◇合流 2
名も無き村へ向かっている最中、炎塵の女帝が率いる隊と遭遇し、有無を言わさぬ爆発に飲まれていたパーティ③だったが、
「───びっくりしたー! どうして爆発したの!?」
土埃を払いながら魅狐は平然と立ち上がる。
魅狐だけではない、
「どうしてだろ? オイラも驚いたよ」
鬼のアヤカシあるふぁ も、
「爆弾を投げたようには見えなかったけど、みんな無事かい?」
瑠璃狼のカイトも、
「クゥが氷ブレスを使ってくれたからワタシも無事だよ」
白黒の剣士ワタポもフェンリルのクゥも、全員無傷という結果に。
魅狐プンプンは全身から雷を放電する形で粉塵を爆発させ、夜叉あるふぁは鬼の力を使い頑丈な身体で爆発を受けきり、瑠璃狼カイトは能力の影狼で影を纏い爆発をやり過ごし、ワタポは見切りの瞳とクゥへの指示、クゥも素早く氷ブレスを使い、全員がキッチリと粉塵と爆発をやり過ごしていた。
「それにしてもなんだったんだろ、さっきの走る箱......」
「プンプンさんが初めて見たって事は、ウンディーにも存在しない乗り物?」
「ノムーにもないと思う......少なくともワタシは噂さえ聞いた事ないかな」
プンプン、あるふぁ、ワタポが先程の乗り物について考えている中、カイトはその存在にピンときていた。
イフリー出身であり一時期はデザリア軍入隊を目指していたからこそ、イフリーの文化......というには少々重みがあるが、そういった趣向には詳しい。変形武具もイフリー発祥であり、魔銃もそうだ。もっと言えば大砲の類や機関銃などもイフリーが技能族の技術を応用し、生産に成功した。
「あれは正式な名前こそ知らないが、馬なしの馬車というより......人を乗せて運ぶ自動キャリッジ。乗った人がキャリッジを船の舵のように自由に操作する事が出来る。生き物に頼って運んでもらうじゃなく、自分達で好きに走り回るって感じかな? 俺が知った時とはだいぶ違うけど......完成していた事に驚いたよ」
カイトが知っていたのは燃焼石などの鉱石を利用して動かすものであり、それでは先程の速度など到底出せない。ではどうやって? と考えた所で答えは簡単に出た。なんせカイト達がウンディーからイフリーまで乗ってきた船にそれがついていたのだから。
「技能族の燃焼機か......たしかにそれを利用すればあの速度には納得だ」
「......? ボクそういうのよくわからないや。とにかく、これからどうするかだけど、ひぃちゃんもエミちゃんも通話に反応しないんだ」
耳に装着されているイヤフォンを何度か叩いてはクチをへの字に曲げる魅狐。
白銀の九尾が人耳部分を指先で叩いては「何してるんだろ」と不安そうに、ちょっと不機嫌そうにいう姿に、あるふぁは我慢出来ず笑ってしまった。
「む! 何で笑うの!?」
「ごめんごめん、でも、シルキ民からすれば魅狐はお狐様。とても偉い神霊の類なんだ。そんな魅狐も蓋を開ければオイラ達となんら変わらない人なんだなって思うとね」
ギルド【フェアリーパンプキン】はシルキに滞在していた事もありシルキ勢とはすっかり仲が良い。それでもやはりシルキ勢は魅狐に対して多少なりの緊張感を抱いていたが、あるふぁの中でそれは消え去った。
「ボクお狐様じゃないってば! 魅狐だけど、神様になんてなれないよ。ボクもみんなと同じで......ひとりじゃ不可能な事の方が多いんだ」
シルキに滞在していた頃から、プンプンはこの話題になるとそう言い、どこか悲しそうに視線を落とす。
その度ワタポが、
「誰だってひとりじゃ、ううん。ひとり2人じゃ不可能だらけですぐ限界がきちゃうよ。だからこそ沢山の人と関わりあって、上手に地道に生きていく。ワタシもプンちゃも、他のみんなも同じ。依存じゃなく共存」
こうして支える。
支え役ではなく、発言通りひとりじゃ不可能な事は他人に頼む。今プンプンは悲しく落ちそうになった所をワタポが支えただけの事。逆もあれば違う誰かが支える事も当然のようにある。
そうやって助け、助けられ、地道に生きていくのが人だ。依存ではなく共存。それがどれだけ大切でどれほど大きな事か、無自覚でも理解し、そういう繋がりを沢山もつのが人であり人として生きるために絶対的に必要な事。
中には孤独を好んで選んだり、独占欲を振り撒く者もいるが、そういう者は遅かれ早かれ決まって破滅する。
そうなってほしくない、と思える相手が自分の中に複数人存在して初めて、支え合う事や依存ではなく共存という生き方を知る。
ひとりどころか、2人3人でも不可能なも多く、限界なんてまばたきする間に訪れる。
だからこそ、多くの人と、他人と共存するんだ。
「そうだね、ボクもそれが一番いいと思う」
神だ仏だと持ち上げられるよりも、友達と言われた方がプンプンは何倍も嬉しく心強くなる。
三度、大切な人達や環境を失っているワタポだからこそ誰よりもそう思い、躓きそうになったら支えてほしい、躓きそうになっていたら支えたい、と強く思っている。
「うむうむ、たしかにそうだ。今のはオイラか悪かったよ。プンプンさんもワタポさんも、みんな同じ人。頼るのは弱い事じゃなく、頼れないのが弱い事......、冒険者ってエミーの印象が強いから変な人ばかりだと未だに思っちゃう」
エミリオが冒険者という存在の初見か、と2人は顔を合わせ「エミちゃんは、まぁ」「エミちゃは、ねぇ?」と呆れ笑いを浮かべる。
「そういう精神的、哲学的な話は落ち着ける所でしよう。まずは村へ向かう......のはやめよう」
話の句切りでカイトが入り込む。今向かっていた名も無き村へは向かわないという意見に3人は理由を求めた。
「さっきのデザリア軍はただの兵じゃない、相当上の立場だ。それに多分だけど......」
カイトが言葉を渋らせた所でワタポがハッキリと言う。
「炎塵の女帝がいた」
事前情報でイフリーに女帝が存在する事は既にわかっていた。その女帝がイフリーを実質支配している存在である事も。なので存在には驚いてはいない。が、その女帝種がまさか普通に出歩いているとは、とプンプンもあるふぁもカイトさえも驚き、認めたくないと思っている。
しかしワタポはハッキリと言った。女帝がいた、と。多分、おそらく、ではなく。
「なら尚更いかないと!」
「違うよプンちゃ。今、炎塵の女帝はデザリアに居ないって事。今ならデザリアに簡単に入れるって事だよ」
密入国した時点で各街や村へは簡単に入れないと予想していた。プンプンも勿論。
だがこの選択は大きな選択とも言える。エミリオのパーティはインペラトーレ───男性が共喰いをした際に発生する皇帝化した相手と遭遇している。ひぃたろパーティに至ってはどんな相手と遭遇しているのか不明だが、ひぃたろが通話する余裕さえ失う相手。
ここでどちらかのパーティへ合流して、全滅すれば全てが終わる。
「エミちゃんやひぃちゃんを見捨てるって事?」
「それは違うよ! ただ」
「だってそうじゃん! 言い方が違うだけで」
熱くなるプンプンと困るワタポの間にあるふぁが入り込み、プンプンの前へ。
言い合いが熱くなる前に止めるのは正解だが、止めたからと言って終わるワケではない。
「落ち着いて。ワタポさんは見捨てるなんて言ってないでしょ? それに───」
「言ってないけど、言ってないけどそう言ってるじゃん!」
「......言ってないんだよ。ワタポさんは見捨てるなんて微塵も言ってないし思ってもない。オイラにもそれがわかるのに、プンプンさんにわからないワケがない。だから一旦落ち着いて考えてみるといい」
「考えてって......」
プンプンは優しい。それはワタポもよく知ってる。その優しさが時として枷になるほどプンプンは他人をただの他人とは思わない。切り捨てるなんて事を絶対に考えない事をワタポは知っている。
「プンちゃ。エミちゃ達もひぃちゃ達も、ワタシの大事な友達だよ。だから見捨てるなんて事はしたくないし、する気もないよ」
「トウヤもだぷも、弱くない。エミーなんて殺しても死ななそうだな」
「みんみんもスノウさんも、モモさんも弱くないよ。白蛇くんは言うまでもなく強いし、オイラ達シルキ民はみんなが来るまでは毎日のように内戦してたんだよ?」
「......! そっか、ごめんワタポ......ボク、ちゃんと考えれてなかった」
どうやらプンプンにも伝わったらしい。
ワタポは見捨てるなど言っていない。むしろ言いたかったのは信じるという事。エミリオ達もひぃたろ達も、簡単に死ぬ連中ではない。
そしてエミリオはプンプンへ「デザリアで千秋ちゃんを探してくれ」と言った。
今プンプン達がやるべき事は加勢ではない。
「デザリアへ行こう。千秋ちゃんがいるってエミちゃん言ってたし探そう」
「うん、それが今ワタシ達に出来る事でやるべき事」
「一応トウヤとだぷにメッセ入れといたから、連絡出来るようになったら───って、早速だな」
イヤフォンから着信音が聞こえ、全員が同じ回数叩き応答した。
現在の状況を軽く言い合い、デザリアへ急ぎ向かい、そこで合流するという流れに固まった。
通話にエミリオが応答しなかった事に不安を感じるものの、トウヤ達の話ではエミリオは炎塵の女帝と対面していると予想していい。
エミリオが炎塵を足止めしているうちに、デザリアへ向かうのが最善だと各自納得し、向かう。
今回のクイーンクエストでメインとなるのは “炎塵の女帝が悪ならば討伐” というものだ。
悪ならば、という部分が、その判断が最も難しく最も重要となる。
現在の情報では「密入国者に対して正当な罰を」と見てとれる分、下手にエミリオの加勢へも行けないのが現状だった。




