじゃよなぁ……)
何か邪なオーラを感じたんだが、とりあえずスルーする。藪をつついて蛇を出すことはないのだ。
しかしこれで総勢12名か。ほどほどによさそうな人数がそろったので、挑みに行ってもいいとは思う。思うのだが……大丈夫? 現時点で戦力外なメンバーがいるんだけど。
「でも悩んでいても仕方がないな! 突撃!」
「結局はその場のノリで動くんじゃな」
「つまりいつものことだニャ」
「あははー、世界がぐるぐるまわるー」
「こ、心なしか体の動きが鈍い」
「なんで足の長さまで変わっているのか真剣に気になるのでござるが。VR機器のほうが体形の読み込み失敗してバグっているって相当でござるよ」
「ごはっ」
「またニー子さんが倒れたニャ!?」
「もうそのまま放置でいいと思う」
「まだだ、ボスを倒すことによる運動で痩せるしかない!」
「バーチャルでどれだけ動こうが現実の肉体は寝た状態だから脂肪は燃焼しないでござるよ」
「がはっ」
「桃子、追い打ちするニャ」
「あ、そういやこの二人仲が悪いんだった」
「なぜ一緒のパーティーに誘った村長!」
バシッとハリセンで叩かれる。
仕方がないんだ。フレンドで都合のつく人たちがこのメンバーしかいなかったんだ。
とにかく、いつまでもグダグダやっていても仕方がない。レイドボス戦開始用の石碑に触れ、待機時間へと移行する。
少なくとも恰好がふざけているだけで暗黒四天王改めネガレンジャーは戦えるだろうし、言動がおかしくなってはいるが桃子さん、らったん、ほむっと仮面の3人はプレイに支障はない。
問題はほろ酔い銀ギーさんとカロリーの国に旅立ったニー子さんの成人女性2人……いざとなったら盾にでも使えばいいか。
「村長が黒い顔で笑っているニャ」
「もともと黒い顔じゃけどな」
「じゃあ腹黒い顔だニャ」
「腹も黒いんじゃよなぁ」
「んゆー? あくどいでいいんじゃないかなー」
「それじゃ!」
「え、ひどくない?」
「残当なんじゃよなぁ」
「むしろそのスラングは残念ニャがら当然って意味にニャるから、妥当でいいニャ」
「よりひどくない?」
「ってそこの方々、そうこう言っているうちにレイドボス出現しましたが!?」
ネガグリーン(よく見たらわざわざプレイヤーネームまで変えていた)が声を上げた。
彼の言う通り、目の前には巨大な骸骨が出現していたのだ。黒みがかった骨、下半身はない。あばらの下、本来骨盤があるべき場所は黒い霧に覆われている。
そのためか、移動の際に地面を滑らかに移動してくる。つまり足音が聞こえない。
「移動時の音が聞こえないの結構きついんだけど!?」
「設定でBGMを切れば放電するような音が聞こえるようになるからそうしなよロポ太くん」
「誰がロポ太くんだニコえもん」
むしろ丸々したことに合わせて声までよせてるの妙に芸が細かいな。ただ、残念なことに他のみんな首をかしげているぞ。
「なぜ!?」
「年齢的に皆キャスト変更後の声になじみがあるから、昔のほうだとピンとこないんだよ」
「馬鹿なっ! 遠足の帰りにビデオを流すからこっちの声もわかると思ったのに」
「ああ、そういう催しもあったのう……ワシは見た目は子供な探偵の映画じゃったが」
「アタイは世界的に有名ニャ育てゲーの映画だったニャ」
「ああ、それなら拙者は猫型ロボの映画だったでござるよ」
「ならなんでわからなかったのか!」
「……いや、初代映画のリメイク版でござったから」
じゃっかん気を使った桃子さんの発言。だがそれが逆にニー子さんの心を傷つけた。
「ぐはっ」
「ニー子さんが倒れた――って敵が目の前にいるのに何でコントをしているのか」
「いつものことじゃろ?」
「だけれども!」
当然こんなアホなことをしていれば敵の攻撃でHPが減らされるわけで、あっさりとニー子さんは消えた。
「あばー!」
「とりあえず蘇生させておきますねー」
「ネガイエローさんヒーラーかよ」
よく見たらそれぞれ別々の武器を装備しており、レッドが近距離、ブルーが遠距離、グリーンはムチを使った援護系。そしてイエローが杖を装備していた。魔法職かと思ったが、ヒーラーだったのか……辻斬りの時と違ってバランスのいいパーティーになっていやがる。
でもこれなら彼らに、僕らが援護に回ることでうまいこと立ち回れるかもしれない。
「よし、作戦は決まった」
「そもそも無策で挑んだんじゃな」
「行き当たりばったりニャのもいつものことだニャ」
「あははははー……ぐー」
「おい、銀ギーさんが寝たんじゃけど」
「大丈夫だ。その人に関しては戦力に含めていない」
「起きていればこの中でも2番目にレベルが高いんじゃがのう」
なお1番目はニー子さん。なんで2トップが無能化しているのか。
とにかく作戦を伝え、いよいよ本当の戦闘が始まる。




