◇地上へ
名も無き村でまさかまさかの、エンプレス。炎塵の女帝とご対面を果たしたわたし、ウンディー大陸の秘密兵器こと魔女エミリオさんは歴史に残る爆戦の果て、右手と武器を紛失する結果で終了した。
負けたのではなく、地面が爆発に耐えきれず崩落したので終了したのだ。もう一度言うが、負けたのではない。
落下エンドという不本意すぎる終幕だったが運よくバーバリアンミノス達に拾われた事で最低限の治療と安息にはありつけた。ノムーの騎士学校へ潜入した時バーバリアンミノス達と出会えてよかった......と安堵するには状態がよろしくなく、痛む腕と天井知らずで上昇する体温に焼き殺されるかと汗粒を滲ませていた。
命の危機さえ感じていたわたしの前に、右手と武器を拾っていてくれた謎の3名が現れ、なんとこの3名のうちひとりが再生術を持つ治癒術師だった。運がよかったといえばそうだが、日頃の行いが神がかってるわたしは運命なのだと認識し、どうにかこうにか腕を再生術で繋げてもらう事に成功。問題の熱の方はもうひとりの女性が何かしらの方法で見事解決、治癒も再生も済み、武器も返ってきて体調も復活! さて今からデザリアへ向かい炎塵の女帝に爆裂的な仕返しを───と考えていた所でバーバリアン達が続々と巣へ帰還し始めた。
「エミ、ナオッタカ?」
「ソト、ダレモイナイ」
「イナイ、イナイ」
なぜかわたしに群がるバーバリアン達。うざったくて仕方ないが外の状況───よりもここが今どの位置なのか気になるのでマップを立体化させ、バーバリアン共に詳しい位置情報の提供を促すと快く対応してくれた。片言なので所々理解不能に陥る場面もあったがシャーマンの通訳がそれらを解消してくれた事により、予想以上の情報が集まる。
「わたし達はデザリア寄りの地下洞窟にいるのか。デザリアまでは通ってないけど......この街には通ってるのな! ここ名前なんて言うんだ?」
立体化したマップを指でタップしそのエリアを拡大する。まだ行った事のない街なので街並みは不明だが進化したフォンは街の場合は【town】の文字が点滅回転する仕様で、街がどこなのかマップを見て悩み考える必要がなくなった。名前を自分で入力する事や、街の詳細を自分で記入する事も可能となっている。
首都とまではいかないが大規模な【town】の文字から予想して大きな街だろう。
「その街はトラオムだ」
魔女の悪戯により見た目が完全にバーバリアンミノスとなっているシャーマン。中身は人間......というどこか引っかかる存在はすらすらと言葉を操る。
「トラオムってどっかで聞いたな......なんだっけ?」
何かをクチへ入れ子気味よい音をカリッと鳴らすヨゾラ。街の名前に覚えがあるっぽいが思い出せないらしく仲間へパス、リヒトというどこか不思議な雰囲気を持つ女が代打で、
「ギャンブルの街だったような......ほら、ソラさん前に『地界にあるギャンブルの街でバカほど勝ちたい』って言ってたよ」
「あー......あの街か」
何か知っている様子で会話する2人だがヨゾラの表情やテンションから想像していい街ではなさそうだ。
「どんなギャンブル流行ってんの?」
ギャンブルに興味はないが洞窟から繋がっているのがその街なので知ってるなら情報がほしい。入ったら最後、勝つまで出られません! とかだったら時間の無駄だし、ギャンブルする金なんて持ってない。
「......モンスターパレード」
わたしの質問に短く反応したのはシャーマンだった。神妙な雰囲気で呟かれた【モンスターパレード】というのはおそらくゲーム───ギャンブルの名前だろう。モンスターはモンスター、パレードは......モンスターがパレードしてどのモンスターがカッコイイか賭けるのか? クソゲーじゃん。
「勝手にパレードやってろよ。入っても好きに出れる街なら何でもいいわ」
一蹴するように、適当に片付けるつもりで言った言葉だったが、
「エミも、私もこの街ではモンスターだ。街中を歩いてるだけで “モンスターパレードの駒が逃げ出した” と大騒ぎになる」
シャーマンはこの話題を終わらせるどころか詳しい路線へと進める。わたしとシャーマンがトラオムの街に入れば大騒ぎ......お互いに共通する点はなんだ?
見た目、違う。
性格、違う。
性別、、、違わないけど違う。
種族、違う───けど違わない。
「モンスターパレードのモンスターって」
無意識に漏れていた声に今度はヨゾラが反応する。どこか意外そうな表情を浮かべわたしを見て、
「そういう事。モンスターパレードのモンスターは人間ではない存在。そして人間でも例えばゴミやカスなんて言われてる人間や、人間とは思えない言動を繰り返す人間も、モンスターパレードの駒になる。人間様以外はみんなゲームの駒としてパフォーマンスを強制させられるうえ、盛り上がらない事をすれば駒からゴミへと転落する」
「駒からゴミ?」
「ゴミって本来は不必要な物、どうする事も出来ない物でしょう? 食材は冷蔵庫に入れてもその食材を調理する過程でうまれたゴミを冷蔵庫にはしまわない。ゴミはゴミ箱へ。リサイクル出来るゴミもあるけど、モンスターパレードは本来ゴミとして処分されるものを駒としてってイメージだから、駒からゴミに転落した場合の行き先はひとつしかない」
「え、それって何も悪い事してないのに人間じゃないってだけで駒......ゴミ認定されんの?」
「そうだ。人間を助けて見返りも求めず、平和に平穏に暮らしていた人も、人間じゃないってだけで拉致されてモンスターパレードで戦闘を強制させられた挙げ句死んだ。なんて話を何度か聞いた事ある。それ聞いてからトラオムに行きたいなんて二度と思わなくなった。あの街に染まってる連中から見れば、人間以外はゴミの中のゴミ。それをリサイクルしてあげているんだから感謝されたい、くらい思ってても驚かないね」
わたしはイフリー大陸にいいイメージがほとんどない。デザリア兵も力業で襲撃してきた事もあったし、何より常に何かしら企んでいるって印象が強い。そんな状態で今の......モンスターパレードの話を聞かされれば、この大陸はもう腐ってるな、と思ってしまうのは避けられない。
覚醒種、人工魔結晶、混合種、クソゲー、他にも色々と眼も当てられない事柄かあるだろう。
それら全てを合法としているのが......炎塵の女帝か。
「やっぱデザリアに行かなきゃなんねーわ。トラオムって所に繋がってるならラッキーとか思ったけど、行ったらダルそうだし普通に地上からデザリア向かうわ」
武具の確認、ポーション類は不足しているがここに居ても入手できるワケでもない。今はとにかく進むのが正解だと踏み、バーバリアンミノス達の巣から脱出する事を選択した。
トラオムという街に行けばまず間違いなく面倒事になる。だからといって胸糞ギャンブル街をシカトするほどわたしは心の優しい魔女ではない。
炎塵の女帝がクソゲーを公認しているなら、一刻も速く炎塵をぶん殴ってクソゲーのサービスを終了していただこう。人工魔結晶も混合種も、全部あの炎塵の女帝が指揮棒を振ってる......クイーンクエストとか爆弾人間の件とか関係なしにしても、炎塵を放置するのは胸糞悪い。
「エミ......本当に炎塵の女帝の所へ行くのか?」
「当たり前だ。外歩くからお前らバーバリアンは来るなよ。誰かに見られて騒ぎになったら外歩く意味なくなるし、今は誰かに説明する時間も無んだよ。わりーな」
炎塵───デザリア軍は魔女エミリオがイフリー大陸へ密入国している、という事を既に知っている。悪巧みのプロ大陸としても女帝が本当に魔女を殺したのか確証を求め死体を探し、勿論見つからない。ならば次は魔女自体を探す。
ここまで見え見えだというのにバーバリアンを連れてのし歩く行為は自殺的だ。良くしてもらって悪いけど今はバーバリアン達と一緒にいるのはお互いうまくないってワケだ。
「デザリアに行くなら一緒に行くよ、外でも地下でも関係ない。魔女がいなくてもデザリアには行くつもりだったし」
「ほー......んじゃ一緒に行こうぜ」
ヨゾラ達も目的地はデザリアであり、わたしを含めて4人。この人数なら目立たず、そして何かあった時に互いをカバーしやすい。
わたしの事情......というより心境が変わったが、目的地はデザリアであり目的は炎塵の女帝という点は変わっていない。他のメンバーが今どうしてるのかも気になるけどメンツがメンツなだけに心配する必要はなさそうだ。
「んじゃお前らが通った道使って外出ようぜ、わたし気が付いたらここにいたパターンだから道知らねーんだ」
「そう? ならいこう」
バーバリアンミノス達に軽く別れをいい、ヨゾラ、メティ、リヒトの後をわたしは追い地上へ。




