憧れられる先輩
天出優子と照地美春が、夏限定ユニット「カプリッ女」のプロデュースに関わる。
優子は今までも、木之実狼路というペンネームで編曲、もしくは作曲をし、正体を隠しながら姉妹グループのツアーの案を出すなど、プロデュースの分野で携わって来た。
「周囲から浮かないように」とか「プロデュースされる人たちが自分に気を使わないように」とか色々言っているが、「謎の編曲家の方がミステリアスで面白い」というのが、正体を隠している一番の理由であろう。
だから、正体を察した人間が探りを入れると、案外あっさり認めたりする。
だが今回は、カプリッ女のプロデューサーとして名前を出す事になった。
知名度がある現役アイドル2人がプロデュースする、それが良い宣伝になるからだ。
特に人気はメンバー1の照地美春が関わるという事で、ファンの間では話題になっている。
その一方で、このような陰口も叩かれていた。
「ミハミハがこういうプロデュースみたいな事するのは、今回が初めて。
正直上手くいくとは思えない。
本命は天出優子の方で、話題の為にミハミハを使ったんじゃないか?」
……そう言われるくらいに、まだ高校1年生の優子は、プロデュースとかに向いていると信頼されていた。
なにせ、アルペッ女全国ツアーの立役者が優子だという事を、ファンは知っているから。
運営は公式には何も言っていないが、ツアー中にメンバーが
「この曲をセットリストに入れたのは天出さんで」
「天出さんの提案でこうなって」
等と話しまくったから、それがネットを通じて拡散していたのだ。
なお、人気という面では相変わらず伸び悩んでいた。
男性のファンは、ポンコツで可愛らしい子が好きなのである。
優子のように「出来る女性」は、信頼はされるが
「俺が推さなくても大丈夫だよな」
となりがちである。
音楽から離れたらポンコツも良いところなのだが。
しかし、女性人気は爆上がりしている。
こちらは信頼が人気に直結した。
プロデュース能力よりも、「伝説のライブ」でのパフォーマンスから
「カッコイイ❤」
と惚れる女性が多発したのである。
優子の人気は、男性からのものより、女性からの方が高い。
中の人たる18世紀のオッサンからしたら嬉しいのだが、スケル女のファンの男女比からいえば、人気が伸び悩んでいる事に変わりない。
当の本人が
「人気とかは別にどうでも良い。
実力は評価されてるんでしょ?
その方が嬉しい」
というスタンスなので、一層「男性は凄いと思うが近寄らず、女性は惚れる」傾向となる。
実際は「その真逆」ではないのだが、何となく「天出優子とは正反対」と思われるのが照地美春だ。
彼女は顔やスタイルだけでなく、仕草から持ち物から、何から何まで可愛いを極めている。
映像作品でも
「えー、出来な~い」
「うえーん、怖いよぉ~」
と言った感じで、何となくポンコツ気味に見える。
だから「可愛さは満点、実力なんてどうでも良い」と思われるが、実はそうではない。
彼女も7女神に選ばれる程の実力者で、映画やテレビ出演を完璧にこなす優れた人物なのだ。
この場合の完璧は、「求められたものを過不足なくこなす」である。
それ以上の実力を見せる事はないし、実際演技などはそこが上限かもしれない。
相手がアイドル以上のものを求めていない以上、照地の演技やリアクションが正解なのだ。
こういう実力派な面を、女性ファンは見ている。
単なるぶりっ子で、可愛いだけの女なら、女性ファンには強烈なアンチも出来るだろう。
しかし、可愛いを極めつつ、歌やダンスは上位なのだから、女性ファンは認めていた。
それゆえ、彼女は男性人気も高いし、女性人気も同様に高い。
女性人気というのは、それは同じアイドルからの人気というのもカウントされる。
優子と照地は同業者人気が高い。
好きなアイドルに照地美春、憧れのアイドルに天出優子と名を挙げる同業者は多い。
それだけに、スケル女の後輩や姉妹グループのメンバーは、この2人がプロデュースしてくれると知って歓喜していた。
「ミハミハさん、天出さん、よろしくお願いします!」
明るくやる気に満ちた挨拶がされる。
現在は、誰を選ぶかのオーディションの最中だ。
彼女たちは審査には関わらない。
既に照地が
「この中から落とさないとならない子が出るなんて、悲しい……」
と言っていて、非情に徹し切れないと見られている。
優子の方は前世の人生経験から
「切る時は未練がましくなく、今回はダメだったってハッキリ言った方が良い」
という性格なのだが、この辺は考慮されなかった。
だから2人は、誰が選ばれるかこの時点では分からないが、出来たグループをどう「魅せるか」という点に絞って頭を使う事になる。
「コンセプトは可愛いでいきましょうね!」
「まあ、そうなるでしょうね。
予測はしてました。
で、ミハミハさん、顔近い。
折角の会議机なんですから、正面に座りませんか?
なんで隣に座るんですか?」
「えー、ゆっちょ、私が隣に座るの嫌なの?」
ウルウルした瞳で迫って来るから、優子は押し負けた。
まあ、多少面倒臭い所があるにしても、美女が隣で寄り添いながら話して来るのは悪い気はしない。
「で、夏で暑いじゃない。
可愛い衣装でも、ひらひらが多いと厳しいと思うんだ。
汗で案外可愛くなくなるとか。
でも、それで布を少なくしたら、ちょっとセクシーだからコンセプトに合わなくなっちゃう。
だから、こういうのをデザインして来たけど、ゆっちょはどう思う?」
上半身は暑さ対策でチューブトップ、脇腹の部分は開いているがヘソ出しではない。
腰から下は、やはり暑さ対策でミニスカートだが、横や後ろは長めになっていて、ひらひらも装備。
足はサンダル系だが、固定がしっかりして踊っても脱げたりしないもの。
足の指は客に見せるから、ペディキュアは必須のようだ。
スケル女グループではよく見るチェック柄だが、薄いピンクと薄いオレンジで涼し気な配色。
そしてアクセサリーで、メンバー自身をデザインした縫いぐるみを腰から下げる。
「ああ、良いと思います。
皆、喜ぶと思いますよ」
「えー、ゆっちょ、反応薄い」
「私は、これに合わせた曲をイメージしたいんで」
「ゆっちょが曲も作るんだよね?
アルペさんみたいに、可憐でさわやかな曲にしてね!」
「……ミハミハさんって、どこまで知ってるんですか?」
「うふふ~、内緒~」
どうも照地も事情は察しているらしい。
しかし、他の者と違って口に出して聞いて来ない。
この辺、ぶりっ子ではあっても、食えない人物な部分がある。
「……で、まだメンバーも決まっていないのに、コンセプトは出来上がったんですか?」
スタッフが頭を抱えた。
天出優子はある程度予想していたのだが、照地美春もこんなに仕事が早いとは思わなかった。
「でも、私たちにプロデュースは一任されてますよね?」
照地が可愛く、しかし押し強くスタッフに尋ねる。
そうだ、という言質を取って、更にどういうグループにするかを滔滔と語り出す。
優子がフォローを入れる。
「前のカプリッ女と曲や衣装の感じが変わって連続性が無くなりますが、それで良いかと思います。
来年はまた別のメンバーがプロデュースして、新しいカプリッ女にする。
年々変わっていく、を裏コンセプトにしたらどうですかね?
それで、今年はミハミハさんの好きにさせて下さい」
スタッフは承諾した。
このスタッフも、決して無能な者たちではない。
世間から「丸投げ体質」と言われる戸方プロデューサーに鍛えられた面々だ。
この「さっさと決められたコンセプト」を、オーディションメンバーに知らせ、更に先行してマスコミ発表をする事にした。
先日「今年のカプリッ女は、照地美春と天出優子合同プロデュース」と発表したばかりである。
早速、照地美春色の強いコンセプトが発表され、彼女がお飾りではなく、自分を発信出来る女性であるとファンたちは知った。
そしてオーディションを受けるメンバーは、コンセプトが合わないと辞退する者も出る。
こういうのは早く知った方が、次の仕事に合わせられるから有難い。
オーディションを続けるメンバーも、辞退したメンバーも、2人への敬意は深まっていた。
「ミハミハさん、天出さん、素晴らしいです!」
オーディションを続けるメンバーは
「絶対合格したいです!
待っていて下さい」
と気合いを入れ直した。
後輩たちは意気込んでいる。
おまけ:
天出優子の本音(暑い時は、ビキニとかの水着でパフォーマンスすれば良いよね、うひひひひひ。
まあ、それだとミハミハさんが思いっきり文句言ってくるけど。
どうせ暑いなら、何も着なければ良いのに)
なお、それをすると
「アマレスの衣装とかどう?」と言う体育会系な連中とか
「貝を水着代わりに胸に当てるとか」とか言い出す変人グループが活発化する為、
NGである!!
(世の中、予想の斜め上に突っ走る連中は多いのだ)




