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第12話





 朝はゆっくりとしていたが昼には店に向かう。


 中は何もない箱型だが、これでいい。

 さっそく店を締め切って通販スキルを使用する。


 本来なら雰囲気たっぷりのアンティーク調の家具でまとめたいのだが、ポイントが馬鹿高い。

 しかも買い取りシステムが地味に役立たずで、素材は高く買い取ってくれる癖に金貨や銀貨といったお金は、何故か半値のポイントにしかならない。

 つまり最悪ポイント補充したけりゃ何か素材など高ポイントになりそうなのを購入してぶち込んだ方が数十倍マシということだ。


 まあそんな訳で仕方がないから大手量販店の棚等を大量購入してセットする。

 セットしたい場所を意識して購入するだけでそこに出てくるので非常に便利だ。

 2階への階段と地下室へ行く階段が隅っこに固まっているので、そこを大きく囲うようにカウンターを設置する。

 そして片方を売買・片方を買い取り専用カウンターとする予定だ。


 売買側の方は、大きな棚だけでなく中央に置く全方位から取れるワゴンタイプの棚などを置く。

 そして日用雑貨やちょっとした小物などを並べていく。

 壁側には調味料や食材などを隙間なく並べる。

 カウンターの3方向目が隣接する店の奥側には暖簾をかけて仕切りとする。

 中には強化ガラスなどを使用して展示してある宝石類や魔宝石だ。


 宝石類は通販スキルで。

 魔宝石と呼ばれるものは異世界通販スキルで。

 それぞれ用意した。

 こんな所で貴族向けの商品など並べてもあまり意味はない。

 なのであくまで庶民向けで値段もお手頃なものを用意した。

 まあ『俺がお手頃な値段』として販売しているだけで『この世界の常識』とは違うんだけどね。


 特に魔宝石は、普通の宝石とは違い魔法や魔力を内包しているらしい。

 例えばコレだ。



■琥珀の魔宝石

 琥珀が魔宝石化したもので所持者の魔力を上昇してくれる。


 魔力+10

 

 平均価格:金貨30枚~50枚



 ステイタスを1上げる装備でも貴重だと言われている中での10上昇である。

 10も魔力が上がれば攻撃呪文の威力が2段階近く上昇するらしい。

 そりゃ冒険者からすれば大金叩いてでも欲しがるだろうよ。


 これを当店では何と金貨30枚という底値で売っている。

 ちなみに仕入れ値は消費ポイント換算で金貨5枚なんだけどね。

 相変わらず仕入れ値がおかしい通販スキルで、本当に助かってます。


 他にも単なる宝石だけど金貨15枚は確実なのを金貨10枚で売ったり。

 まあこんなことをすると大人買いする人が出てくるかもしれないが、所詮は冒険者中心の地方都市。

 こんなところにまで宝石を買いに来る貴族なんて居るのか?ってのがあって気にしていない。

 それに明らかに転売目的そうな商人にも売るものや数は制限するつもりだし。


 そして最後に冒険者向けスペースには、最高品質の鉄装備や鋼装備が並んでいる。

 その中に、少しだけファンタジー界では有名な、魔力を通すという金属ミスリルを使用した武具。

 聞いた所によると、オリハルコンよりは市場に出てくるらしく一流の鍛冶師なら加工できる金属のようだ。

 なので完全ミスリル製の武具を目立つ場所に飾って、鉄や鋼の刃先だけミスリルでコーティングしているタイプもそれなりに並べる。

 それだけではない。

 異世界通販スキルを利用して異世界装備も充実。

 炎猪と呼ばれるモンスターの革を利用して作った炎耐性の高い炎革バックラー。

 一角トプスとかいう巨大なモンスターの角を加工して作った槍、トプスランス。

 牙が鋭いことで有名らしい月光タイガーの牙を利用した月光ナイフ。


 身代わりの石と軽量石の2つを埋め込むことで一定ダメージを受けず、更に見た目に反して非常に軽い大盾である当店オリジナル盾の『王者の大盾』なんてものも用意した。

 ちなみに王者の大盾は金貨100枚します。

 誰が買うんだと思うが、オリハルコンの斧が売れたこともある。

 いつ売れるかもわからん。

 まあ原価は金貨10枚なんだけどね。


 一流の冒険者に向けて、白銀の剣やバトルランスという長槍。

 長老ドリアードの枝で作った新緑の弓など、一流装備も満載。

 ここまでの品揃えなら、その辺に店には負けないだろう。


 2階には在庫をそれっぽく並べておく。

 あとは少し休憩出来るスペースも用意して事務仕事が出来る場所も作っておいた。

 逆に地下室には入った入口に通販スキルで売っていた謎の特大金庫扉を設置。

 一度閉まればちょっとやそっとでは開けられないようにしておいた。


 中には、宝石系の高価な在庫と特大金庫を用意。

 魔法バッグの中でも良いんだけど、ちゃんと金庫に入れておきたいというのもある。


 ちなみに魔法バッグは、取られても勝手に手元に帰って来るらしい by神様


 あと地下は暗いのでリモコン式の照明を大量に設置した。

 電源とかどうなってるんだよって思った人も多いだろう。

 買う時に『乾電池式』とか『電気式』って書いてあった。

 当然電池が入っているであろう場所を確認すると、ちゃんと乾電池用のソケットがあった。

 そこに電池を入れればちゃんと動く。

 電気式は、何とかしてコンセントから電気を持ってこいと言う感じで、異世界ではあまり使わないものになるだろう。

 そしてふと『乾電池と電池しかないのに何で表記が?』と思って色々確認していた時に、その問題児は現れた。


 懐中電灯『魔石式』という謎の商品である。

 試しに購入したら電池部分に謎のソケットがあった。

 異世界通販で魔石と検索すると色んな魔石が出てきた。


 後に街で魔石を売っている店主から色々と聞いたのだが、異世界版の乾電池らしい。

 ただし用途が幅広く、日用品の燃料から武器や防具のサポートに魔法アシストなど様々。


 つまりわざわざ乾電池や電気の概念を頑張らずとも、魔石式で統一して売ればいいという訳だ。

 これらを魔道具とか、武具類なら宝具というらしい。


 あとは異世界通販で、迷宮トラップという商品をいくつか購入した。


 登録した人間以外がソイツの前を横ぎると動き出すゴーレムとか、引っかかると大きな音が鳴り響く足紐。

 天井からネットが落ちてきて一網打尽にされるなんて罠もあったり。

 全て店舗セキュリティのために購入した。

 そう思うと某大手セキュリティ会社って便利よね。


 色々と商品を並べているだけで、すっかり夜になってしまった。

 しかしほぼ完成と化した店舗を見ていると『俺の店』という愛着が湧いてくる。


 結局、開店直前で色々と商品を差し替えるハメになったが損はない。

 未使用品をそのまま買い取りに投げ込んだ場合は、ポイント損失無しで還元されるようだ。

 通販スキル、マジで優秀。


 そしてまあ色々と……本当に色々とあったが、ようやく店をオープンすることが出来る。

 いや、ホント店1つ出すだけでどれだけ苦労しなきゃならんのだ。


 そう言えば開店準備中に改装していた住居の引き渡しがあった。

 あっちもあっちで何とかしなきゃならんね。





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