たまには男子会でも
終業式も近くなり、ちょっと学校内が慌ただしくなった今日この頃。冬休みの宿題が結構な量出ており、憂鬱な気分になったところでいつものようにヒルズ村でアイテム整理&強化の日々である。
現在、村の鍛冶場でライオン丸さんと二人ひたすら装備を強化している強化マラソンの最中だ。
「いや、そういう面倒な宿題とかは早めに片づけておくんじゃぞ」
「さすがに分かっているよ。別にそこまで苦でもないし」
「その割には苦い顔しておったじゃろうが」
「…………担任に、前回の読書感想文みたいなことをしたら分かっているんだろうな? って怖い顔で言われた」
「何をしたんじゃ」
「ゾ○リを大真面目に考察した、読書感想文を少々」
「アホか」
「……やっぱり、ネクロノミコンにしておくべきだったか」
「そういう問題じゃないじゃろ――っていうか、そんなもんどこにあるんじゃ」
「父さんの書斎」
「へぇ……え?」
「いや、冗談だよ」
「なんじゃ、冗談か……」
「本当は母さんの料理本の棚の中にある」
「オイ!?」
まあ、単なるジョーク本の類だと思うけどね。
ただ、普段の食卓に出てくるアホな料理の数々に関連しているんじゃないかと睨んではいる。明らかにおかしなサイズの時とかあるし……おいしいけども。
と、そんな時にコツコツと足音が響いてきた。
「ふぅ……疲れたでござる」
「お、よぐそとさんどうしたの?」
珍しいことによぐそとさんが鍛冶場にやってきた。
なにやら疲れた表情だが……何かあったのだろうか?
「聞いてくれでござる……先ほど、ヒャッハーズの会合があったんでござるが、クラスター爆弾はアリなのかナシなのかで意見が分かれてでござるなぁ……」
「いや、どっちでもいいでしょそんなの」
「爆発物のパイオニアとしてその発言はどうなんでござるか!? ヒャッハーズ名誉会長のロポンギー殿!」
「いや、別にパイオニアでもないから――ってまって!? 名誉会長!? え、僕いつの間にそんなものにさせられていたの!?」
たしかにベヒーモス戦で爆弾戦法を使っていたから、その手の戦法の開拓者とも言えなくもないよ。パイオニアって言われてもそこまで強く否定はするつもりは無いけど、なんで世紀末集団の名誉会長にさせられねばならないのだ!?
「いや、普段の行動を見ていたら納得の人選ですよ。今でもたまにUMAになって爆破祭りしているじゃないですか」
「確かにしているけど……っていうか、めっちゃ色々さんもするっと話に入ってきますね。どこにいたんですか?」
「先ほどからずっと後ろでアイテム強化していましたよ。最近【錬金術師】のスキルが増えましてね。専用装備を作れるようになったんです」
「専用装備、じゃと?」
「ええ。前に専用スキルで作れるようになった【賢者の石】を装備素材に使えるようになるスキルです。要求素材がエグイので時間がかかりましたし、更に別の素材をスキルで作らないと行けなかったので……それはもう大変でしたよ。ですが、いいものが出来上がりました」
そう言って彼が見せたのは小さな杖だった。杖というよりは、タクトか? 長さは30センチほど。そこそこ長いけど、細いし……魔法発動ぐらいしかできそうにないが?
「それ、魔法以外のスキル使えるんかのう……」
「使えますよ。武器としての分類は指揮棒なんですが、本来魔法と演奏スキルだけのところ、この指揮棒は特殊でありとあらゆるスキルを使えましてね……ふふふ、夢が広がります」
「ありとあらゆるスキル?」
「ええ。製作難易度がアホみたいに高い上に、製作者本人にしか使えないですが、習得したあらゆるスキルを発動できます。まあ、倍率は下がるんですが」
「そりゃ、そんな便利アイテムそうなるに決まっているよ……」
「目標は二つ目を作って二刀流ですね。スキルを組み合わせてより強力な攻撃を……と、思ったのですが、要求素材の多さでしばらくはいいかなって思っています」
「あ、目が死んだ」
「こりゃアホみたいな数の素材を要求されたんじゃろうな……それこそ廃人級のプレイヤーかめっちゃ色々さんみたいな課金して時間の都合をクリアしている準廃人級じゃないと作れないレベルで大変なんじゃろう」
「実際、某も素材集めに付き合っておったが……死ねるぞ?」
「うわぁ……」
「どれだけの素材を要求されたのか考えたくもないのう」
「ドロップ率増加をあれほどガンガン使っているのは狂気の沙汰かと思ったでござるよ。しかも製作ツリーの解放も必要でござったから使わない装備も大量に作ることになっておったし」
「聞きたくない聞きたくない」
「ある意味ホラーじゃな、それ」
「ふははは……強化する時も、保護をかけないとおちおち強化できませんからね」
「そこまでしておいて、普通の強化ルールなのか――まさか、失敗時は……」
「ええ、破壊される可能性もありますね☆」
「そのキラキラ声どうやって出したんじゃ。っていうか恐ろしいことをさらっと言わないで欲しいんじゃが」
「ふはは。+10まで強化した、このテンションのままどこかのダンジョンに挑みたいですね。さあ、どこへ行きますか!?」
「いや、どこへ行くかって言われても……全員で古代遺跡にでも行く?」
「ワシはまだそのレベルに達しておらんのじゃが」
「某はレベル85を越えたでござるから、いけないことも無いでござるよ」
「低いうちに行くのもある程度は弱くなるからアリだけど――めっちゃ色々さんが高いからその分平均が上がるだろうし、僕とライオン丸さんの適正レベルより強いモンスター出てきそう。いや、レベルと人数参照はボスだけか……となると道中はあのクリティカル連発オートマタ達に蹂躙されるな」
「やめておくでござるか。他に行って面白そうなダンジョンは何があったでござるかな……」
「魔王城地下の古代遺跡とかどうですか? 海から直接魔王城に行くと入れるところなんですけど」
「あそこ、たしか古代遺跡系ダンジョンで一番難易度が高いんじゃなかったっけ?」
「レベル100推奨でござるな」
「ダメじゃろう、それ。他にするべきじゃぞ」
となると……ワールドマップを開いて適当に決めるか。インベントリから適当に石でも取り出して、投げて当たったところに行こう。
「なんじゃその、ゴールデンタイムで放送していそうな番組的な決め方は」
「別にいいじゃないですか。目的のない旅も」
「たまには男子会もいいものでござるよ」
「むさくるしい絵面じゃのう」
「……一番むさくるしい見た目の人が何か言っているんだけど」
「ですね」
「で、ござるな」
僕ら三人から集中砲火を受け、ライオン丸さんがショックを受けた顔をしているが……だったらなんで 髭もじゃのドワーフにしたんだよ。種族変更できるようになっても頑なにドワーフのままだし。なに? クリスマスが近いからサンタの恰好でもするつもりなの? ……いや、似合いそうだけど。
「とりあえず適当に投げて当たった場所の近くのダンジョンにするからねー」
「何が出るでござるかな、何が出るでござるかな」
「それはまた別な気が……」
「ほいっとな」
マップのウィンドウを適当な位置に固定しておき、ちょっと離れてから石を投げる。あまり離れすぎるとウィンドウが消えてしまうので少し気を使ったが……問題なく成功した。
そして、石が通った場所だが……
「どのあたり、だった?」
「せーので指を指しましょうか」
「でござるな」
「そうじゃな」
「「「「せーの!」」」」
僕たちが指さしたのは、帝国南の砂漠ど真ん中。うん、結構わかりやすいポイントに当たったけど……よりにもよって砂漠だったか。
いや、難易度的には全然問題ないんだよ。でも……
「砂漠って足場も悪いし視界も悪いよね?」
「しかも流砂……特に巨大な砂地獄に飲み込まれると即死ですからね」
「噂ではどこか一か所だけダンジョンにつながっているらしいでござるが、目印もないから探すのが大変すぎて検証班も二度とやりたくない上に、書きようがなかったとかなんとか」
「ええぇ……行くのか、ここ?」
ライオン丸さんが心底嫌そうな顔をしているけど……いや、でもダーツ……じゃなくて石ころが当たった場所だから。
それに別にその砂地獄に飲み込まれに行くわけでもないし。
「だから大丈夫大丈夫。適当にピラミッドの中にでも入ってさっと探索してボス倒して終わりだって」
「なんか不安になるんじゃが」
@@@
そんな話をしていた15分後のことである。
まず、砂嵐により視界と足場が悪い中周囲の探索をしていたよぐそとさんが唐突に出現したバッファローにひき逃げされた。そして、頭から砂につっこんで流砂に飲み込まれる事件が発生する。それを助けようとしたライオン丸さんが二次災害。
僕とめっちゃ色々さんでいっそ爆破してふっ飛ばせば助けられるんじゃないかとトチ狂ったことを言い出したために爆発物を取り出したが……砂嵐のせいで爆弾が誘爆するという恐怖の事態が。今まで砂嵐の中爆弾を使ったことがある人がいなかったのだろう……砂嵐では爆発物は誘爆する。このゲームの新たな設定が一つ判明したところで僕とめっちゃ色々さんも流砂に飲み込まれる。
そして、気が付いたときには砂の下の広大な空間で巨大なスフィンクスの目の間に立っていたのだ。
「……え、ナニコレ」
「スフィンクスじゃのう……っていうかフラグ回収早いなオイ」
「本当に砂の下のダンジョンにたどり着くとは……予想外――というほどでもないでござるな。村長がいた時点で予測はしていたでござる」
「どういう意味だオイ」
「しかし、よぐそとさんが砂に上半身沈んだ時点で気が付くべきでしたね。即死系の罠は大抵頭が入った時点で作動しますから、あの時死んでいなかったのはここへの入り口だったので即死判定なかったからだと」
「結局、僕とめっちゃ色々さんも慌てていたってことだね」
「で、どうするんじゃ? 探索するかの……ちょうどいい感じに女神像もあることじゃし、またあとで来ることも可能じゃけど」
ライオン丸さんの視線の先には、この前のアプデで追加されたファストトラベル地点に登録できる女神像が鎮座していた。なるほど、準備を整えてくるのもアリかもしれない。だが、今回の目的は行き当たりばったりなダンジョン攻略だ。
「いまさら戻るのも何だかなぁ……別に装備的に困ったわけでもないし、普通に突貫して大丈夫でしょ。ただ、今回は【村長】のままだから水魔法大した威力出ないよ。使えるのはマーメイドぐらいかな。あ、シーモンキーもか」
「強化マラソンの最中じゃったからなぁ……別に戦えないわけじゃないからいいじゃろ」
確かに。『マジックドリル』も使えるしね。いや、久々にスコップとドリル使うんだけど……別に他の職業でも装備自体は使えるからインベントリに入れてはいたけど。
最近のアプデによる仕様の変更のおかげでアイテム喪失や所持金減少に関してのペナルティが無くなったのだ。おかげでアイテム入れっぱなしでも不安は減った。ただし、経験値減少は増えた…………特にレベルが上がれば上がるほど減少ペナルティがきつくなるのである。魔王城とか一部コンテンツは死んでも経験値は減らないんだけどね。基本、死に覚え前提だし。
「とにかく、スフィンクスの前足の股の辺りに入り口がありますし、入ってみましょうか」
「未踏破ダンジョン、ワクワクするでござるな」
「……未踏破じゃっけ?」
「少なくとも検証班はたどり着いているんじゃないの? シーズン2前だからファストトラベルできる前っぽいし、周回はしていないかもしれないけど」
というわけで、中へと進んでみることにしたのであった。




