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ある日、子どもが不登校になりまして  作者: 千東風子


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06 中学二年生の三月

 

 中学二年生の三月

 学校に行けた日の記録をつけるのをやめた

 学校に行くよりも身体を治すのが先



 二年生の修了。担任の先生と私とで面談を行った。

 医師に書いてもらった診断書の写しを出して、起立性調節障害で継続治療が必要と説明した。その流れで、病気もあるが、学校内の大きな声や怒鳴り声にとても恐怖を感じていて、今後も休みが続く見込みであること、出席しても遅刻早退が増えることを伝えた。また、学校に行けない日はフリースクールに行くことも検討していることも伝えた。


 担任の先生は理解を示してくれて、まず謝ってくれた。生徒に怒鳴り散らしているのはこの先生ではないのに、「力及ばずに申し訳ない」と頭を下げてくれた。

 謝られても何も解決しないけれど、娘はこの先生に感謝していた。それをそのまま伝えて私からもお礼を言うと、先生は泣き出してしまった。

 あわわわわ……。 

 先生は教科の授業に加えて担任で生徒に関わり、部活動の面倒を見て、きっと表には見えない事務処理とか雑務がいっぱいある中、学校は不登校がいないクラスはないほど荒んでいて、何とかしようとしても校長先生と方針で対立して、キャパがとっくにオーバーしていたのだろう。

 端から見たら保護者(私)に詰め寄られて泣いて頭を下げるおじいちゃん先生(担任)の図。誰かに見られたら通報ものじゃん……。


 さすがにベテラン先生はすぐさま落ち着きを取り戻してくれ、面談内容に話が戻った。

 学内にはほかにもフリースクールに通っている生徒がいるので、フリースクールに行くこと自体に問題はないとのこと。ただ、フリースクールに行って学習したからといって学校の出席日数に反映されるかは約束できないとのこと。フリースクールによっては、学習時間が規定の時間に満たないことも多いからだそう。個別対応になるから相談してほしいとのことだった。

 フリースクールは学習のサポートをしてくれる塾のような位置付けなのかもしれない。身体がつらい時はひたすら休み、動ける時は動く。動ける時に行くところがあるというのは、家に引きこもって孤独にならないためにとても大事なことだと思う。


 三年生に上がる時にはクラス替えがある。環境が変わることが娘にとってどう作用するかは未知数だけど、学校側には言うことは言って診断書も出した。これで学校を休むことでうちの子のわがままだとか根性がない論は言わないだろう。

 こちらの要求として、怒鳴る先生と教科でも関わらないように配慮してほしいと伝えたけれど、うちの子一人の事情で色んなことが決まるわけでもない。もしもまた学校の環境が娘にとって悪ければ、もう行かないだけである。


 娘が学校に行けなくなって約半年。

 ようやく『学校に行かないのは悪いこと』という刷り込みが私から無くなったと、自分で思った。


 というわけで、早速フリースクールをネットで調べると、たくさん存在した。こんなにあるということは、需要があるということ。初めて聞く名前もあるし、有名企業や有名塾の名前もある。ネットの口コミも参考にはするが、こればっかりは誰がなんと評価しようが娘との相性を優先したい。片っ端から資料請求すると、ありがたいことにすぐさま送られてきた。

 仕事終わりの既に霞んでいる疲れ目を凝らして夜中に熟読し、通える範囲に教室があるところをピックアップした大量の資料を娘に渡した。自分のことだから、興味をもって調べてほしい。近場じゃなくても「ここがいい!」と思うところがあったら検討したい。


 大抵のフリースクールは高校のサポート校がメインで、中学部もあるよ的な感じだった。

 サポート校って、なんだ?

 新しいワード登場にまたネットで調べる。最近視力が急に落ちた……。

 以下は私の解釈。


【フリースクール】

 小・中学生で、何らかの事情で不登校になった子の居場所。家とも学校とも違う環境で勉強したり友達と過ごしたりする。元々の学校に在籍したまま通う。登校と学習状況によってはフリースクールと学校が連携して学校の出席日数に数えてくれる。学校に行けるなら学校に行ってもいい。


【サポート校】

 サポート校と提携している通信制の高校に同時に入学し、日常で通うのはサポート校で、高校生として在籍するのは通信制の高校。サポート校は法律に基づく『学校』ではなく、私塾の扱い。体調や学習面で個別対応してくれて、通信制高校での学習のサポートに加えて、調理や美容などの専門学校のようなプラスアルファな授業のコースもある。フリースクールの中学部から入れば、学習状況に合わせて、休んでいた分を高校卒業までに追いつけるカリキュラムにしてくれるなど、至れり尽くせりな分、授業料はすごくお高い。高校とサポート校の二校分の学費がそれぞれ必要。


 おそらく、娘はサポート校のお世話になる気がする。むしろ相性の良いところを探して、のんびり学生生活を送ってほしいと思う。そうなると、二校分の学費を果たしてうちは出せるのか、今まではなんとなくでやってきた貯蓄と家計の洗い直しもしなければならない。


 何カ所か娘と選んだところに見学行き、そのうちの一つの中学部に体験入学してみることにした。体験入学は八回。週に二回行けば約一ヶ月分だ。諭吉様が数人羽ばたいていった。


 娘の症状は変わらないけれど、少しずつ物事が動いていることが救い。


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