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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【女王】
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◇59



ユニオンのリーダーだったロキが犯罪ギルド レッドキャップ と繋がりがあった事を聞かされた。

どこまで深く繋がっていたのかは不明らしいがバリアリバルの情報を一網打尽に出来るユニオンに所属しリーダーの座まで登り詰めたのは始めからレッドキャップに何らかの情報を渡す為だろうと冒険者達は予想している。


全員女性でそれも治癒術師のみで結成されるギルド 白金の橋 のリーダーリピナは興味無い様子でフォンを操作し話に参加しない。

気持ちは解らなくもない。今ここでロキやレッドキャップの話をした所でユニオンが建て直るとは思えないし、裏切られた。と思う冒険者や街の人も大勢いる中でユニオン復活しました!など言った所で信用度はマイナススタートだ。

レイド後にボス戦より気が重い話をするのはわたしも避けたいが...放置しすぎて収集つかない状況になる前に、みんな何らかの手をうつつもりなのだろうか。

レイドに参加した高レベル冒険者とギルドマスターだけを残しゲリュオーン討伐レイドは解散。今ユニオン本部に残っているのは全員名の知れた冒険者という事か。



集会場にクエスト管理、モンスター図鑑やマップデータを作るギルドも傘下に持ち冒険者や街の人々を助けるギルド、マルチェのマスターで皇位持ちのジュジュ。



世界一の情報屋で各国にその名が通る冒険者。特徴強い言葉使いと鋭い勘を持つ皇位情報屋のキューレ。



ギルドのルールや掟を作らず個人が生き生きとしているギルド。ルールや掟を持たないギルドは犯罪者を産み出したりバラバラになりやすいと聞くが、このギルドにその心配は無い。マスターの人柄なのかメンバーも優しく広い心を持つ人間が多い。基本系であって普通ではないギルド 赤い羽のマスター アクロス。



全員女性で全員治癒術師で構成された癒ギルド。レイド等では必ずと言っていい程声掛けられる人気ギルドのマスター リピナ。どこか冷めた雰囲気を持つ巻き髪ロングのお姉さん。



街の人から人気高い傭兵ギルド。クエスト成功率は非常に高く、その半分が街の住民から直接受注したクエスト。どんなクエストでも手を抜かない素敵な傭兵ギルド アクロディアの真っ赤なマスター ルービッド。



キューレから素早く買い取った情報に眼を通し、ここにいる人物と照らし合わせると誰が誰なのかハッキリ解る。さすが世界一の情報屋。

しかし自分の情報も入れてくるとは...あの女め。調子に乗ってるな。


残るは無所属の冒険者でわたしも知る者達なので情報を買う必要はない。

マスクマニアのハコイヌ、状況を楽しむ癖があるセシル、和服装備で心のどこかに余裕を持っている烈風、お笑い要員アスラン、女で男の鍛冶屋ビビ、クールなスーツ姿の格好いい女性 音楽家ユカ。


どの人達もわたしより高いランクの冒険者。

世界樹の事や魔結晶の事なども話しておくべきか?

シケットの事は猫人族が他族と交流を持ち始めるまで出来れば話したくないのだが...。

迷いの中をグルグル回っていると、話題を変えに来た。と言う様にノックが響く。

ジュジュが応じるとドア素早くが開かれ マルチェの上級幹部のセッカが息を荒立てていた。挨拶出来る雰囲気は微塵もない。セッカの瞳は出会った頃に見た 迷い揺れる色。



「デザリア軍と、ドメイライト騎士団が、この街へ向かっています!」





皇都ドメイライト。

この世界で一番大きな大陸にある最先端、繁栄を続ける街。ノムー大陸の首都でドメイライト城や騎士団本部がある段層の街。



帝都デザリア。

ドメイライト王国に何かと噛み付く帝国でこの世界で2番目に大きなイフリー大陸を管理する。ドメイライトは騎士、デザリアは軍と呼ばれているが違いがいまいち解らない。



この2つの大国が長年ウンディー大陸の管理権を求めているのは わたしも知っている。

王国でもない、冒険者達...両国から見れば はぐれ者 の大陸。それがウンディー大陸だ。


犯罪者がうまれる確率がどの大陸よりも圧倒的に高い。誰も管理しない大陸だからこそ自由がある。その自由が世界事情を度々狂わせていた。

両国どちらかがウンディー大陸を手にする事で大きなメリットがうまれる。


まず敵国との間に領土範囲、戦力の差などがうまれる。

ウンディー大陸は両大陸に比べれば小さいが充分な大きさを持ち世界の中心に一番近い位置にある大陸なので騎士団や軍の拠点には最高だろう。

芸術の街や美食の街といった職人達が憧れる街も存在する為、経済を動かす為にも是非ほしい大陸。

そして冒険者の存在。

騎士や軍が迂闊に手を出せなかった理由はこの者達の存在が何より大きい。今や冒険者、ギルドの存在はこの大陸だけのものではなく世界各国まで活動範囲を広げている。

先日わたしが受注した[太陽の産声]はウンディー大陸でのクエストではなかった。騎士団や軍に頼めば報酬金など必要としないが、何かと領土やら権力やらを求めている為お金よりも重い物を失う恐れもある。その分冒険者はお金やらレアアイテムやらを報酬で渡せばそれ以上求めない。

依頼人に必要以上に接触するのは禁止されている為あっさり終われる。

マルチェや情報屋、他にも沢山のギルド冒険者がウンディー大陸以外でも活動し、確かな結果を残している為 それらのギルドを潰す訳にもいかず、下手に手を出せば騎士や軍人レベルの冒険者に返り討ちにされる恐れも。


これらの理由から両国は戦争を仕掛ける事が出来ず、両国が戦争する場合もウンディー大陸の位置、存在がそれを邪魔する。

ウンディー大陸を手に入れ冒険者達やギルドに首輪をつける事で敵国との間に恐ろしいまでの戦力差がうまれる。そうなれば後は時間の問題だ。領土、戦力、経済面でも圧倒的な差を見せつければ上下関係はハッキリする。


長年両国がよだれを垂れ流し欲深い眼を輝かせ狙っていた大陸のある噂が最近流れた。

ウンディー大陸の芯と言える街バリアリバルをまとめていたユニオンが崩壊寸前。その影響は冒険者だけではなく民間人、大陸全土へと広がっている。

このチャンスを逃さず両国は攻めてきたという訳だ。




「一番最悪なパターンたな」


両眼を強く閉じ呟いたジュジュの言葉へキューレが付け足す。


「じゃの。ドメイライトとデザリアがウンディー大陸で小競り合いして勝った方がバリアリバルに入ってくるじゃろな」


「そして...言葉を並べ民間人の心を掴めば、今度はワタシ達が毒素扱い。こうなれば潰されようと首輪をつけようとウンディー大陸の人々は冒険者より国王の言葉を信じる」



ワタポがクチにした 毒素 という言葉が重い。人の言葉でわたし達は簡単に毒へ変わる存在。今そのウイルスを持った人間達がこの大陸、この街へ侵食してきている。


どっちが勝利しようと、結果わたし達 冒険者とギルドは毒素扱い。中和剤として勝利国の首輪を舐めるか、毒に汚染され完全な無法者へと堕ちるか。


「綺麗な街や人に隠れていた悪意が芽を出したか...。私のギルドが両国を迎え撃つ」



真っ赤な女性、アクロディアのマスター ルービッドは意外に短気なのか。それとも大切にしていた街の人達を使おうと企む両国のやり方に腹を立てたのか...両方だろうな。


席を立ちギルドへ戻ろうとするルービッドを他の者が必死に止めるも聞く耳持たず。

本当に両国の兵を相手にするつもりなのか。


「行くって言うならワタシは止めないけど...後始末も綺麗に出来るの?」


ジュジュやアクロスの言葉でも足を止めなかったルービッドがワタポの言葉にピタリと停止し「後始末?」と怒りの色を含んだ声で振り向く。


「冒険者が騎士や軍と争うのは今に始まった事じゃない。でも今回のは例外、ギルドが国に手を出す。この意味がわかる?勝とうが負けようが待ってるのは地獄だよ。その対応、後始末まで考えているならワタシは止めない。考えてないなら今すぐそこでクチを閉じて...座れルービッド」


「ハハハ、ギルドマスターでもない無名の冒険者に何が出来るの!?何も背負ってない人間がクチ出ししないでほしいわ」


「自分しか見えてない人間が先頭に立つよりマシだよ」



今日のワタポは妙に噛み付く。でもワタポの言ってる事は正しい。多分ここでルービッドが出て行き騎士や兵を返り討ちにすれば戦争の火種には充分すぎる。

このルートになればわたし達の負けは確定、かと言って今進んでるルートでもわたし達が不利になる結果が出るだろう。


「自分しか見えてない?じゃあアンタは何が見えてるの?何が出来るの?」


「まだ何も見えないし何も出来ない。だからこうして他の人達と話して見えるモノ出来る事を探してる。これ以上無駄な事に時間を使いたくないし、面倒事を増やさないでほしい」


「そう...なら冒険者のルールで決めましょ。ギルドや冒険者がトラブルになった時に使うルール...アンタも知ってるでしょ?」


「....いいよ、勝った方が言う事を聞く。それでいい?」


「外に出な無名冒険者」


「...みんなは話を進めてて、すぐ戻るから」



頭を少し下げワタポはユニオンを出ていった。

ルービッドの言っていた冒険者のルール...それは 決闘。

お互いの意見が合わず話も進まない状態に陥った時に使える...実力行使の策。

負けた方は勝った方の言う事を聞く。くだらない場面では使えないルールだが今は重要すぎる場面だ。


「うまいわね」


「だね」


妖精と狐が小さく笑い、ワタポの後ろ姿を見て言った。

なにが?と思った瞬間に理解出来た。この勝負はワタポの勝ち。

この場からルービッドを排除し、わたし達は話を進める。

決闘後、結果がどうあっても2人は結果報告に1度ここへ戻ってくる。ルービッドが勝った場合はその後でまた止めればいい。ワタポが勝った場合はそのまま話に参加すればいい。

元騎士隊長で元ギルドマスターだったからこそ両国の狙いにもルービッドの動きの荒さにも気付けたのか。


そう言えば...ロキがレッドキャップのメンバーだと解った時もわたしの考えなしの動きへブレーキをかけてくれたのもワタポだった...ルービッドの方はワタポに任せておけば大丈夫かな。


「んし、わたし達は何をどうすればいいか作戦会議だ!確りついてこいよ!」


「エミリオ、貴様に付いて行ったら全員お亡くなりになるやろ」


「うるせー!お笑い要員は黙ってカロリーオフの物食ってろ!」


「貴様!こんな大勢の前で俺様のお腹事情を明かすなや!あと数センチ腹出てたらメタボだったとか言うなや!」




そこまで言ってないし、それ....わたし知らない情報だったぞアスラン。





ユニオン本部にある無駄に広い中庭。

ここなら誰にも被害はない。

雨に打たれ濡れる赤毛の女性、ギルド アクロディア マスタールービッドが指さし言う。


「無名冒険者ごときが、この私に噛み付くなんてバカを越えてる。無知無謀な無名冒険者さん...後悔させてあげる」


「うん、それじゃ始めよう」



ルービッドはフォンを操作し取り出した武器は真っ赤な剣。ワタシは腰に装備していた灼熱色の剣を。

雨音響くユニオン本部の庭で睨み合う。

無音でぶつかり合う2人の視線に驚き、飛び立った雨鳥の羽音を合図に開戦する。

ルービッドのギルドランクはA、冒険者ランクはA+だっかな。

ギルドランクはギルドメンバーの平均ランクから決定する。と言う事は彼女のギルドにはB+やAのメンバーが多い。

ワタシの冒険者ランクはA...ルービッドの方が1つ上。

この1の差は地味に大きいけど...今自分がA止まりなのかA以上なのか知るにはいい機会だ。



突きで攻めてくるルービッドの剣を強めに弾き返すと、その衝撃を乗せたまま回り、斬り攻撃へ。この動きだけでも戦闘経験値の高さが解る。

斬りを回避して叩く事を狙ったワタシは剣を限界まで引き付ける作戦へ...剣風に含まれる熱を肌が感じた。そして空気が焼ける音と赤い光がワタシを照らす。


「へぇ...今の攻撃を避けるとは...いい動きするねアンタ」


「....炎を纏う剣、特殊効果武具エクストラウェポン



はぁ...。

最近ワタシが戦う相手はみんな特殊効果武具エクストラウェポン持ちなのはどうしてなの。ネフィラも双子座の1人も麻痺だったし、今日は炎を纏う剣、属性武器だし。まぁA+でギルマスの時点で特殊効果武具エクストラウェポン持ちの確率は一気に高まるけど、こんなに装備持ちと遭遇するとデフォに思えてくる...一応レア武器なんだけどなぁ。


ブツブツと心で呟きルービッドの剣を見ると、炎が消えていた。


「炎を纏う...ではなくて、攻撃時に炎を纏う、が正しいのかな?」


「へぇ...本当に凄いよアンタ。今の一撃だけでそこまで見抜くなんてね」



見抜いた所でどうする?

そんな言葉を秘めた瞳でワタシを斬ろうとするルービッド。炎を纏う剣撃は雨の中でも強い赤色を出す。

炎は出せないけど...熱ならワタシの剣も負けていない。



剣が熱を纏う。

雨が刃に触れ蒸発する。

水蒸気の中で燃える炎をワタシは一瞬で焼き斬った。



「...」


「どうする?まだやる?」



上がっていたルービッドの熱を焼き斬る。冷たい雨が温度を下げる中ワタシは返事を待った。

灼熱色の剣は普段通り冷たい鉄色へ戻り、ルービッドの赤い瞳は静かに温度を下げる。


「...参ったよ」


「うん、それじゃ戻ろう」


「待って、アンタ何者...」



なぜそんなに強いのか、今まで何をしていたのか、色々な意味を含んだ言葉へワタシは隠さず答えた。騎士団に所属していた事もギルドマスターだった事も隠さず。しかしその言葉は雨音に邪魔されルービッドの耳には届かない。



「....?」


「ワタポ、冒険者。よろしくね」




過去に何をしていたとか、今さらどうでもいい。

今現在は冒険者として生きている事がワタシの現実でそれ以上の現実はない。



過去を見ても変わらない。

過去を手繰り寄せても変わらない。


だから今を精一杯生きるんだ。

何をどうすればいいのか解らなかったら、みんなで考えるだけ。考えて、考えて、出た答えはきっといい方向へ繋がる。

1人で何でもしようとしていた昔とは....もう違う。



「行こうルービッド、みんな待ってるよ」







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