表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/73

第三十二話 潰れゆく

「合体技? 何それ」

「神南さんの炎に、俺が酸素を送ります。そうすれば、瞬間的にすごい熱を出せるはずです」


 俺がそう言うと、神南さんはふむふむと頷いた。

 イデアの炎といえども、ある程度は物理法則にしたがっている。

 酸素を送り込んでやれば、その勢いは大幅に増すのだ。


「問題は、それを叩き込むすきがあいつにあるかどうかね。攻撃を仕掛ける直前に、イデアで動きを止められたらこっちがヤバいわ」

「……あいつ、かなりギリギリまでイデアを使いませんでした。たぶん、何らかの制限があるんじゃないですかね」

「なるほど。確かに何の制限もないなら、初手で動きを封じてたでしょうね」


 重力なんて、きわめて使い勝手の良い能力なのである。

 それを今まで温存していたからには、何らかの理由があるに違いない。

 消耗が激しいのか、利用できる回数そのものに制限があるのか……。

 いずれにせよ、ポンポンと連発はできないはずだ。


「とは言っても、何の策もなかったら止められるだけよ」

「そこは――」


 俺は神南さんに近づくと、鎧のモンスターに声が聞こえないよう耳打ちをした。

 すると俺の考えを聞いた神南さんは、渋い顔をしつつも言う。


「賭けになるわね。でも、それしかないか……」

「やりましょう」

「そうね、ギャンブルは嫌いじゃないわ」


 そう言うと、神南さんは勢いよく鎧のモンスターに向かって飛び出した。

 途端に増大した重力が容赦なく彼女の足を止める。

 しかし、これは事前に予想していたこと。

 すぐさま俺が動き出し、雷撃を放つ。


「ぐっ!」


 今度は俺の身体を強烈な重力が襲った。

 これは結構堪えるな、未知の感覚だ。

 内臓まで重さを増しているせいだろう、強烈な吐き気がしてくる。

 だが一方で、神南さんの方は重力から解放されたようだった。

 やはり、一人にしかこのイデアは使えないようだ。


「はああああっ!」


 神南さんの一撃が、鎧のモンスターに炸裂した。

 ――キイイイィンッ!!

 剣と剣が交錯し、激しい金属音が響く。

 すると俺の身体が、にわかに重力から解放された。

 剣戟を繰り広げている状態では、イデアを使うことができないようだ。


「外気法……! サンダーボルト!!」


 威力を底上げしたサンダーボルトを放つ。

 雷撃がまっすぐに飛び、鎧のモンスターを覆った。

 若干の溜めが必要だった分、大きく増幅された威力にモンスターの動きが止まる。

 そして――。


「逃げた?」


 ここで、鎧のモンスターが大きく飛びのいた。

 モンスターの方から俺たちと距離を取るのは、これが初めてである。

 さて、何を仕掛けてくるだろうか?

 前回遭遇時の行動からして、恐らくは――。


「そう来たか!」


 鎧のモンスターの腕が変形を始めた。

 たちまち、手持ち式の大砲のようなものが現れる。

 入鹿ダンジョンで猛威を振るったビーム砲だ。

 その狙う先は、もちろん神南さんだ。


「先に攻めるっ!!」


 攻撃を撃たれる前に、距離を積めようとする神南さん。

 モーターのような駆動音が響く中、全速力で駆け抜ける。

 そして発射の準備が整ったと同時に、神南さんが空高く飛び上がった。


「いまだっ!! ウィンドハンマー!!」


 攻撃が放たれる直前。

 俺が魔法で神南さんの身体を吹き飛ばした。

 直後、青白いビームが天井に向かって放たれる。

 ――ズドゴォオオンッ!!

 コンクリートの分厚い天井に穴が開き、そこから一気に亀裂が走った。

 たちまち、膨大な土砂とコンクリートの塊が降り注ぐ。


「ムダダ」


 再び、電子音じみた声が響いた。

 それと同時に巨大なコンクリートの塊が宙に浮かぶ。

 流石は重力を操るイデア能力。

 重くすることができるならば、軽くすることもできるらしい。

 だがこれは、俺たちの予想した通りだった。


「いや、これこそが望んだ状況だよ」

「ナニ?」

「イデアを発動している間、あんた何もできないでしょ。さっき戦っている時も、イデアを使う時は必ず他のことをしなかったし。逆に、戦闘中にイデアを使うようなこともしなかった」

「ナニガイイタイ?」

「つまりあんたは、その岩が落ちてこないように抑えているのが精いっぱい。私たちが何をしようが、指をくわえて見てることしかできないってこと」


 神南さんがそう言い切った瞬間、鎧のモンスターからくぐもった声が漏れた。

 やはり、俺たちの予想した通りだったらしい。

 身動きの取れない鎧のモンスターを、神南さんは憐みの籠った目で見つめる。

 そして、剣を抜いて炎を高めた。


「行くわよ!」

「はい!」


 燃え盛る炎に向かって、思いっきり風を吹き込む。

 赤々と燃えていた炎がみるみるうちに青白く変化していった。

 高まる熱、吹き荒れる熱風。

 神南さんの髪がふわりと浮き上がり、何とも言えず幻想的な光景が生まれる。

 その姿はまるで、戦女神のようだった。


「いまだ!」

「はああああっ!!!!」


 それはもはや、光の剣とでもいうべき代物であった。

 一閃。

 鎧のモンスターの身体が、その上に浮いていたコンクリートごと切り裂かれる。

 時が一瞬、止まったように思えた。

 そして――。


「グガガガガアアアアッ!!!!」


 断末魔の叫びを響かせながら、押しつぶされていく鎧のモンスター。

 こうして、戦いは無事に終わったのであった――。


読んでくださってありがとうございます!

おもしろかった、続きが気になると思ってくださった方はブックマーク登録や評価を下さると執筆の励みになります!

下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしていただけるととても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ