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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【火炎の四大】
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◇一息つく暇もなく



 ウンディー大陸やノムー大陸で突如現れた爆弾人間。それは【炎塵の女帝】の爆破付与によって作られていた人間であり、原因は女帝種と判明。

 対話で解決するならばそれが一番よかったのだが、相手は女帝種でありイフリー大陸に君臨する立場。そのうえ人とし生活するレベルの覚醒種。

 誰もが予想していた通り、対話などする余地もなく戦闘となり、数十分前にこの件は片付いた。

 イフリー大陸に密入する形で潜入し【炎塵の女帝】を討伐するまで6時間と経過していない。ここまで濃厚な数時間を体験した面々は重い疲労に襲われているが、休むタイミングは今ではないのだ。


 イフリー大陸の首都デザリアはハッキリ言って崩壊している。街並みが崩壊、というよりは、街として、首都として機能していない。

 この問題を「他国の事など放っておけ」と切り捨てる事は簡単だが、今回の件は女帝が国民には何ひとつ言わず他国に喧嘩を売った結果。つまりイフリー大陸で暮す者達も被害者という枠に入る。アフターケアまでしなければそれこそ「他国がイフリー大陸に一方的に攻めてきた」という形にすり変わり、世は混乱を越え混沌としてしまうだろう。


 今必要なのは行動よりも言葉であり、ただの言葉ではなく力ある言葉だ。


 砂を噛んで不快感を奏でる義手でフォンを持ち、ワタポはウンディー大陸の女王へ現状報告を行う事に。身勝手な事だが緊急という形で無人となった宿屋で休ませて貰っている面々も、下手に行動せず、しかし次の行動へ備える。


「......もしもし、ワタポです」


 通話が繋がり、相手のフォンには登録者の名前が表示されているハズだがワタポは律儀に名乗る。


『ワタポ!? そちらは無事ですか!?』


 通話を繋いだ直後とは思えない、焦りのある声音を聞きワタポは素早く通話を周囲の者にも聞こえるスピーカーモードへと変更した。勿論セツカにはことわってだ。


「こちらは無事とは一言で言えませんが、終わりました」


『そう......ですか、お疲れ様です。よくやってくれました』


 セツカの声に疲労を感じ、ワタポは訊ねる。


「どうしたのですか? やけにお疲れのようですが......」


 流石は元ドメイライト騎士団で隊長を務めていただけの事はある。言葉使いなどにぎこちなさがなく、何より今もウンディーでは女王の護衛を時折任されるだけの事はある。セツカ自身はワタポへそういった態度を取らなくても良い、と伝えているがメリハリという意味では大切だろう。


『外界の侵略者ストレンジャー......の件はご存知ですよね?』


「はい」


 外界の侵略者ストレンジャー

 ここイフリー大陸へワタポ達が訪れる少し前に【ユニオン】に特種クエストとして貼られた高難度クエスト。

 生意気世代ディスオーダー達が指揮を取る形でメンバーが集められ、討伐または防衛に向かったハズ。エミリオ、ワタポ、プンプン、ひぃたろ、の4名も大型レイドに参加するつもりで【ユニオン】を訪れたが、結果的に参加しなかった。


『こちらも相当な被害が出てしまいまして......死者は出ていませんし、なんとか撃退する事に成功しました......』


 セツカのトーンでてっきり全滅したのかと肝を冷やしたが、死者ゼロで撃退というのは成功と言えるのではないか? とワタポは思ったが、


外界の侵略者(ストレンジャー)の撃退は負け扱いだ。奴等は絶対にまた同じ場所を狙って来る」


 背後から飛んできた声と、独特な香りを持つ煙草の煙。

 声の主はイフリー大陸で出会った【ヨゾラ】だった。


『......そちらの方がおっしゃる通りです。外界の侵略者は撃退されても必ず同じ場所を侵略しに来ます』


 ならば今度は討伐すれば、と話を聞いていたプンプンや白蛇が思うも、きっとそんな簡単な話ではないのだろうと察する。


『外界の侵略者の件は今はいいでしょう。問題は山積みと言えますが、何よりも今重要視される問題は、貴女達が居る大陸で起こるであろう事なのです』


 全員がワタポのフォンへと視線を向けた。

 イフリー大陸で起こるであろう事......つまり今はまだ起こっていない事。ワタポは【炎塵の女帝】が独断で他国に撒いた火種の鎮火を予想するも、それならば起こるであろう事、とは言わないだろう。既に起こっているのだから。

 ならば一体なにが......、


『失礼、ここからは僕が代わらせてもらうよ。ワタポさんにはウンディーで顔合わせしていると思うけど一応、冒険者をやっているケセラセだ。自己紹介はこれくらいにして早速本題に入らせてもらうね』


 SSS-S3(トリプル)の冒険者であり、ギルド【アスクレピオス】のマスター【ケセラセ】がセツカと交代する形で通話に。

 物腰の柔らかい人物だと記憶していたが、フォン越しの声音には疲労感が重く絡み付いていた。


『今イフリー大陸の首都デザリアの地中深くに恐ろしく濃いマナの反応が出ているんだ。僕らが外界から戻った理由のひとつ─── 魔結晶塔マテリアルタワーだ』


 黄金魔結晶と呼ばれるふざけた力を持つマテリアを使うために必要となるマテリアが封印されている───と言われている塔。しかしあくまで噂であり問題児世代(バッドアップル)は最近まで気にもしていなかった存在。

 それが今、イフリーに。


『出現の予定よりだいぶ速いんだ......その理由が地殻に何らかの衝撃が与えられたからだろうと僕は思っている。その衝撃が何だったのかはどうでもいいんだ、ただ───魔結晶塔のマナが鮮明になると同時に、別のマナが地殻で活発化しているんだ。その正体がわからない......しかし僕達は魔結晶塔とかマテリアを確保しなければならない。その理由はわかるよね?』


 ケセラセの言葉に何名かは眼を細めた。

 黄金魔結晶が【レッドキャップ】の手にある今、魔結晶塔のマテリアまでもが手に渡るのは絶対に避けたい、阻止すべき事。

 間違いなく【クラウン】もマテリアを狙ってくるだろう。

 ノムー騎士達も魔結晶塔が出現すればマテリアを狙う。冒険者と協力する事は予想出来るが、黄金魔結晶の場所がわかっている以上は......外界からも魔結晶を狙った何者かが現れるだろう。


 最早これは冒険者だ犯罪者だの問題や規模ではなく、地界と外界を強制的に結びつける事柄。


『僕らもすぐに向かいたいが、正直言って下手な実力では自殺するようなモノなんだ。そして......先程、女王が死者は出ていない、という言葉は嘘ではないが重症者が多数出ている。僕のギルドもリピナちゃんのギルドも、しし屋さんも自分の怪我をとりあえず動ける範囲まで回復させて、走り回っている。頼み事を出来る仲ではないのは重々承知しているけれど、頼めるのはキミ達しかいないんだ』


 ケセラセのギルドは治癒術師が大勢いる構成で、上の世代のリピナのギルド、という印象。

 しし屋───ししも治癒術を得意とした冒険者で薬品類も生産販売している。

 つまり、今ウンディー大陸にいる治癒に関わっている者達が総出で回復に徹する程事態は深刻。


 ワタポは何も言わず冒険者陣へ視線を向けると、全員が無言のまま強く頷いた。


 それが答えだ。


「わかりました。ワタシ達の方でも地殻のマナの原因を探りつつ魔結晶塔を警戒します」


『ありがとう』


「セツカ様、イフリー大陸の件はどうしますか?」


『そちらはわたくしにお任せください。貴女達にしか出来ない事があるように、私にしか出来ない事がある───国の件は私がなんとかします! ですので貴女方は......』


「任せてください───」


 言葉を詰まらせたセツカにワタポはそう言い、そして最後に、


「んでも、報酬はちゃんと用意してくれんしょ? じゃなきゃやらねーぜ───って言い出す魔女ひとが居るのでそちらの方もお願いします」


 ここには居ないエミリオの真似をした。


『───はい! エミリオにもお伝えください。必ず報酬は用意する、と!』


 なぜエミリオがいないのか───セツカは少し考えたが「エミリオだから」という答えになっていないが、この上なく納得出来る言葉に辿り着き、通話を終わらせた。



 魔結晶塔、地殻のマナ、一息つく暇もなく難しい問題が訪れた。



「......エミちゃ、毎回毎回、どこでなにやってるの?」



 ワタポはガラスが割れている窓から月をチラリと見上げ呟いた。



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