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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【火炎の四大】
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◇まず一歩



 ドメイライト騎士のグリフィニアとウェンブリーはわたしを置いて行った。その理由がすぐに声を出す。


「エミちゃどこいってたの? 心配したよ」


 ついさっきから見えていた人物───冒険者になってから出会った人で一番付き合いが長いと言えるワタポが、気さくな声で。


「なんか集まりあんだろ? 行かないのか?」


 気さくな声にはワタポなりの気遣いがある。

 付き合いが長いからこそ、それを感じられて、それがとても居心地がいい空気を作るんだな、と最近はわりと真面目に思う事がある。

 今なんて特に、そんな感じだ。


「うーん......ひぃちゃが行ってると思うし、後でキューレさんに聞けばいいし、行かなくていっかなって」


「キューレも来てんの?」


「うん。さっきトラオムについたよ」


「へぇ......女帝はどうした?」


 次にわたしは【炎塵の女帝】について質問する。既にウンディーまで「女帝を倒した連中がいる」や「イフリーは女帝が仕切っていたのか」などの噂が多少なり広まっていたし、こうしてイフリーでワタポ達と再会出来た時点て女帝を倒した事の証明と言えるが......ちゃんと知っておきたい。


「女帝を倒したのはワタシ達じゃないんだ。エミちゃと一緒に来た3人のひとり。ヨゾラさん、だっけ? 髪の長い人」


「あぁ、剣二本持ってるヤツな。ソラが倒したのか? ひとりで?」


「うーんとね───」



 こうしてわたしはワタポから女帝戦の内容を聞いた。結局【炎塵の女帝】は強かったが噂に聞く【覚醒種アンペラトリス】の凶悪性や脅威が低かったらしいが、それでもワタポ達はジリ貧に近い状態で突破口を探りながら現状維持するのが精一杯だったらしい。

 そこで、ソラ───ヨゾラが一歩前に出て、討伐したらしい。


 ワタポの “眼” でもハッキリと動き───何をして倒したのか、が見えなかったと。



「めっさ速いとか、そういう感じ?」


「速かったけど、速度とは少し違う気がするんだ......なんだろう? あと、ヨゾラさんは完全に女帝種だった」


「あー......だからか。なんか底にあるマナの感じがひぃたろ(ハロルド)のに似てて、でももっと濃い感じで」


 わたしは何も意識しないでそう告げると、ワタポは少し驚いたようにわたしを見て言う。


「エミちゃ、マナみ苦手じゃなかったけ? 集中すればそれなりに出来るけど〜みたいな......魔力じゃなくてマナだよね?」



 ......そうか、わたしは何も話してなかったんだ。

 自分で納得して、その事が自分の当たり前になったらそれで終わり......誰にでも話す内容ではないけど、ワタポにはちゃんと言っておこう。


「なぁワタポ、リスキーエンハンス覚えてるか?」


「覚えてるよ。魔女の奇病......」


「そうそれ。クソ甘い砂糖の味も、コーヒーとココアの違いも、飲み物の温度も、バグってたアレ。あの時から......んや、あの後から魔力感知の精度は上がって、マナの感知も前よりビンビンになって、妖力も少しわかるようになった」


「それはずっと?」


「ずっとっぽい。近くにいる相手は集中もそんなしなくていい。まだ広範囲で感知しようとした事ないからどうなるかわかんないけど、とにかくリスキーエンハンスの影響が身体に残ってる」


 魔女の魔術を使えば結構なレベルでダルい反動が来るのは前から同じで、これを避けるには魔女の魔術を使わなければいいだけ───つまり魔女の魔術を使う場合はどう足掻いても反動がある。

 これはリスキーエンハンスではなく、そういうものなんだ。

 砂糖が甘いのも、砂糖はそういうものだから。

 コーヒーが苦いのも、酒を飲めば酔っ払うのも、そういうものだから。

 魔女の魔術の反動も、そういうものだからだ。


 ただ、問題は魔女力ソルシエール色魔力ヴェジマを使った際に発生するデバフのようなもの。それがリスキーエンハンス。

 そして、そのデバフの先が、今のわたしで言えば身体に残った感知能力の上昇......。


「......それって、能力ディアに似てない?」


「やっぱそう思うよな......まぁそれはいいとして、今のわたしは感知能力が高くなってる。だからマナも魔力も前以上にわかる」


「......そっかぁ」


「..................救った命や繋いだ命に眼を向けるべきだ、ってさっき言われたんだけどさ」


 わたしはリスキーエンハンスの話を終わらせて、次の話題を唐突に投げる。

 改めて聞いてくれ、なんていうのも違うし、それなら何気なく投げてしまえばいい、と自分でも強引に思える選択───だったのだが、


「うんうん、そうだねぇ」


 ワタポは頷きながら、強引かつ唐突な話題を簡単に受け入れた。


「エミちゃはいつもいつも、いっっっつも、すぐ次へ、先へって行っちゃうからね。それがエミちゃらしさと言えばそうだけど、感謝してる人達の言葉をいつも無理矢理渡させる側もいるんだよ?」


「......?」


「例えばドメイライト騎士団。騎士団長がレッドキャップだったって事......あれはエミちゃが騎士団で滅茶苦茶したから、意識が全部エミちゃに向いてたから、街の人達には一切フィリグリーの意識が向いていなかったから、無事だったのかも知れないでしょ? 猫人族ケットシーの時も、闘技大会の時も、最近なら雨の女帝の時とかも、エミちゃは意図しなくても助けた相手にお礼さえ言わせないですぐどっか行っちゃう。シルキもそうだよ。シルキの村や街に居た人間も妖怪も、夜楼華の件だけじゃなく眠喰バクさんの事もありがとうって言ってたの、知らないでしょ?」


「............全然知らない......」


「今回も、デザリアの人達は、デザリア軍人さんも、ワタシ達にこっそりお礼を言ってたし、千秋ちゃんの件も何人かは「彼女を止めてくれてありがとう」って言ってたんだよ? 千秋ちゃんの事を、前の王様の事を信じてた人達は少ないけどこの国にいたんだ。そんな人達がみんなクチを揃えて「彼女に罪を与えず止めてくれてありがとう」ってワタシ達に言うの」


「......、............そうか......千秋ちゃんの事、ちゃんと知ってるヤツいたんだな......」


「うん。だから───エミちゃは今まで出会った人達の、もう会えない人達の分までちゃんと前を見て、今まで通りでもいいから進まなきゃだね。ワタシもそうだよ......人には色んな事が、その人にしかわからない事が沢山ある。でも、生きているなら、生きていかないと。死んじゃった人達を無駄死ににするかしないかは、その人次第なんだよきっと」


「───......」


「......それじゃ、ワタシは()に行くね。待ってるからね(、、、、、、、)エミちゃ」





 みんなそうなんだ......。

 みんな......わかってるフリをしていたけど、本当にみんな、色々なモノを乗り越えて、背負って、それでも生きてるんだ。

 大小様々な事があって、でもその本人からすれば大も小もなくて、立ち止まる事もそりゃある。それでもまた一歩進んで、ずっと進んでいくんだな。



 今すぐどうこう、ってのは無理だ。

 でも、まずは───、



「───今のイフリーの王様に会わないとだ」



 まずは、一歩だ。






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