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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

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第二十九話 囚われの姫

「触れたら死ぬで? 殺されたくなかったら、はよ降参せえや」


 そう宣言すると、新沢さんは氷の刃を手に駆け抜けた。

 ――速い!!

 瞬く間に、数十人いた山猫の構成員たちが切り伏せられる。

 そしてそのまま、誰も起き上がってくることはなかった。

 傷はさほど深くないにもかかわらず、だ。


「全員死んだ……?」

「瀕死になっとるだけや。完全には死んどらん」

「噂通り、とんでもない能力ね……。いったいどうしたら……」


 倒れた構成員たちを見ながら、何とも言えない顔をする神南さん。

 イデア能力というのは、当人の願いを反映すると言われている。

 命を吸う氷なんて極めて殺意の高い能力、一体どうしたら発現するのか。

 神南さんが恐ろしさを感じるのも無理はなかった。

 俺ですら、改めて新沢さんに得体のしれないものを感じる。


「おぉっと、怖がらせてしまったようやな。ま、俺はちょうど災厄世代ど真ん中やからな、いろいろあったんよ」


 そういうと、新沢さんは朗らかに笑ってみせた。

 災厄世代というのは、ダンジョンが出現した前後に生まれた世代のことである。

 当時は世相が著しく混乱していたため、非常に苦労した世代とか言われている。

 飄々とした態度だが、新沢さんもいろいろあったということか。

 とはいえ、ここまで殺意の強い能力はいろいろと恐ろしいけれど……。


「おっと、新手や!」

「げっ、何あれ!!」


 新たに現れた山猫の構成員は、まるで鎧のようなスーツを着ていた。

 そしてその手には、巨大なガトリングガンを抱えている。

 ……それ、明らかに人間じゃなくて車両とか建物に使う武器じゃないか?

 呆れるのも束の間、回転式の銃身が勢いよく弾丸を吐き出す。


「こりゃたまらん! 回避や!」


 左右に移動して、どうにか射線に入らないようにする。

 ――ゴゥッ!!

 身体のすぐ近くを弾丸が通り過ぎ、嫌な音が耳に残る。

 この威力だと、流石に当たったらただじゃすまないな!


「大丈夫や、あの連射速度じゃすぐに弾が尽きる! 凌げばええ!」

「そうは言ってもねえ!」

「まずい、二人目だ!」


 そういっているうちに、もう一人、ガトリングガンを抱えた者が出てきた。

 流石にこの狭い場所で二人が相手となると、かなり厳しいぞ。

 ちょっと誤魔化せるか怪しいけど、上級の雷魔法でやるか?

 けど、新沢さんの前でそれは……。

 俺がわずかながらにためらっていると、神南さんが剣を抜く。


「炎よ!!」


 神南さんがそう叫んだ瞬間、剣が激しい光を放った。

 ――タタタタタッ!!

 白い世界の中で、神南さんのものらしき足音が激しく響く。

 それにやや遅れて、金属が引き裂かれるような音がした。


「おぉ、流石!!」


 視界が回復すると、神南さんが構成員二人を倒していた。

 その近くには、銃身を切り裂かれたガトリングガンの残骸が転がっている。

 この一瞬で距離を詰め、無力化を図ったらしい。


「やるやん。ナイトゴーンズの元エースだけはあるなぁ」

「あの頃から腕は落ちてないので」

「桜坂君も頑張らなあかんで?」


 俺の方を見て、発破をかけてくる新沢さん。

 そう言われると、ますます魔法を使いづらくなるな……。


「……しばらく新手はこなさそうね。新沢さん、咲はどこにいると思う?」

「もっと奥やろ。囚われのお姫様は、城の最深部におるにきまっとる」

「先はお姫様って柄じゃないけどね」


 そう言いながら、大空間から続く通路へと足を踏み入れていく。

 侵入者を防ぐためなのだろうか。

 コンクリート製の通路は細く長く、妙な圧迫感があった。

 前世で見た要塞とかも、大軍が入ってこないようにこんな構造になってたな。


「……妙ですね、全然誰も出てこない」


 こうして施設の中を走り続けること数分。

 俺は何とも言えない違和感を抱き、ぽつりとつぶやいた。

 さっきはあれだけ激しく抵抗したというのに、今は全く抵抗されない。

 それどころか、山猫の構成員らしき者も見当たらなかった。


「逃げたんやないか? 所詮は犯罪組織や勝てないと判断したら逃亡一択やろ」

「でもこれだけの組織ですよ。普通ならもっと出てくると思いますけど」

「何か奥へ誘われているような気もするわね。……でも、今更止まれないわ。先を助けないといけないもの」


 もともと、来栖さんは神南さんが紹介してくれた人である。

 それだけに、事態に巻き込んでしまっていると思っているのだろう。

 唇をかみしめた神南さんの顔からは、強い責任感が垣間見えた。

 するとここで、大きな金属製の扉が見えてくる。


「……何かしら、これ」

「ごっつ頑丈そうやな」


 扉の存在感に、俺たちはにわかに足を止めた。

 中に入るのを躊躇させる、何か嫌な気配が感じられた。

 するとここで、何か空気の抜けるような音がして扉がひとりでに動き出す。


「……ご招待ってわけか?」

「そうみたいね」


 やがて開かれた扉の向こうには、これまた広々とした部屋があった。

 そしてその中央には、白い甲冑のような機動服を着た男が立っている。

 その姿はおよそ犯罪組織のアジトには似つかわしくない、騎士のようだった。

 さらにその手には――。


「すいません、見ての通り捕まっちゃいました……」


 力なく笑う、来栖さんの姿があった。


いよいよ本日は書籍版の発売日です!!

ウェブ版から加筆修正している点など多くございますので、ウェブ版読者の皆様もぜひぜひお手に取っていただけると幸いです!

もちろん、刀彼方先生による美しい挿絵も見どころたっぷりですよ!

書籍版の方も、何卒よろしくお願いいたします!

GA文庫様特設ページ:https://ga.sbcr.jp/special/zensemadoushi/

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