表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生モーツァルトは女子アイドルを目指します  作者: ほうこうおんち
偶像(アイドル)でもあり創造者(クリエイター)でもあり
144/160

共闘

 ヨーロッパも当然ながら音楽は盛んだ。

 日本のアイドルも行ってコンサートをする事がある。

 しかし、それはJAPAN-FESやANIME-EXPOのようなイベントでの事が多い。

 ヨーロッパにも多数、日本のアイドルオタクはいるが、それは「そういう層向け」のイベントに固まっている。

 ヨーロッパでは、アイドルがロックフェスに出演とかはまず無い。

 ファン層が違い過ぎる。

 酒飲んで、〇薬を決めて、武器を持ち込んでいたりする、そんなファン層のところもある。

 日本のロックフェスのように、アイドルがやって来て

「意外に上手いじゃん」

 と正当に評価したりはしない。

「俺たちの領域に踏み入るんじゃねえよ!」

 と排除する。

 ロック、メタルはそんな感じだが、ヨーロッパにおいて音楽祭はクラシックの場合が多い。

 こちらは更に敷居が高い。

 古くからの上流階級の音楽であり、ドレスコードを守らないと未開人扱い。

 ロックなどは蛮族の音楽、アイドルなんかは子供お遊びと眼中にない。

 そんな音楽祭にスケル(ツォ)が招待されたのだ。


「先生、僕たちの要望に応じてありがとうございます」

真樹夫(マッキー)も、アイドルなんて歌手が、如何に低レベルかこれで理解するでしょう!」

 双子のエリアスとゾフィーが、堀井真樹夫とも共通の師にそう言っていた。

「彼はドイツじゃなくても良い、ヨーロッパに来るべきなんだ。

 日本(ヤーパン)なんかに居たって、学べるものなんか無い。

 真樹夫と、あのユウコ・アマデという子はヨーロッパこそ相応しい」

兄上(ブルーダー)まで何を言っているの?

 ユウコなんて要らないでしょ、あんな女は!」

 こんな双子に対し、師匠(レーラー)の方は思慮深げであった。

「君たちは、私が君たちの我がままを聞いて、日本のアイドルを音楽祭に招くよう働きかけたと思っているのか?」

「違うのですか?」

「思い上がりも甚だしいな。

 私はそんな安い男じゃないし、音楽祭も相手に恥をかかせようなんて理由を受け容れるはずがない」

「まあ、そうですね。

 では、どうして?」

「そうですよ、先生(レーラー)が実行委員会に働きかけたんですよね」

 それに対し、師匠は何も答えなかった。

 言葉には出さず、胸の内で

(面白い事が起こりそうだ。

 いや、起こって欲しいと思っている。

 私の期待に応えてくれよ、ユウコ・アマデ)

 と呟いていた。




「本当に面倒臭い事になったよ」

 学校では、珍しく優子の方から堀井に話しかけていた。

 堀井を出汁に自分に会いに来た双子のドイツ人。

 何をどうしたら、クラシック音楽の祭典に自分たちが呼ばれたのか分からない。

 分からないけど、とにかく連中のせいで遠征する事になりそうだ。

 自分だけなら良い。

 飛行機に乗るのはまだ慣れないが、アルペッ(ジョ)の長門理加と筑摩紗耶から

「夜行バスで鳥取県の境港に行き、そこからウラジオストクまでフェリーで行って、シベリア鉄道でヨーロッパまで行けるよ!」

「そのシベリア超特急には、日本軍の軍服着た人がいるから、関わらないように」

 という情報を得ていたから、それでどうにか移動出来るだろう。

(※運行状況を確認して下さい。現在廃止された可能性があります)

 しかし、招待されたのはスケル女というグループである。

 あの時の口論から見ても、アイドルという存在そのものを馬鹿にすべく、この音楽祭招待は仕組まれたのかもしれない。


 なお、天出優子の前世において、大きな音楽祭というのはまだ無かった。

 音楽は貴族や教会だけのもの。

 市民の音楽は、イギリスではあったが、ウィーンなどではモーツァルトが死ぬ前に発展し始めたという時代である。

 それゆえに、「音楽祭がそんな幼稚な理由で招待するはずがない」とは考えず、直感的に「貴族ならそういう意趣返しとかするかもな」と思ってしまった。


 アイドルという、転生後に極めようと思った存在を馬鹿にされた。

 受けて立ってやる。

 しかし、今回は一人で戦うわけではない。

 皆の協力を仰がないと。


 そういう意味でも

「面倒臭い事になった」

 と、堀井に突っかかっているのだ。

 それを武藤愛照(メーテル)は口を挟まずに聞いている。




 天出優子が通う学校には、度々珍客が現れる。

 今回やって来たのは、フロイライン!のリーダー比留田茉凛であった。

「会うのは何度目だったかしら。

 ちょっとお話しをしたいので、付き合って下さらない?

 別に取って食おうってわけじゃないので、安心して下さって」

 言葉は丁寧だが、殺気のようなものが漂っている。

(これは逆らったらダメな女性(ひと)だ)

 優子は、皇妃(カイザーリン)と呼ばれる女性の圧に屈した。

 女帝マリア・テレジアから感じたものと同じ覇気が放たれているし、ちょっとヤバい人なのかもしれない。


「ごめんね。

 放課後に誘って、付き合って貰うつもりだったのに、まさかリーダー自ら来ちゃうとは……」

 愛照が珍しく謝罪して来る。

 この子経由って事は、クラスの中で零した「面倒臭いこと」に関する事だろう。


 比留田は、優子と愛照をかなりお高めなレストランに案内した。

 そこでただお茶を飲むだけなので、かなり優雅な感じである。

 しかし、話題は全然優雅ではない。


「そこの武藤から聞いたんだけど、スケル女はドイツから挑戦状を受けたそうね?」

「挑戦状……、まあそんなものです。

 本当は音楽祭の招待状なんですが……」

「ただの挑戦状なら、違うグループの事なので何も言いません。

 勝手に頑張れって思うだけです。

 しかし、武藤が言うには、その真意は私たちアイドルという存在を嘲笑う事らしいですね」

「武藤さん、そんな風に伝えたの?」

「私はそう解釈したけど、違うの?」

「いや、私もそう解釈したけど。

 でも、証拠は無い。

 単なる憶測だよ」

「憶測だとしても、どうでも良いのです。

 喧嘩を売られて、買わないわけにはいきません。

 これは私たちアイドル全員に売られた喧嘩だと心得ております」

「はあ……」

「そこで私たちフロイライン!はスケル女グループとの同盟を申し込みます」

「は?」

「聞こえなかったんですか?

 同盟を申し込むと言ったのです」

「いや、聞こえましたし、意味も分かります。

 ですけど、リーダーを差し置いてなんで私なんですか?」

 そこにフロイライン!サブリーダー浜野環の声が割り込んで来る。

「相変わらず俗物らしい、高価な店を選んでいるな、リーダー」

「貴女のように、弁当屋が半額シールを貼る瞬間を、例のぴきーーーーんと来る能力で察知して、速攻で買うというのもどうかと思いますよ。

 収入あるんでしょ?」

「まあそれは置いといて、スケル女のリーダーを連れて来たぞ」

 見ると、頭上に「?」が見える感じで、スケル女リーダー辺出ルナが立っていた。

「辺出さん」

「ああ天出、あなたも捕まっていたんだ。

 事情は聞いたよ。

 あんたのせいか! って言いたいところだけど、なんか話が大き過ぎて文句も出ないわ」

「で、どうだ?

 我々フロイライン!はスケル女との同盟を申し込む。

 傲慢な欧州音楽人(ティターンズ)を共に倒そうではないか」

「是非共闘を願いますわ。

 ここに私たちも認める凄い才能もいる事ですし」

「どうする? 天出」

「私に聞かれても……」

「そうだ、忘れていましたわ。

 私たちからスケル女に提供するものがあります。

 フランスの日本関係のイベントに招待されているのですが、それにもスケル女の参加枠を用意させます。

 同盟を申し込む以上、手土産は必要ですからね」

「乗った!」

「辺出さん?」

「そういう事なら、リーダーとして受けないわけにもいかない!」

 ノリノリである。


(比留田さん?

 大丈夫なんですか?

 ジャパンイベントにスケル女の枠を用意させるなんて言って……)

(ああ、武藤は知らなかったな。

 比留田(こいつ)はネタでなくガチのセレブだから、欧州(あっち)の権力者と顔見知りだったりするぞ。

 単に自宅に、買い取った電車車両をコレクションして線路引いて動かしてるとか、都心の一等地の豪邸と葉山の別荘に住んでるとか、「スケル女研究生に入って初めて買い物というのを知った、普通は外商の人が訪ねて来るものでしょ」とか、色んな逸話があるけど、それ以上だからな)

(あの話って、お嬢様キャラとしての設定じゃなかったですか?)

(ガチだぞ。

 以前のフロイライン!のアメリカツアーは、比留田(こいつ)のプライベートジェットで行ったからな)

「そこ、ひそひそ話しない。

 私じゃなくて、お父様やお祖父様が偉いだけなので、自分の事のように自慢しないで下さい」

「いや、どっちかというと呆れてるんだが。

 で、武藤がスケル女の枠を用意させる事が出来るのか? って聞いてるんだが」

「それは問題ありません。

 〇〇家とか××家とか△△家の御当主(おじさま)に動いて貰います」

(全部、前世で付き合いのある家柄なのだが……。

 あの家、まだ残ってたのか……)

 一人全然違った感想となった優子だが、とりあえずスケル女とフロイライン!の同盟は成り、凄まじい後ろ盾も得た上で、日本を代表する2つのアイドルグループはドイツに殴り込みをかける事になったのだった。

おまけ:

神の使い「あれ?

 モーツァルトがあの女子の身体から離れたいと思うよう、才能を発揮すれば試練が訪れるよう神の御業を借りて使ったのだが、なんかあいつが何かする度に、事態が大事(おおごと)になる呪いになってしまったぞ?

 あるぇえ?

 そんなつもりは無かったんだけどな?」


天のどこからか

(無能にも程がある!

 だからお前は馬鹿弟子なのじゃ!)

という説教の怒号が聞こえた気がするが、とりあえず無視しとこうか。


(「馬鹿弟子」云々言う人が最近、異世界(バイストンウェル)転生し、しかもそこでも最強を誇ったから追放されたというネタを見て、つい使ってみたくなりました。

 神様って本来、ああいう怖くて強い、そして何だかんだで祝福を与えてくれる存在なような……)




おまけの2:

ハプスブルク家の末裔はヱヴァンゲリヲンのファンです。

ドイツ語話す人が全部「我がドイツのぉぉぉ」系ではありませんので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>ハプスブルク家の末裔はヱヴァンゲリヲンのファンです。 禿頭のモノクル掛けた爺さんで、甲高い声で「左様」とか言いそう(ゼーレ感) てかドイツの音楽祭か。バイロイトだったらワーグナーさん化けて出そうw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ