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ある日、子どもが不登校になりまして  作者: 千東風子


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12 中学三年生の九月

 

 中学三年生の九月

 修学旅行



 朝早く集合場所のバスに乗って旅立った。仕事で見送りはできなかったけれど、起立性調節障害で一番頭痛がつらい時間帯だろうに、ちゃんと自分で起きて行った。


 それだけで、私は感極まってしまった。


 行ったはいいけれど、行程途中で体調を崩してお迎えコールが来ることも想定して、仕事の調整をしておく。過保護だろうがなんだろうが、できることはしておく。仕事場からでもすぐに迎えるように荷物とお金を持ち、新幹線などの経路を調べ、仕事中だけれども上司に許可を得てスマホを机の上に出してちょいちょい連絡が無いか確認。


 幸いなことにスマホは一度も鳴らず、娘は「つっかれたぁ~!」と満面に笑みをたたえて帰ってきた。


 ささいなことだけれども、我が家にとってこれがどんなに奇跡的なことか。宝くじが当たるよりも遥かにすごい奇跡のように感じた。いや、宝くじも当たらんのだけれども。


 一人一台持参を許されたレンズ付きフィルムカメラ。一体何を撮ったのやらと、出かけたついでにカメラ屋さんで現像、写真データをスキャンしてもらった。

 娘が撮った写真は景色が主だったけれど、照れながら友達と写る娘の姿もちらほら。なんだか嬉しくて、夜一人でちょっと泣いた。


 病院は問診とカウンセリングで変わらず。

 修学旅行に行けたことを、ノーベル賞受賞なみに褒められ、娘はテレテレと満更でもないもよう。

 娘が毎日つけている(てい)(通院の日に慌てて思い出しながら書いていることがあるのを母は知っている)の睡眠表を見た医師が、良い傾向で、このまま投薬と休息と運動を無理のない範囲で続けることと、「やらなきゃ」って気負わないで、寝て終わった日があったとしても「身体をちゃんと休めた」ということで気にしないように、と言ってくれた。


 ものは言いよう。だけれども、本当に言葉のチョイスって大切だな、としみじみ感じた。


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