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転生モーツァルトは女子アイドルを目指します  作者: ほうこうおんち
アイドル兼プロデューサーでやってみる
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日本は広い Teil.3

 アルペッ(ジオ)の全国ツアーは順調に日程をこなしている。

 当初は売れ行きが心配された、縁遠い地方での公演も

「毎回セットリストが一部変わる。

 毎回何かの仕掛けをして来る。

 その地でしか見られないライブをする」

 というのが評判となり、リピーターが増えた他、一度見てみたいという初心者も呼び込んでいた。

「集客が見込めないと判断した地域は、狭い箱(ライブハウス)にしたけど、そうしない方が良かった」

 等と、全国ツアーを天出優子が口にした時には思いもしなかった事を、スタッフが口にするようになっている。


 ただ音楽が良いだけでは売れない。

 ただ宣伝が上手いだけでは、いずれ化けの皮が剥がれる。

 リピーター頼りでは先細りになる。

 しかしリピーターが着かないようなグループは、一過性のブームで終わる。

 今のアルペッ女は、それらのバランスが取れた、上手い形で人気を拡大しつつあった。


 彼女たちの足跡を全て追っても冗長的に過ぎる。

 抜粋して各地での公演を見て行こう。




「北海道は、でっかいどう!」

 ありきたりなギャグを言いながら、長門理加がライブ会場に入って来た。

「長門さん、元気ですね」

 優子が呆れたように眺めている。

 その後ろでは

「師匠……罪深き私は最早、消滅(ニブルヘイム)する寸前です」

 とグロッキーになった筑摩紗耶がいた。


 何度言っても夜行バスやフェリー、青春18切符等で、新幹線や飛行機を使う想定で手渡した旅費との差分で小銭儲けしようとするこの2人。

「だったら一回、本格的に認めて、それを宣伝に利用しようじゃないですか」

 という戸方風雅プロデューサーの発案で、どこかの北海道ローカル番組のパクリとしか言いようがない

「サイコロを振って、出た目の交通機関で指定された場所に移動し、それを繰り返して北海道へのゴールを狙う」

 という企画に挑戦したのである。

 なお、この2人と同じ東京在住の優子に、暴走しかねない2人の監視役が与えられるところだったが

「72時間以内って条件なのに、中学生を付き合わるのはおかしいです。

 平日は通学してるんですよ」

 と戸方Pの指摘で取りやめとなった。

 どうもアルペッ女のスタッフは、無闇に恐れたりせず、優子の才能をそのまま受け入れてはくれるが、代わりに彼女が中学生だという意識が抜け落ちているようだ。

 言う事が大人びているし、才能においてはズバ抜けている。

 どうも、まだ子供だっていう事を忘れてしまいがちである。

 代わりに、鉄道大好き、写真も撮るが時刻表を見ながら涎を垂らすような変態……もとし鉄オタの秋津洲由美が、カメラマン兼スケジュール調整役として同行する事になった。

 そして、凄まじいまでの運の悪さを発揮し、博多まで例のバスで行ってしまったものの、最後に奇蹟の飛行機の目を出してゴールしたのだ。

 まあ、1~5が「新千歳空港行」で、6が「羽田空港行」だったから、余程の事が無い限りどうにか間に合ったのだが。


「前乗りした皆は、昨日お寿司いっぱい食べましたから。

 長門さん、差し入れ大量の持ち帰っても、皆は許すって言ってますよ」

 グループでは年少メンバーで、常識人の大淀望美がそう伝えると、長門は喜んだが、筑摩と秋津洲はグロッキーな表情で

「今、何も食べる気起きない」

 とつぶやいていた。

(こんな状態で、今日のライブ大丈夫か?)

 限定的ではあるが、プロデューサーとしても働いている優子は危惧する。

 今日のコンサート、デュオ担当は筑摩と秋津洲で、北海道アレンジとしてフォーク調にした為、ギターを弾ける長門が伴奏する事になっていた。

 その3人が、揃って博多からやって来たのだが……。


 まあ、疲労の極致にあったものの、ちゃんとコンサートはそれと感じさせずにこなし、優子はこの3人を見直す。

 そしてその晩のジンギスカン食べ放題で、女性とは思えない食べっぷりと、タッパーで生肉を持ち帰ろうとする貪欲さ及び無知さに、呆れる事にもなる。




「で、今日はその恰好で出演するんだ……」

 名古屋公演において、ソロ担当は駒橋杏だが、その彼女がまたも奇抜な衣装を着ていた。

(確かに、名古屋名物はビジュアル系とかって見たよ。

 多少のそういう衣装は良いと思うよ。

 でも、我々は女子アイドル。

 そのガッツリビジュアル系の衣装とメイクはどうよ?)


 結局、駒橋はリーダー陸奥清華(さやか)にガッツリ〆られる。

 自分のソロ曲以外はどうするのか?

 メイクを落として、揃いの衣装に着替えなさい! と。

 その上で

「戸方先生が言うように、名古屋っぽい感じでビジュアル系をイメージするのは良いと思うの。

 何か、いい感じに出来ないかなぁ?」

 とウルウルした目で迫って来るリーダー。

 武闘派の癖に、アイドルの時はあざと可愛い系美少女なのがズルい。

(戸方さんの発案じゃなくて、私が調べて提案し、戸方さんは「いいよ」って言っただけなんだが……)

 優子は、単にリーダーの一子相伝の武術が怖いとかではなく、言いだしっぺは実は自分なので、責任を感じて、衣装の上にすぐに装着出来て、メイクも用が済めばすぐに落とせるようなものを一緒に考える。


 その様子を見ながら

「大変そうだねえ」

「師匠、お仕事頑張れ!」

 と、食費浮かせ隊の長門、筑摩はバタートーストに小倉あんを乗せた名古屋名物・小倉トーストを食べながら眺めていた。

 ついでに差し入れの外郎売(ういろう)や、カエルをかたどったマリトッツォも摘まみながら……。




「いやあ、今日はちゃんと遅刻せずに来られたよ!」

 どれだけしんどい目に遭っても、夜行バスで博多まで来るのを止めない長門・筑摩コンビ。

 ただ、今回はサイコロで行き先を決めず、直通で来た為、言っているように遅刻はしなかった。

「遅刻しないって、普通の事ですからね」

 自分が常識人な事を言う立場にあるのを、ちょっと不思議に思いながらも、優子がツッコミを入れる。

「ちょっと調べたんですけど、夜行バスの料金と、羽田~福岡空港の航空料金、飛行機の方が安い時ありますよね。

 節約したいんなら、素直に飛行機の方で良かったと思うんですけど!」

「おお、優子ちゃん、今日はツッコミが鋭いね」

(今日のソロやデュオは、陸奥さんと大淀さんだから、かなり安心出来るからね。

 気を使わなくて済むから楽なのよ!)

「まあ、師匠の言う事も分かります。

 確かに事務所が用意した新幹線チケットよりは安くつくけど、飛行機の方がもっと安い。

 どうせ払い戻して、差額で儲けるには、時間も早い、安い飛行機にしろってのは分かります。

 ですが、私たちはバスにする理由があるんです」

「どんな理由ですか(どうせろくでもない理由なんだろうけど)」

「そこにバスがあるからです!」

(やっぱり意味不明な理由だった)


 そんなやり取りを、陸奥は一切気にせず、博多風アレンジのフォークシンガー風の練習をしていた。

「いいんですか?

 優子ちゃん、毎度あの2人に振り回されてますけど」

 今日のデュオで優子と歌う大淀が、リーダーに話しかける。

望美(のん)ちゃん」

「はい」

「他人の事を気にするより、自分の事をちゃんとしたら良いよぉ。

 天出さんは出来る女性だから、余程の事じゃない限り手出ししないのぉ。

 私たちは出来ない側だから、まずは目の前の事に専念しましょうよぉ」

(陸奥さんの手出しは……物理的な「手」ですよね……)


 大淀望美は首を横に振ると、気合いを入れ直して、自分のパフォーマンスをより良くすべく、最後の練習に取り掛かった。

 天出優子とあの曲を歌えるのは、アイドルとしては誇りだ。

 凄い人に引けを取らないよう、全力を出すのみ。




 各地を回って、優子は改めて思う。

 日本という国は、確かに思った以上に広く、歴史も古い。

 しかし各地の民謡や伝統音楽というものではなく、今現在も各地でそれぞれの音楽を作っていたり、発展させていたりというのは、音楽人として実に嬉しい現実である。

 全国ツアーを提案したのは、アルペッ女の人気上昇の為ではあるが、自分にとっても大きな収穫になっていると感じた。

 提案して、実現して良かったな、と。


 まだツアーは全国一周して、3分の2が終わるに過ぎない。

 その後は、ファンの投票によってセットリストやデュオのパートナーが変わる。

 そして東名阪・札幌・福岡、そして地元広島での大箱でのコンサートとなる。

 まだまだ気を引き締めていかないと。


 気を引き締める優子と同じ東京の空の下。

 長門理加と筑摩紗耶は、珍しくプライベートで会いながら

「ちょっとヤバいよね。

 博多で替え玉5回とかしちゃったし」

「これは私に対する神罰なのです。

 死をもって償わないと」

「富山ブラックも美味しかった」

「美味しいとは罪深きもの」

「喜多方も良かったよねー」

「私たちはただのメス豚。

 これより先は出荷されるのみ」

「食べながら痩せたいよね」

「痩せる運動には、罪深き食欲がセット。

 私たちは誘惑には積極的に負ける」

「それはそれとして、運動するならプールが良いかな?」

「ナイトプールで、カクテル飲みながら……」

「それじゃ何の意味も無いけぇな」

 と漫才のようで、それとも違う、微妙に嚙み合わないような会話をしながら、締まらなくなったベルトと、肥大したウェストをどうにかすべく、対策を考えるのであった。

おまけ:

長門理加・筑摩紗耶の恐怖の北海道行。


第1の選択:6で「はかた号」博多行

第2の選択:2で「新幹線」名古屋行

第3の選択:6で「スーパーライナー」東京行

第4の選択:6で「はかた号」博多行

夜行バスを連日出す2人に頭を悩ませる。

2度目の博多到着時点でかなりヤバいと感じた秋津洲由美は

第4の選択:

1と2 JALで新千歳空港行

3と4 Air Doで新千歳空港行

5 FDAで新千歳空港行

6 JALで羽田空港

とした結果、5を出す事で無事にゴール。


しかし、延々バスに乗り続けるだけの録画に

「これはアルペッ女チャンネルで配信しても面白くないだろ」

という意見も出たが、編集の妙で

「アイドルがどんどん壊れていく様子」

の動画が公開されたのであった。

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