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転生モーツァルトは女子アイドルを目指します  作者: ほうこうおんち
偶像(アイドル)でもあり創造者(クリエイター)でもあり
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帰国して準備だ!

 スケル女グループのパリ公演は成功し、メンバーは帰国の途についた。

 途中別仕事でオーストリアに赴いた天出優子も、パリで乗り換えての帰国となる為、シャルルドゴール空港で皆と合流する。

「しんどい……」

 飛行機恐怖症の優子にはこたえている。

 なお、アダー(ジョ)リーダー垂水悠宇とアルペッ(ジオ)リーダー陸奥清華(さやか)もくたびれた顔をしている。

 後ろの方で藤浪晋波(くには)、長門理加、筑摩紗耶が

「治安が悪い?

 そこを生き抜くことこそ、生きている証明!」

「この空港、探検しがいがあったね」

「モンサンミッシェル観光が中止になったのが納得いかない。

 ちょっとオランダまで行って、ルーベンスの画を見ながら

『パト〇ッシュ、なんだかとっても眠いんだ』

 をしようとしただけなのに」

 と噛みあわない会話をしているから、何があったのかは大体想像が出来てしまう……。


「あのアニメの舞台はベルギーなんですけどね。

 オランダまで行って、何をするつもりだったのか……」

 普段はマニアックなボケをする暮子莉緒が、溜息混じりにツッコミを入れている。

 なにはともあれ、無事に帰国出来る運びだ。




「皆さん、お疲れ様でした。

 帰宅するまでが海外ツアーです。

 ちゃんと家に帰りましょうね。

 あえて名前は言いませんが、分かりますね?

 マネージャーがしっかり連行しますけど、帰ったらもうどこかに行かないで、体を休めましょうね」

 こうして解散となった。

 海外ツアーのうち、楽な方のパリツアーは終わった。

 次は気楽には行けないドイツの音楽祭が待ち構えている。


「お疲れ~。

 早速だけど、次のドイツ行きに向けて練習始めるよ」

 帰国してから次のレッスン日、戸方風雅総合プロデューサーは皆にそう告げた。

 スタッフを通じてセットリストの説明がされる。

 パリで、フロイライン!リーダーが

「舞踏会には舞踏会用、軍隊の行進にはブラスバンド、いずれも合った形がある」

 と言っていたように、ヨーロッパの日本オタクが楽しむイベントと、完全アウェーの音楽祭用とは、違う楽曲構成になるようだ。


 とりあえず2曲目から練習を始める。

 演出やダンスを変えてのものだが、以前戸方Pが告げたように

「僕たちは、僕たちの音楽で勝負する、アイドルを極めたもので勝負する」

 のだから、持っている技術を突き詰めるのであり、出来ない事を今から出来るようにするわけではなかった。

 2時間全体練習をし、本日は解散。

 どこぞのグループのように、限界を越して第七感(セブンセンシズ)が発動するまで猛特訓を課すわけではない。

 流れを理解して貰ったら、それに沿った形で各自が次回までに練習して来るのだ。


「天出、プロデューサーが呼んでる」

 帰ろうとした優子をスタッフが呼び止める。

 プロデューサーの居る部屋に入ると

「パリ公演の他に、オーストリアでのテレビ仕事、お疲れ様でした」

 と戸方が話して来た。

「マネージャーから聞きましたよ。

 君、その仕事があるって知らなかったみたいですね。

 メールはチェックしてるみたいですけど、ちゃんと隅から隅まで読んで下さいね」

 思いっ切り釘を刺された。

 天出優子(モーツァルト)は基本、興味のある事以外は仕事が雑だったりする。

 今も昔も敏腕マネージャーが必要なのだろう。

 戸方は話を続ける。

「僕はねえ、ドイツ語の通訳も手配したんですよ。

 でも君、通訳無しでいけたんですね。

 しかも専門的な話が出来ていた、と。

 通訳に雇った人が驚いてましたよ。

 言い回しが古臭いけど、自分以上に音楽についてのドイツ語が達者だったって。

 一体どこでドイツ語を覚えたんですかね?」

「あはは、まあ、その……」

 まさか前世で、とは言えない。

「まあ、どこでも良いですね。

 それは重要な事ではないです。

 用件は、それ程のドイツ語が出来るのなら、これを翻訳して貰おうと思いましてね」

 それは、セットリストに用意された、最初に歌う曲である。


 バラエティーやお笑いで「つかみ」というものがある。

 番組冒頭やネタの入りで使われる、最初のボケやギャグの事だ。

 これで視聴者や観客の関心を惹く。

 つかみで失敗すると、「なんかつまらない」と早々に見限られる事だってあるから、ここは重要だ。

 小説などでも、最初の数話でファンを掴まないと、読者は読むのをやめてしまう。

 音楽で言えば、出だし部分で印象的な旋律があるものは、人の記憶にしっかり残る。

 ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」第1楽章、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第4楽章、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」などは、冒頭部分が強くて多くの人が「そこだけ」でもよく知っている。


 ドイツの音楽祭、クラシックやそれに類する音楽の祭典において、日本のアイドルは「招かれざる客」である。

 何かの思惑で招待されたが、合わないと思われたら、席を立たれるだろう。

 アイドル参加としての「つかみ」は、プロデューサー同士の話し合いで「フロイライン!」が務める事に決まっているが、彼女たちの音楽は「クラシックに片足突っ込んだ」ものだ。

 だからフロイライン!が認められたとしても、その次のスケル女という典型的なアイドルソングが受け容れられるとは限らない。

 自分たちは自分たちで「つかみ」を万全にし、冒頭で切られるような事は避けたい。

「まあものの試しで見てみるか」程度の客は、盛り上がるのが中盤以降だとしたら、そこまで我慢して見てなんかくれないのだ。


「で、最初の曲をドイツ語で歌うんですね?

 ここだけは相手に合わせる」

 戸方は頷く。

 いかに「アイドル楽曲で勝負」とはいえ、完全アウェーの中、相手に全く配慮しないわけにはいかない。

 ドイツ語の歌と、歌手の技量で観客の心を「つかむ」のだ。


「ですが、なんで私なんですか?

 ドイツ語の通訳を手配したように、伝手はあるんですよね?」

 優子は疑問に感じた事を尋ねた。

 大体、モーツァルトの転生体で「音楽の天才」と今でも言われる天出優子の欠点の一つが、作詞能力の低さである。

 前世がある人間ゆえに、語句のセンスが前世の体験に引っ張られてしまうのだ。

 だから、オペラを書かせれば今でも素晴らしいかもしれないが、I-POPの作詞では致命的に「老人でも歌わないような歌詞」になってしまう。

 だが戸方は言った

「そういうドイツ語にして欲しい。

 だから君に頼むのだ」

 と。

 クラシック愛好家に

「僕は君が好きだ~!」

 という歌を聞かせたら、白けてしまうかもしれない。

 むしろ

「我は汝をぞ愛おしく思ふ」

 となんて言い回しの方が「お!」と思われる。

 こういうのは、会話メインの通訳では難しい。

 専門で書いている者でないと。

 どういう訳か、目の前の高校1年生の女子アイドルがそれを出来る。

 ならば頼むしかない。


「そういう事情なら分かりました。

 翻訳しますね。

 でも、歌えるのでしょうか?

 言っちゃなんですが、メンバーはドイツ語なんてさっぱりですよ?

 大学で習っている人もいますけど、大半は英語ですらダメで……」

 英語はペラペラなのがいるが、長門理加(そいつ)はそいつで問題がある子ではある。

「まあ、喋るのと歌うのでは違いますからね。

 音を再現出来れば良いでしょう。

 ですが、それも素人判断ではいけない。

 歌詞が出来たら、メンバー内オーディションします。

 天出さんは審査員側になって、メインで歌える人を選んで下さいね」

「やれやれ……世間が言うように、他人に丸投げ気質なプロデューサーですね。

 やってみましょう」

「ありがとう」


 コンサートをするにあたり、いつでもどこでも同じというものはない。

 常にそこに合わせた形にしていく。

 そうするからこそ、音楽は「生きている(ライブ)」と言えるだろう。

 かくして次のドイツ公演に照準を合わせ、スケル女内での準備が進められていった。

おまけ:

作者、ドイツは「ヒトラーの山荘」が在るベルヒテスガーデンしか行った事ないので、

次回からのドイツの描写では絶対トンチンカンな事言いそう。

怖いから街の描写とか、書かないようにします。

行った事ある街なら、どんな感じなのか分かるんですけど。

空港から降りて、何で移動して、途中どんな風景が見える、とか。

どこそこの観光地の近くに、どんな店があるとか(もう閉店したかもしれませんが)。

この通りの治安は良いとか悪いとか。

(ただし、位置関係は知っちゃかめっちゃか。

 Google Map見ながら添削してますわ)

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― 新着の感想 ―
どうせドイツで公演するならRock Me Amadeusをリミックスしてやればいいのにとは思う メインボーカル優子でやれば他のメンバーもドイツ語できなくてもバックコーラスくらいできるでしょ Falco…
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