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転生モーツァルトは女子アイドルを目指します  作者: ほうこうおんち
アイドル兼プロデューサーでやってみる
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歓迎会だ!

 それは異様な集団だった。

 が、どうやらここ、広島本通りでは慣れているようで、普通にすれ違う若者が手を振ったりしている。

 ゴスロリ、天狗面、芋ジャージ、謎のTシャツ、地元球団ユニフォーム、ウサギの着ぐるみ、お下がりのステージ衣装、信長みたいなマント、ゲッ◯ーロボでも操縦しそうなやたら長い赤マフラーとトレンチコート、そして空手か柔道のような道着に袴、等等個性的な衣服で歩く若い女の子の一団。

 歓迎されるはずの天出優子は、なんか頭がクラクラして、この百鬼夜行と一緒に歩きたくない気分になっていた。


「樹里ちゃん」

 移籍した同期に話しかける。

 同期の盆野樹里は、ヒョウ柄の「ザ・大阪」な服ではあるが、この集団の中ではまともな方だ。

「普段からこんななの?」

「うん、昼と夜の寒暖差大きいやろ」

「そうじゃなくて、この人たち……」

「ああ、人通りはこんな感じやねん。

 ここはカラオケとか多いから」

「いや、メンバー!」

「皆、練習は熱心でしょ」

「樹里ちゃん!」

「あのなぁ、優子ちゃん。

 気にしたら負けやねん。

 息を深く吸って、吐いて、心を穏やかにして、常によそ見しとくんよ。

 そうしたら、見たくないものは見えへんから」

(現実逃避のスキルが爆上がりしてる……)

 盆野樹里にとって、音楽的にアルペッジオは居心地が良いグループだ。

 その反面、皆の変人っぷりで心を掻き乱されまくったのか、見たくないものからは目を逸らし続ける技を覚えたようである。


 ポリ……ポリ……。


 変な音が聞こえる。

 見たら、普通の服を着ていて安心して見ていたメンバーなのに、そのポケットからタクアン漬けを取り出し、食べながら歩いている。

「なんで、ポケットにタクアン入れてるの?」

「お土産は無難に揚げもみじとかにしとき。

 いかにも広島って感じだから」

(もう完全に、変人たちに対してツッコむ意志を無くしている……)


 優子は思った。

 かつて長門理加を「変人中の変人」と言ったが、それは間違いだった。

 長門は「かなりマシ」な部類なんだと……。

 だからこそ、東京の芸能事務所にも所属し、グラビアやバラエティ仕事を任されているのだろう。


 カラオケに入り、まず料理を注文する。

「かき氷の人〜?」

「はーい!」

「油そばの人〜?」

「はーい!」

「もやし炒めの人〜?」

「はーい!」

「他、なんか注文ある?」

 何故この三択なんだろう?

 謎が残るが、ボケ〜としてもいられない。

 それ以外を注文しないと!

「えーと、お好み焼き……」

「え、優子ちゃん、そんなの頼むの?」

「いつでも食べられるでしょう?」

「いや、忘れちゃダメだよ。

 優子ちゃんは東京もんだから」

「あー、あのゲ◾️を水で溶いたのを焼いて食べる東京か〜……」

「イカ天焼きそばも売ってない東京か〜……」

「漬物焼きそばも無い東京か〜……」

「待った、何その謎料理?」

「知らないの?

 やっぱり東京は美味しいもの無いんだね」

「樹里ちゃん、助けてくれない?」

「悪いけど、食い物に関しては同意見やから。

 東京にはろくな粉もん無いやん」

「広島・大阪連合イェーイ!」

 主賓置きざりで、変な盛り上がり方をし始める一同。


「じゃあ、天出優子ちゃん、アルペッジオにようこそ〜!

 カンパーイ!」

 飲み物が運ばれて来たら、旗艦リーダーの陸奥清華さやかが乾杯の音頭を取った。

 とりあえず、優子に対する歓迎会の設定は忘れていなかったようだ。

 全員ソフトドリンクだが、テンションは既に酔っ払っている。

 アルコール無しでも酔える連中のようである。


「お好み焼き、どう?」

 優子が一口食べると、全員から視線が集まる。

「どう?

 美味しい?

 美味しいじゃろ?」

「せっつかない!

 ほら、遠慮なくどんどん食べて」

 お好み焼きなんて普段よく食べてるなんて余裕ぶりながら、他郷の人が食べるとなれば気になるようである。

(食べづらい……)

 見られながら食べると、美味しいものも、美味しく感じられない。


「じゃあ、曲入れてよ」

「よし、『闘魂込めて』を入れて」

「なんでじゃ!

 裏切りよったな!」

「優子ちゃんに気を使ったんじゃろが!」

「待った、本人に聞いたからにしよう。

 優子ちゃん、どのチームのファン?

 広島だよね、カープ女子だよね!?」

(圧が強い……)

「いや、私、野球に興味ないから……」

 転生前も転生後も、天出優子モーツァルトは球技には全く関心が無かった。

「なんだ、つまらんのお」

 とか言われるが、基本優子は音楽絡み以外の事だとつまらない女になってしまう。

「よし、優子ちゃん、何か歌って!」

「師匠、ドイツ語の曲よろしく!」

「ドイツ語の曲とか、誰も知らないって!」

 周囲がまた勝手に盛り上がっている。

 リクエストとあらば、仕方ない。

 探してみた。

(モーツァルトの子守唄?

 そんな曲作ったかな?)

(ピンクのモーツァルト?

 なんだその曲?)

(私も知らないモーツァルトがこんなにあるのはどういう事だ?)

 意外な事実に驚きながらも、知ってる曲を探す。

 とりあえず自分モーツァルトが作った覚えがある曲は見当たらなかった。

 後輩の曲にしよう。

 シューベルトの「魔王」にしとこう。


 そして歌った。

 静まり返るカラオケルーム。

(マズい、またやってしまったか?)

 東京ではたまに、場違いな歌で唖然とさせた事があった。

 暮子莉緒さんに倣って、アニソンにしておけば良かったか……とか反省しかけた時

「凄い!

 よく歌えるね!」

「師匠、流石です!

 今度教えて下さい!」

「音楽の授業みたいだったねー!」

 単純に聞き入っていて、感動していたようだった。


 優子は思わずホッと息を吐く。

 今まで、自分の想像を超えた変人っぷり、押しの強さ、テンションの違いに

(私、このグループと一緒にやっていけるだろうか?)

 と不安になりかけていたが、それが薄らいだように思う。

 音楽に対する感性が、実に素直だ。

 レッスンの時も感じた事だが、変に卑屈になる事はない。

 良い物は良いと認め、褒めて、それを目指そうとする。

(基本的に良い子たちなんだな)

 と思った。

 それだけに、同級生の伝統芸能ドラ息子が言っていた

「行き場の無いやる気が糞詰まりとなって変質した」

 という評が突き刺さって来る。

 本来、素直で良い子たちなのだ。

 やり甲斐があるライブとかで、奇行に走らないようにしてやりたいものだ。

 優子は自分の歓迎会の中で、そのように思う。

 それはそれとして、変人集団のサバトの中に放り込まれている今は、思いっきり疲れてしまった。


「じゃあ、師匠!

 今日は私の家に泊まって下さい!」

 筑摩紗耶の押しに負けて、とりあえずお持ち帰りされる優子。

 急な事でホテルも取ってないから、仕方がない。

「じゃあ師匠、一緒にお風呂入りましょう!」

「部屋にベッド一つなんで、一緒に寝ましょう!」

 なんだろう?

 本来、性癖的には嬉しい誘いなのに、今は性欲よりも睡眠欲が勝っている。

 変な事をする気力もなく、何もせずにその日は就寝した。


 そして翌日、筑摩の家に泊まった事が意味のある事になる。

 この不思議ちゃんは、高速バスで移動する事を苦にしないタフな女性だが、それ故におかしな移動経路になる時がある。

 だから、優子のスマホに入っていた南雲支配人、山口チーフマネからのメールは、揃って

『一緒に東京まで連れ帰って下さい。

 移動費は渡してあるので、新幹線使って下さい。

 バスターミナルに向かわないよう、首に縄つけてでも新幹線ホームに連れていって下さい。

 中学生に頼むのもおかしい話ですが、どうか寄り道せずに東京まで持ち帰って下さい』

 という内容であった。


 駅で土産物を買いながら

「バスの方が安く済むのに……」

 とブツブツ言ってる筑摩から目が離せず、帰宅するまで気が抜けない優子であった。

おまけ:

その頃、ライバルの武藤愛照は……

「スケル女の新曲、あれは凄い」

「我々も負けてはいられない」

「ライブパフォーマンスは我々フロイライン!の売り。

 それで遅れを取るわけにはいかない!」

という、特訓する気MAXの先輩たちに連れられて、千葉県は習志野市の自衛隊駐屯地に来ていた。


「これからFMsの派手な空中機動や、口パクにせざるを得ないスケル女の新作ダンスでも歌えるよう、身体を鍛えます!

 では、第一空挺団の方に礼!」

「よろしくお願いします!」


自分の体重と同じくらいの装備品を身につけながら、ビルの5階くらいの高さから飛び降りる訓練を受けるアイドルの話を愛照から聞かされた同級生の堀井真樹夫は

(日本の女子アイドルって、何なんだろう?)

と思い悩むのであった。

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― 新着の感想 ―
筑摩を「連れ帰って」から数行で「持ち帰って」になってるの草。 …と思ってから数行でそれが吹っ飛ぶおまけのインパクトよ。
一体、アイドルって何なのよ……(アイ◯スのいおり◯っぽく
なんでアイドルが第一狂ってる団で教導を受けて居るのだろうか?
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