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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【女王】
66/759

◇65



バラバラになった死体や抉れた地面をユニオンが調べた。その結果をキューレが報告してくれた。

切断されたワタポの義手や傷口は地面に深く残った傷と同じ。

しかしバラバラに切断された死体の傷跡、傷口とは別。

ワタポの方は大鎌の傷で間違いないだろう。ならば死体は何でバラバラに?大鎌使いとは別の誰かがいたのか?

仲間をあそこまで酷く殺す兵...それは考えにくい。

ワタポに何があったのか聞きたい所だが...声も出さず表情も変えず涙を流す今のワタポにあれこれ聞く事は出来ない。


人間だけではなく多種族が住み暮らすこの世界に来て15年くらいか...わたしが産まれた魔女界とか別世界。

気に入らなければ殺そうとするし、殺しても別に咎められない。

力ある者が上に立ち力ない者は従う世界。

ま、やり過ぎて追放された身としては魔女界のルールも意味わからないと思うけど...この世界はもっとおかしい。

人間や他種族を殺してはいけない。

でも モンスターは殺していい。

なのに 人が人を殺す事は終わらない。


ルール上はみんなそう言うくせに裏では平気でルールに反する。

バカ正直にルールの上に立つ者は損をする ってのはどこの世界も同じか。



「ワタポ」


「....」


「わたし 産まれた時点で普通の魔女がショボく思える程バカげた魔力を持ってたんだ。あ、魔女界には女しかいないから子供を産むってゆーより召喚する感じなんだけど、親となる魔女を決めて他の魔女がその親魔女に魔力を注いで大規模な召喚術を使う。1人の親魔女が召喚できる魔女の数は一生で1体なんだけど、たまーにチート魔女が産まれる」


「....」


「それが わたしだった。そりゃ産まれた時点でキモい魔力が自分にあったら使いたくなるじゃん?しかも1度に複数の魔術を詠唱できるときたら沢山の魔術を覚えてぶっぱなしたくなる」


「....」


「自分で魔術を覚えて使って、その魔術を少しアレンジしたりしてたら次は相手が欲しくなる。魔女界では強い魔女が上に立てるしさ。自分より強い魔女を片っ端から殺したんだ」


「...え?」


「それでね、5才の時大事にしてたウパパ...使い魔が殺されたんだ。わたし腹立ってさ...全員殺すつもりで暴れたんだよね。そしたら完全にわたしが悪者、魔女達はエミリオって魔女を危険な存在と判断し魔女界を追放する事にしてその時無理矢理このブレスレット...魔女の魔力を抑えるマテリアをつけられてこの世界に落とされた」


「....それで?」


「よくわかんない魔術でカッチカチに固められててコレ外せなくてさ、壊せる様になるまでこの世界にいるしかなくてね。ドメイライトをゾンビみたいに放浪してたら宿屋の女将さんが拾ってくれたんだ。そこで言葉を覚えてこの世界に触れて、色々知った。自由に生きる冒険者の存在とか」


「....」


「そんでね、わたし魔女全員殺してやろうと思ってたけど、そんな事どーでもいいから冒険者になりたい!って思ったんだ。んでもこっちじゃ魔女はモンスターよりヤバイ奴なのね。ブレスレット外せる様になってたし魔力も増えてたけど、外さないで魔女って事隠して自由に生きれる冒険者をになる事を目指したの」


「....うん」


「どこの世界にもルールはあって、それに従わないと罪になる。でもバカ正直に従ってても損をする。死ぬのは嫌だし死にたくないし大事な人とかも殺されたくないから、そーゆー時はブレスレット外すって決めてたけど...それで大事な人から両腕を奪った。どう思っても、どこまでいっても魔女は魔女。破壊とか殺戮とかの塊なんだ」


「違う!」


「違わない。でもワタポは違うでしょ?あの時ギルドメンバーを殺したわたしを今でも殺そうとしない。それどころか助けてくれたし、ネフィラも助けようとした」


「....」


「こんなどーしよーもない魔女を助けてくれて変えてくれたんだ。何があったかは知らないし話したくないなら聞かないけど、悲しくて悔しくて今ワタポは泣いてる」


「....」


「全部嫌で全部見たくないなら死ねばいい。そうすれば自分の中では全部終わる。でもまだ諦めてないから、どうにかしたいから生きてる。ワタポ言ったじゃん。罪を背負って生きるって事は同じ事を繰り返さない様に生きる事。ってさ...それは自分だけじゃなくて同じ事をこの世界でも繰り返させない様に生きる事でもあるじゃん。今ワタポが抱いてる感情を他の誰かが抱かない様にするのも...そうなんじゃない?」






...ダメだ。何を言いたいのか解らなくなったし、何でこのタイミングで自分が過去にやった事をペラペラ言ったんだ...。

慣れない事をしようとするとコレだ。

これでもし「全部嫌だから死にます」なんて答えをワタポが出したら、わたしはどうするつもりなんだ。


何が何だか解らなくなっていたわたしを助けてる様に窓から声が入ってきた。


「そうだよ、ボク達もいるしボクも....ボクと同じ思いをボク以外の人にしてほしくないから、繰り返してほしくないから進んでる。最後の願いを叶えてあげたくて...」


「私は全部を知りたいから。プンちゃんの事も世界の事も、全部を見て知りたい。それに...プンちゃんには助けられたもの。次は私が助けてあげたいし力になってあげたい。一緒に生きて進む理由なんてそれで充分よ」


「...なんだよ、聞いてたのかよ2人とも」


「窓あけて話す内容じゃないわよ。私達以外が聞いていたら大事件よ魔女エミリオ」



確かに...聞いていたのがこの2人で助かった。

それに2人の言葉はワタポに届いたらしい。

ワタポの雨は上がり瞳は前を見ている。窓の外と同じくらい晴れた瞳で。



「そうだね、うん。ワタシも諦めたくないし、この気持ちはワタシだけで終わらせたい。それにワタシもプンちゃに助けられた。助けてもらったお礼もしないで死ぬなんて嫌だし知らない事をもっと知りたい。エミちゃがこれからどう変わるかも もっと見たい」



バラバラに進んでたわたし達が奇跡的に出会って、今足並みが揃った。

これからだ。今セッカ達は戦争を回避する様に行動している。ならわたし達がやるべき事は...デザリアへ行って王を操り世界を混乱させてるアホを引っ張り出す事だ。



「みんな、わたしと一緒にデザリアへ行こう。勘だと王は偽物でその偽物を操ってるバカがいると思うんだ」



詳しい話は必要ない。わたしの勘が的中すれば嫌でもその存在をプーは知る事になる。

それにまだリリスやモモカがプーと関係あるとは決まってない。変な迷いや感情の重荷を与えない為に今は言わない方がいい。関係なかったならそれはそれでいいし。


さぁみんな!わたしと共にデザリアへ!



「無理ね。デザリアは今冒険者の上陸、入国を徹底的に禁止してる。B以上の冒険者はみんな顔も名前も知られてるし私達3人も例外じゃないわ。行くなら1人で行きなさいC+の冒険者さん」


「えぇー...今みんなで頑張ろう!って流れじゃないの?足並み揃えて助け合って進もう!って感じだったじゃん」


「そうね。でも無理なものは無理。1人に合わせてみんな死ぬなんてごめんだわ。それに現状でイフリーへ入れるのはランクC+のエミリオだけなのも事実よ。私達が一緒に行ってバレればセッカ達の頑張りも水の泡よ」



ぐ...早速手詰まりか。

まぁハロルドの状況を素早く分析して的確な答えを出すスキルは助かるけど、デザリアへ急ぎリリスを捕まえる事以外に戦争を止める方法が無い事も事実だ。

かと言って1人で潜入しても多分捕まって終わるし...どうしたもんか。



「とにかく今すぐボク達は動けない。そこで、デザリア問題は一旦セッカ達ユニオンに任せて、ボク達はその腕を治そうよ!」



あ、忘れてた。

ワタポは今片方の義手を失っている。

プーの言う通り今わたし達は動けない。もし、万が一デザリアと戦争になった場合も予想して準備をしておいた方がいい。

ワタポの義手は勿論、装備やアイテム類も確りと。



「んじゃ行きますか、変態の街アルミナル!」


「確かに芸術家って変な人が多いわね」


「久しぶりだなぁ~アルミナル!楽しみだね!」


「ありがとう、でも今度はワタシも素材集めやお金稼ぎに参加するからね!」



予定変更!デザリア行きは中止と言うか...止めて、目的地はアルミナル!

ワタポの義手を治す事!



前回は調整やらベースやらで色々お金が必要で眼玉破裂する金額だったけど、今回は少し安いだろう。

それにみんないる。お金も頑張れば何とかなる気がしてきた。



「馬車はけっつ痛くなるからクゥに乗ろうぜェー」



腕にドリルとかつけてもらえる様にビビ様へお願いしてみよう。



「エミちゃ、絶対変な事言わないでね。ビビさんも悪ノリするタイプだから。いいね?」



うおっ、わたしの考えをリビールするとは....ワタポめレベルを上げたな。


ドリルは諦めて ハンマーをこっそり頼んでみようかな。



「エミちゃ返事は?」


「...あい」



殺されそうだからやっぱやめよう。






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