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転生モーツァルトは女子アイドルを目指します  作者: ほうこうおんち
偶像(アイドル)でもあり創造者(クリエイター)でもあり
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フランスでの公演は無事終了

 天出優子モーツァルトは転生前のフランスの音楽を聴いている。

 感想を日記に残したのは、父のレオポルトである。

「詠唱に似ているような曲は、内容がなく、冷たく、みじめだ」

 そのように記述していて、フランスへの印象が良くなかった事が伺える。

 これはルイ15世への謁見が、王族の急死によって叶わなかった事の不満もあったかもしれない。

 謁見という名誉ある行事はなかったが、代わりに晩餐会に招待される栄誉には浴していたが。


 モーツァルトもフランスには良い思い出が無い。

「神童」と持て囃されはした。

 しかし、大人になってからの訪問時は無視されている。

 金払いも渋かった。

 そのせいか、ウィーンやイタリアと並ぶヨーロッパ音楽の都だったのに、モーツァルトはパリと縁がほとんど無い。


 そんな事もあったフランスなのだが、転生後は様子が違う。

 大量の人が「有料で」集まり、盛り上がっているのだ。

 そう、フランスはヨーロッパ屈指のオタク大国と化していて、古くは浮世絵や柔道、少し前はロボットアニメ、最近はMANGAやアイドル文化も流行っているのだ。


 一方で、実は変わっていない部分もある。

 レオポルト・モーツァルトがネガティヴに捉えたのは、フランスの作曲についてである。

 イタリア風、ドイツ風とも違っていた為、異質なものを拒絶した可能性が高い。

 フランスは社交界でのダンスや室内楽が主流だった。

 そこは世界各国の最新の音楽を取り入れたものである。

 モーツァルト一家の音楽も、数多くある世界の音楽の一つだったのだ。

 この風潮は現在でもそう変わらない。

 日本の音楽、特にサブカル系のアニソン、アイドル、渋谷系といったものを取り入れている。

 発信力こそアメリカ、イギリス、日本などに比べて弱いが、それでもヨーロッパ屈指の音楽市場であり、ヨーロッパ各地から客が集まる場でもあった。

 悪く言えば、昔からゲテモノ食いな部分があると言える。


 急遽参戦したとはいえ、スケル(ツォ)のライブには数千人の客が集結した。

 ノール・ヴィルパント見本市会場の特設会場は満員御礼である。

 以前、スケル女がパリでライブをした時は、有名なキャバレー「ムーラン・ルージュ」に併設されたライブハウスで行われたのだが、その時は収容人数800人程度を満員に出来ず、灰戸洋子などは悔しい思いをしたものである。

 それに比べて、この盛り上がりは嬉しいものがあった。




 コンサートは、スケル女の王道ソングを歌い、時には皆で合唱したりして楽しく終わる。

 楽屋では、皆が成功に対し満足して浮かれていた。

 そんな中で優子は浮かれていない。

 面倒や奴等が押しかけて来る予感がしていたからだ。

 衣装を着替え、メイクも落としていると、案の定奴等が来た。


「ユウコ・アマデ、君に会いたいって人が来ているよ」

 現地コーディネーターに言われ、顔を出すと予想通りエリアスとゾフィーの双子音楽家が立っていた。

 この2人とは、同級生のピアニスト堀井真樹夫の縁で巡り会あったが、特に妹の方とは険悪な関係だ。

 ゾフィーの方が堀井に惚れているっぽく、その堀井が気にしている優子が気に入らない。

 音楽勝負をして負けたのだが、優子がアイドルをしている事で、その一点で彼女を馬鹿にしていた。

 優子も、転生後……いや、前世で死ぬ前後から

「音楽は楽しいもの、音楽に貴賤なし」

 と思っていたから、クラシック界に居るだけで高みに立っているようなゾフィーの態度は気に入らない。

 兄の方は、妹のような喧嘩腰ではないが、やはりクラシック至上主義者のようだ。

 言い方が一々上から目線なのも鼻につく。

 そんな感じで、日本で一度バチバチな対立をしての今日であった。


「随分と幼稚な音楽を披露したようね」

 お高い感じでゾフィーが喋りかける。

 ちなみにドイツも、日本のポップカルチャーは大量に入り込んで、JAPANイベントは盛況な国だ。

 音楽に関しては、アニメから入って来て、その付属としての音楽は受け容れられているが、アイドル文化は極めて少ない。

 それもあってか、日本アニメのキャラクターTシャツを着ている癖に、ゾフィーはアイドル音楽を馬鹿にして来る。


「幼稚ねえ。

 全部聴いたんだ、酔狂な事ね」

 天出優子(モーツァルト)はドイツ語で返す。

 古いドイツ語話者な事もあり、転生後に日本語の女性言葉を話しているのに比べ、ドイツ語では語彙が多く、難しい言い回しもする。

「酔狂と自分で言うのね?

 貴女自身も、アイドルなんていうのが低俗な音楽って分かっているんじゃないの?」

「私はそう思わないが、君は違うんだろ?

 嫌いな音楽を1時間も聞いているその忍耐には感心するよ。

 私なら最初の数曲で大体把握する。

 君は全部聴いたようだが、まだ理解に到っていないようだな」

「ふん。

 分かるわよ。

 低俗な音楽だってね」

「やはり理解が足りない。

 私たちは今日、全て日本語で歌ったのだ。

 それでも観客は盛り上がった。

 音楽は言語の壁を超えたのだよ。

 まず、そこに思い至らないのかね?」

 ムっとする妹に代わり、兄が口を挟む。

「ユウコ君、貴女の言い分は分かるよ。

 クラシックだって国境や人種、言語の壁を超えて届く音楽だからね。

 でも、同じ音楽の中でも心に響き感動を与え続けるものと、一過性で明日には忘れるようなものがある。

 我が妹はそう言いたいようだが」

 こいつは中々ズルい。

 自分の毒舌を、さりげなく妹になすりつけている。

 そして

「僕は君を評価しているのだよ。

 もうこんな幼稚な音楽は卒業して、君もドイツに来て、我々と真の音楽を学ぼう。

 いや、君は作曲家として素晴らしいのだから、我々に教えて欲しいな」

 なんて言って来た。

 妹よりは口喧嘩しづらい相手だ。


「どうやら貴方たちは、ワルツやマーチの演奏と、オーケストラでの交響曲を一緒にする人たちのようですね」

 そう口を挟んだのは、意外な人物である。

 スケル女の後、夕方の部でコンサートするフロイライン!のリーダー比留田茉凛である。

 後ろには、武藤愛照(メーテル)他、メンバーが控えていた。

 全員が「ラスボス級」と言われるだけに、醸し出す圧がハンパじゃない。

「ふん、日本人はドイツが好きだっていうのは本当のようね。

 どこの誰か知らないけど、ドイツ語を話すなんてね」

 圧に押されながらも毒を吐く妹を制止し、兄が尋ねた。

「どういう意味ですか?

 そこの奥さん(フラウ)

 比留田は中学生の頃から年相応に見られず、若奥様みたいな仇名をつけられていたから、内心ムッとはした。

 それを表には出さないが、事情を知っている人には

(あ、怒ったな)

 と伝わった。

 そのせいで、口調が刺々しい。

「舞踏会には舞踏会用のオーケストラ、軍隊の行進はブラスバンド、いずれも合った形がありましょう。

 スケル女の歌唱も、イベントに合ったものにしたまで。

 それを見て、全てを知ったなどと思い込むのは、思い上がりも甚だしくなくって?

 あ、ワルツもマーチもクラシックですよ、お分かりになりますよね?」

「馬鹿にするな、それくらい分かるわ!」

 妹は相変わらず激昂しているが、兄は居住まいを改めた。

「なるほど、今日のユウコたちの音楽は、君たちの音楽の一端でしかない、と」

「そうですわ」

「では、ドイツでの音楽祭では異なる音楽をお目にかかれる、と?」

「そういう事になります。

 スケル女だけでなく、私たちフロイライン!もですがね」

「そうですか。

 それは失礼しました。

 確かに今日だけで判断するのは短慮です。

 ドイツにてお待ちしております。

 どれだけのものを見せてもらえるか、期待せずに待っていますよ」

 そうして、まだキーキー言っている妹を連れて帰って行った。


「比留田さん、ありがとうございました」

「あれが私たちの共通の敵ね。

 あれというのは、あの兄妹じゃない。

 音楽に貴賤を設ける古い権威って意味よ」

「はい」

「それが分かるならよろしくてよ。

 次は私たちの番。

 感想を聞かせて欲しいわ」

 是非に、と言う前にスタッフが慌てて駆けつける。


「天出!

 急げ。

 何してる?」

「へ?

 今日はこのまま、フロイライン!さんのライブを見る予定では?」

「それは他の人の予定。

 お前は別の予定があっただろ!」

「え?」

 よくよくメールを手繰ってみる。

 すると

『天出優子、オーストリアの音楽番組にゲスト出演。

 パリでのライブ後、空港に移動』

 と書かれていた。

 雑な性格ゆえ、読み飛ばしていたのだ。


「昨日夜も言っただろ!」

 昨日の夜は、3人の脱走騒動があって、聞こえてはいたが、耳に入ってなかったようだ。

 優子はフロイライン!のライブを見られず、メンバーと別れて一人、懐かしのオーストリアへと出発するのであった。

おまけ:

実話です。

フランス公演を終えたアイドルに質問しました。

Q、パリで一番美味しかったのは?

A、パン、バゲット、フランスパン、トースト


アイドルなのに、あんたらパンしか印象に無かったんかい?

もっと良い物食っとらんのかい?


なんか、4組くらいインタビューしたんですが、全員から「言い方が違うだけ」でパンと答えられました。

印象に残りまくるくらい美味かったと言ってました。

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