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ある日、子どもが不登校になりまして  作者: 千東風子


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17 高校一年生の四月

 

 高校一年生の四月

 入学



 日常で通うのはサポート校なので、サポート校の入学式に出席となる。あいにくの雨だったが、娘の顔色は良くて安心した。

 高校生活の最初はガイダンスなどが多く、本格的な授業が始まるのは中旬以降だった。その間で生活リズムに慣れ、通学の満員電車にも慣れていく。


 病院のカウンセリングの先生から、カウンセリングは今回で終了で良いとの言葉をもらい、肩の力が抜けた。

 始まった高校生活にも順当に慣れていって、娘に大きな苦痛もないこと。カウンセリングをしても吐き出すものがほとんどないことが決め手となったようだ。


 最後の最後に先生から、カウンセリングが始まった当初にはもう症状はなかったが、状況から推測すると、学校に行けなくなったあたりは娘にはうつ病もあったと思われると言われた。


 うつ。

 え、と思った。

 不登校になった時にもちろんそれも疑った。子どもだってうつになると聞いたことがあったし、ネットでも本でも、頭痛の原因のひとつとして出てきた。起立性調節障害と併発する可能性があるとも書いてあったし。

 けれども、脳神経外科のクリニックでもこの大学病院でも、今までうつについては疑いも出てこなかったのに。


「学校生活が怖くてうつになったのか、うつになったから耐えられなくなったのかはもう分からないけれど、悪化するどころか、病院にかかった時に既に回復していたのは、お母さんが適度な距離で寄り添ったからだと思います。お母さん、頑張りましたね」


 先生がそう言ってくれた。


 娘は私じゃない。

 そう思わないと、「なんで?」という言葉を娘にぶつけてしまう。実際何度かは「なんで学校に行けないの?」と言ってしまっている。

 娘は娘だけども、別の人間。できるできない、好き嫌い、得意不得意も私と全く違うし、物事のどこを大切なポイントとして捉えるかなんて、時代も変わって価値観も移ろって、もはや異星人レベルに通じ合わない時があるくらいだ。私が産んで育てたのに不思議。


 なんで? どうして? と、娘本人にも分からないことを問い詰めてくる、そんな親はしんどくなるだけだと思った。

 私は自分が思う母親の立ち位置よりも三歩くらい退いた距離感を心がけるようにしていた。それでも無意識に娘の意志に介入していた時があったくらい、「自分の子」という意識はとても強くて、それは責任感かもしれないけれど、過剰な期待は重荷だし束縛だと戒めた。


 仕事で朝と夜の短い時間しか関われなくても、ずっと見ているよ。

 それだけは娘に伝わるように、手も口も出したいところを、ぐっと堪えることが多かった。


 これで良いのだろうかと悩みなからきたが、それで良かったのだと認めてもらえた。


 私の心が軽くなった。

 娘の一時間くらいのカウンセリングの後の私との面談は、私のカウンセリングでもあったのだ。

 娘同様に私もそれを無事に卒業できたことに感謝を。心からの感謝を。


 診察の方も、薬を全部やめてみて二ヶ月様子を見ることになった。これで問題がなければ、診察も終わりとなることが決まった。


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