◇イフリー大陸
わたし、魔女でありながらも冒険者というハイスペックな存在エミリオを中心とした少数精鋭でイフリー大陸へと現在向かっている。
技能族が新たに生み出した後付けの燃焼機を装備した船をセッカが権力で手配し、海を割り進んでいる。
船内には乗組員の他にわたし達だけ。
フェアリーパンプキンの3名と1匹、シルキ勢は単眼と狸を残した5名、そしてチーム影狼の3名。
合計12人と1匹。
イフリー大陸がナメ腐った行動───爆破を付与した生贄で爆破テロ───をとった上に負傷者だけではなく死者まで出ている以上はこちらも半端な対応をする気はない。
しかしイフリー問題だけが問題ではない。
緊急大陸クエストで外界の侵略者を狩るのも大事な仕事だ。ここを放置すれば面倒な事になるのは容易に予想できる。そしてストレンジャーの方は大規模レイドが必須であり、こちら側は相手が今現在は国となっているので少数で行動した方が現状的に有利だ。
そしてそして、黒幕が【炎塵の女帝】という覚醒種。覚醒した女帝を大人数───レイドで討伐を試みるのは実はリスクが高い。自我、意識がある状態で女帝種の破壊力を持つ存在は戦況を見て的確な判断を自身に下せる。元々女帝、共喰いを行ってまで力を求めた存在が戦略や戦術に疎いワケがない。
過去に覚醒種討伐でレイドを率いた結果、討伐は成功しているがレイドの7割が死亡したとの結果が残っている。最初に死亡したのが全て治癒術師であり、次が治癒術師以外の後衛。
レイドを立て直しが効かない状態に陥らせてから暴れるのが、対多数戦闘時に高い知能を持つ存在が行う常套手段。
レイドという環境もまたマイナスに働く。複数人がいる中で対象が暴れまわる───動き回る事でレイドの崩壊率はグンと高まる。こういった崩壊を立て直すのは可能だが、その隙を狙っての崩壊誘導なので大体はここで終わる。
とまぁ、先人達は色々と記録していてくれたので今回はこの少数精鋭で挑む事に踏み込めた。
レイドは有利有能な戦術のひとつだが、万能ではない、という事だ。
人海戦術を大前提とした場合は別だが、そんな戦術に納得する冒険者はいない。
「イフリーまであと十数分で着くらしいわ」
「技能族の後付けエンジンって凄いね! 船が速いよ」
部屋へ戻ってきたフェアリーパンプキンのひぃたろとプンプン。子供のようにはしゃぐプンプンは置いといて、ひぃたろはパーティ構成の話題に入る。
「ワタポとクゥは一緒だとして、12名。4を3つにするか、3を4つにするか決めましょう」
1パーティ4人を3パーティ作るか、
1パーティ3人を4パーティ作るか。
この違いは結構大きい。
「私達はイフリー大陸を知らないから、シルキ風のやり方が効果的かどうか......」
すっかり赤髪に赤眼で瞼も赤い眠喰のすいみんはどこかモゴモゴと発言する。
「シルキ風? 気になるわね。でもその前にシルキ勢に言っておく事があるわ。自信を持って行動しなさい。小さな発言ひとつとっても、自信無さそうに言ったりするのはそれこそ時間の無駄よ。自分達がシルキ民だから、外の世界を知らないから、妖怪だから、なんて事を気にしているなら今すぐ捨てなさい。産まれや種族なんてスタートラインでもない。今自分が立っている場所がスタートライン。自信を持って進めばいいだけよ」
おぉ、ひぃたろいい事言うじゃん。さすがギルマス......いや違う。産まれや種族なんてスタートライン、か。その言葉をひぃたろが言うからこそ意味がうまれる。
「そう、だね、うん。シルキ風って言っても華組が使っていやり方なんだけど、この場合四人組を三つ作って上陸して三つは別々のルートから本丸を目指す。その間で様々な情報を得たり問題が起こったりする事を予想しての組数だから、何かあった場合や情報で捜査を増やす必要がある場合は、各組からひとりずつ出て集まり新たな組を作る。最終的には三人組が四つって形で行動する」
「なるほど......イレギュラーに対して瞬時に対応出来るのは魅力かもしれないわね」
「シルキではゴリの......妖華モモの能力や妖術で上手く知らせていたけど、私達にはコレがある」
眠喰は新装備であろう防具のポケットから冒険者には必須アイテム、フォンを取り出した。ついでに新型イヤフォンも。
「いいかもしれないな、この新型イヤフォンは4人まで登録出来る。ちょっと機能のおさらいしよう」
カイトもフォンポーチからイヤフォン、固有名【T-Ea4】を取り出したのてわたし達も急ぎ取り出し、機能のおさらいへ。
パーティを組めばパーティメンバーとは常時通話状態となる。
登録はフォンで行える。
使用可能数は4だが一度登録した相手はフォンに残るので変更可能。
登録①は間隔をあけず2回叩く。
登録②は間隔をあけず3回叩く。
登録③は間隔をあけて2回叩く。
登録④は間隔をあけて3回叩く。
受け取りは1秒長押し。
通話切断は通話中に1回叩く。
通話設定はフォンで行う。
フォンに届く通話とT-Ea4に届く通話は別物。
と、なっている。通話設定は登録①〜④全員で通話可能にするか、など。
「シルキ風でパーティを組んで、4パテめのリーダーだけ決めておきましょうメンバーはその時の流れで、登録①〜④をフル活用で通話設定はオール」
『冒険者諸君! イフリーポートまで後20分、諸君を上陸させるポイントまでは10分と言った所だ。準備を済ませて甲板に集まってくれ』
スピーカーから発せられる船長の割れた声。
エンジンつけるまえにスピーカーどうにかしろよ船長......。
「すぐパテを組んで、各パテの目的を決めましょう。先に言っておくけれど今回の相手は今までとは全く違う。おふざけは禁止よ───特にエミリオ」
「わたしかよ。安心しろひぃたろ、炎塵にはわたしも頭にきてるし、そろそろイフリーにも落ち着いてもらわなきゃ面倒だろ」
外界、魔結晶塔、レッドキャップ、クラウン......魔女も活発に動き始めると予想していいだろう。そしてこれはわたし個人が思う邪魔な存在達で、実際は他の種族や組織、外界でも魔結晶を狙うヤツが多数いると見て間違いないだろう。
そんな中でイフリー大陸の強引な行動は面倒でしかない。
そろそろ地界は地界としてまとまってくれなきゃ困るぜ。
「パテを言うわ。リーダーはメンバーを誘ってT-Ea4の登録を済ませましょう」
炎塵の女帝......お前に地界を、イフリー大陸をかき混ぜさせねぇよ。




