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転生モーツァルトは女子アイドルを目指します  作者: ほうこうおんち
アイドル兼プロデューサーでやってみる
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アルバムリリースイベント

 アイドルグループの活動は、コンサートだけではない。

 販促活動も重要である。

 これはコンサート以上にスタッフの仕事が重要と言える。

 コンサートは歌う曲が多い為、歌手のスキルでセットリストに不満があってもどうにか出来る。

 しかし、数曲しか歌えないインストアライブや、不特定多数の通りすがりの客を引き込むショッピングセンター等でのイベントは、インパクト勝負となる。

 新曲はともかく、もう1、2歌う曲も重要だ。

 ノリが良く子供から楽しめるものか、逆に上手さを見せられる曲か、考えどころだ。

 しっとりとしたバラードや、奇抜過ぎる曲は余り向いていない。

 歌だけが考えどころではない。

 全員が出られない場合、選抜メンバーも考えねばならない。

 また、会場をどこにするか、何かとコラボするか等、考える事は多い。


 今回のアルバムリリースイベントは、特殊な事情からスタッフは多少楽である。

 多数のユニット曲の集合体な為、曲を選べば必然的にメンバーも決まって来る。

 予約の好調さもあり、同時に多数のユニットを各地でイベントさせられる。

 よって、同じ日に瀬戸内の6ヶ所で同時イベントをし、それを3回行った上で、最後に全員集合でイベントをするとかが企画された。


 アルペッジオのメンバーに関しては良かった。

 スタッフが頭を悩ませたのは、兼任メンバー天出優子の扱いである。

 彼女は同時に一人しか存在していない。

 だから、どのユニットと一緒にイベントをさせようか?


 天出優子は、スケルツォでの人気は高くない。

 不人気ではないが、より上の人気メンバーが居る事と、天才キャラはポンコツキャラより人気が出ない、日本の女子アイドル界ならではの事情による。

 しかし、大半のアルペッ女メンバーと比べれば、知名度は高く人気もある。

 清楚な感じで、美人系が多いアルペッ女に、中学三年生になったばかりで、顔立ちがロリ系な優子は異色だ。

 その上、「音楽の天才」というキャラ。

 一歩引いて見る東京と違って、天才を素直に受け入れるアルペッ女メンバーと、そのファンたち。

 優子は脅威ではなく、助っ人で、アルペッ女の人気を高めてくれるかもしれない。

 そういう事情に加え、ギャップ萌えもあり、優子は瀬戸内では割と人気が出ていた。


 さて、そんな優子を一体誰と組ませようか?

 既にユニットを組んだ事がある長門理加とはやめておこう、別なメンバーとが良い。

 どうせなら、アルバム最後の収録曲、「伝説のライブ」で使われた曲でデュオをした長門以外の7人と組ませよう。


 かくして優子は、同じチームとずっと行動せず、一会場終わったら一人そこを離れ、違うチームに合流してイベントを行うというスケジュールを組まれてしまった。


 イベント当日……。


「神戸にお集まりの皆さん!

 私たち、アルペッ女です!」

 優子はまず神戸会場からスタートした。

 ここは筑摩紗耶が属するチームだ。

 優子を含む7人でパフォーマンスをする。


「では、神戸会場の皆様。

 特別です!

 アルペッ女(うちら)最強の歌姫・筑摩紗耶ちーさやと、『音楽の天才』兼任メンバー天出優子のデュオです!

 曲は、皆さんもうご存知ですよね!

 巷で噂のあの曲です。

 どうぞ!」


 筑摩紗耶は普段は面倒臭い、難儀な性格なのだが、アイドル活動中は違う。

 口数は少ないが、いつもニコニコして感じが良く、歌う時は溌剌としていた。

 そんな筑摩と優子は、オープンスペースゆえに、歌声を聴いた人が思わず足を止めて聞き入ってしまう素晴らしいパフォーマンスを披露する。

 歌い終わると、ファンだけでなく、たまたま聞き入った通りすがりの客たちすら盛大に拍手を送っていた。


「この後は握手会ですが、天出優子ちゃんは別会場に駆けつけないとならないので、握手会には不参加です」

 これは優子にはありがたい。

 東京で優子が余り人気が無い理由に、握手会での塩対応がある。

 東京のスタッフから制約されまくっているのが最大の理由だが、そういうのを繰り返されている内に、本人も

(握手会はちょっと苦手だな)

 と思うようになっていた。

 個別握手会で好きな話をするのは別だが、不特定多数との流れ作業的握手会は、上手い受け答えが出来ない。

 だから、握手会不参加で別会場移動は、むしろ願ったり叶ったりである。


 優子はお土産として渡されたバウムクーヘンを持って、新幹線に乗って岡山を目指す。


(樹木ケーキ(Baumkuchen)って何だろう?

 いや、これが何なのかは知ってるし、食べた事何回もあるけどさ。

 ドイツ語の菓子だけど、前の人生では食べた事無いんだよね。

 こんなしっとり、甘いのなら、ハプスブルク家が知ってる筈なんだけど……)

 天出優子モーツァルトは、日本のバウムクーヘンとドイツのBaumkuchenがほぼ別物なのを知らない。


 とりあえずお土産用には手をつけず、自分用のバウムクーヘンを食べながら岡山会場に到着。

 ここには撮り鉄、映え写真好きな秋津洲由美が居た。

 普段は気持ち悪い喋り方の秋津洲だが、アイドルやってる瞬間は堂々とした、知的な口調である。

 優子は彼女ともデュオを歌う。

 そして

「天出優子さんは次の会場に行かないとならないので、ここでサヨナラです。

 皆さん、拍手をお願いします」

 と、やはり握手会無しで会場を後にした。


(案外キツいかも……)

 お土産のキビ団子を持ちながら新幹線に飛び乗る優子。

 次は広島会場で、その後はそこで皆が合流して来るのを待つ。

 広島会場には、リーダー陸奥清華が居た。

 彼女の場合は、キャラは変わらない。

 メンバー統率時に武闘派になるだけで、アルペッ女内では基本常識人の部類に含まれる。

 スケル女で言えば照地美春系のぶりっ子、可愛いもの好きでベタベタしてくるウザ系キャラだが、それでももの凄い常識人なのだ。


「兼任メンバーの天出優子さんが到着しました〜!

 皆さん、待ってましたよね〜?」

 そう言って迎え入れる。

 ここでもデュオを歌う。

 その後は握手会。

 もう次の会場への移動は無いから、握手会は参加となる。

 だが、ここでの握手会はそれ程負担にならなかった。

 東京では、色々話しかけられて返答に困る事もあるが、ここ広島では

「うちの子、ちょっと変わった子が多いけど、よろしくね」

「おかしい子ばかりだけど、悪い子じゃないから、見捨てないでね」

「色々不憫な子たちだけど、助けてやってね」

 と、妙にファンが保護者目線で、メンバーと仲良くして欲しいと頼み込んで来るのだ。

(アルペッ女、ファンから愛されてるなあ)

(アルペッ女のファン、良い人ばかりだなぁ)

(とりあえずアルペッ女が変人集団なのは理解した上で、変わらず推してるんだなぁ)

 優子はちょっと心が温かくなった。

 スタッフたちは「もっと人気を出したい」と、そう出来ていない自分を不甲斐なく感じているが、ファンを見れば十分愛されているアイドルグループになっているじゃないか。

 やはりこういう部分は変えてはならない、プロデュースの一翼を担う天出優子は、そのように改めて考えていた。


 そして全員集合。

 ここではデュオ曲は歌わない。

 優子は全体曲にのみ参加。

 今回、各地でイベントをした6チームのユニット曲を全部聴きながら

(全国ツアー、成功させたいなあ。

 皆、嬉しそうに歌ってるよ。

 これを日本中に届けたいな)

 と思ってイベントを過ごしたのだった。




 そして、そんな温かな気分で終わらせないのがアルペッ女という変人集団である。

 イベントが終わり、アイドルタイムが終わると、「清楚でお淑やかなお嬢様」の仮面が外れる。


「反省会するけぇな!

 カラオケ集合じゃ!

 優子ちゃん、逃げられんけぇの」


 そして、全員イベントで行った各地のお土産を食べながら歌う。

 優子のバウムクーヘンも、キビ団子も食い尽くされてしまい、翌日の帰路、改めて岡山と神戸で途中下車して身内用お土産を買い直さねばならなかったのである。

おまけ:

歌の面でスケル女には負けたくない、老舗アイドルグループのフロイライン!は、天出優子によるものとは知らないまでも、彼女と他のメンバーによる「組み合わせによって異なる顔を見せる」表現を見て、ほぞを噛んで悔しがっていた。

そこで彼女たちは、自分たちも表現力を磨く為に特訓を始めた。

「クラシックバレエ、オペラ、京劇、伝統的ポリネシアンダンス、ベリーダンス等。

 一流の先生を紹介して貰った。

 全てを身につけるべく、師事するのだ!」


言ってる事はまともである。

だが、これらの分野の超一流どころは、本場の人間、つまり外国人であった。


(中学生にはロシア語も中国語もイタリア語もアラビア語もポリネシア語も分かんないよ!

 師事しろって言われても、コミュニケーションが取れないじゃないか!)


武藤愛照は超一流の外国人を前に、途方にくれていた……。

(続く)

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― 新着の感想 ―
バウムクーヘン、駐日ドイツ大使館が「うちの職員も日本に来て初めて食べたという者が多い」って言ってたような。マイスターの腕を見せる高級菓子として製法とか色々厳しいので、ドイツ人でも食べる機会はあまりない…
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