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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【太陽の産声】
50/759

◇49



弓の戦闘を初めて見た。

飛び道具や魔術を使う相手と戦った事は何度もある。しかし弓を使う相手と戦った事は1度もない。

考えてみれば魔銃を使う相手と戦った事もない。

なんだったかな...弓や銃を好んで使う人の事を...。

記憶の引き出しを荒らしていると大型モニターから司会星霊の声が控え室にいるわたし達にも届く。


「今夜の相手は恐ろしい...恐ろしいぞぉぉっ!これまでの二戦、なんと星霊チームが連敗だっっ!このまま挑戦者の圧勝になるのか...いや!いいや!それは無いでしょう!ここからが十二星座の本気だぁぁぁっ!誰もが期待する十二星座の3人が残っている!ウィザード、ガンナーが敗れた戦い...仲間の仇を!今こそ!!」



そうだ、ガンナーだ。

弓や銃を使う人をガンナーと呼ぶ時もある。

弓だけが集まっていたり、弓使いです。と言う時はアーチャー等と言うがこれも剣士や魔術師と同じ自分が気に入る様に言っても問題ない事。

わたしが使う剣....細剣。これを好んで使う人をフェンサー等と呼ぶがわたしはフェンサーと呼ばれる事が嫌で名乗った事はない。

両手持ちの大剣を使う人をウォリアーや重剣士と呼ぶ人もいる。結果的に伝わるなら何でもいいって事だ。



「さっきの射手座...強かったのに残っている3人はもっと強いって事かな?」


治癒術一旦止め魔力回復ポーションを飲みつつモニターを見ていたワタポが眉尻を上げて言う。ワタポのあの表情は...怒ってる時の表情だ。


「多分...天秤座 射手座にょりも、あの3人は強いニャ」


ケットシーのガンナー、またはアーチャーゆりぽよ が痛む身体を揺らし言う。

ゆりぽよも相当強い。ワタポの眼があっても見えない速度で放たれた矢...敏捷性は勿論、判断力、そして体術には驚かされた。

体術と言ってもスキル系ではなく基本的な身体能力の高さに、だ。

身軽にも程がある。その分 防御力が低いのか?ゆりぽよが対人戦闘の経験値を稼げば恐ろしいアーチャーになる気がした。


本当に...どうしてわたしが出会う相手はみんなわたし以上なんだよ。


「謎座2人と双子座、ね。でも大丈夫っしょ?ハロルドは強い。プーもワタポも強い」


相手が強いとしても、こちらの3人も相当強い。ハロルドとプーの事はまだ詳しく知らないけどモンスターと戦闘になった時2人は表情1つ変えず無駄な動きもせず、わたしや他のメンバーの位置と動きまで把握し、戦闘していた。

戦闘慣れ。こればかりは回数をこなし身に付くモノだ。

同じ歳で 恐ろしい程の戦闘慣れを見せた2人だ。何の心配もないだろう。

そして、ここで今治癒術を使っているワタポ。ワタポも心配する必要がない。


わたしが勝てた時点で、もう勝利は決定している様なものだ。



わたし達は無言でモニターを見つめる。

戦場、ラインの奥へ足を踏み込んだハロルドの表情はいつもと変わらない。相手が誰なのか解らないのに自ら出場すると言って出ていった...ここで双子や金髪男が出てきたらどうするつもりだ?


わたし達の心配を気にもしていない様子でハロルドは澄んだ音を奏で抜刀。芸術的、または幻想的な刀身を持つ剣を露にした。

月明かりが降り注ぐ場所で芸術的な彫刻を刻む薄ピンク色の刀身が星座達へ向けられる。ローズクォーツの長髪が夜風に踊る中、整った顔で小さく笑い剣先を揺らした。

まるで 相手を挑発するかの様に剣先を揺らし笑う半妖精ハーフエルフ

瞳の先、刀身の先には銀髪の星座。


この辺りで司会が叫ぶだろうと思っていたが、司会星霊はクチをだらしなく開いたままハロルドを見つめフリーズしている。

司会も観客も十二星座もハロルドに眼を奪われている。一瞬時が止まったかと思う程、静まり返る闘技場。

その静寂を破る様に1歩、また1歩と足音が響き、ラインを越え戦場へ現れる銀髪の女性星座。


相手もハロルドに負けない程の顔立ち。同じ様に剣をゆっくり抜き盾を構える。


夜風に靡くローズクォーツの長髪とシルバーのポニーテールが揺れる。無言で視線をぶつけ合う2人。風が通り過ぎるとお互いの刀身が無色光を放ち、白く艶やかな床を蹴る。



中央で2つの光が激しくクロスした。





視線、踏み込み、両手で握られた剣、刀身が進むライン、全てが同じ。


右斜め上からスピードを乗せて振り下ろされる剣。

三連斬り剣術 ライトニュール。


両手で剣を強く握り振っているのは単純に威力を底上げする為。初撃時は両手で剣を持ち攻撃する事で相手のガードを崩せる事がある。

それが連続スキルなら尚更だ。


銀髪の星座は私と全く同じ狙いで同じタイミングで同じ剣術を選んだ。

威力もスピードも互角。

ライトニュールは相殺という結果で終わる。

ここでただ剣術終了....無色光が消えるのを待っていればディレイに襲われる。

それが剣術の終わりで、強力なスキルを使った代償として当たり前の硬直。こればかりは避けられない。しかし...剣術終了後の硬直、スキル後のディレイを先伸ばしにする事は可能。


両手で握っていた剣を片手持ちへ、スキルディレイ...剣が重くなる前に顔の高さまで剣を運ぶ。すると消えそうだった無色光が強く鋭く。

突撃系突き剣術 ラント。

これで追撃と同時に距離を取るも撃ち出された剣撃はまたも同種 同時、お互いの刀身が撫で合う様に重なり、視線をぶつけ合い通過した。

ここでお互い先伸ばしにしていたディレイに襲われる。ずっしり重くなる剣、剣を手離し次の動きへ入りたくてもその命令すら遮断される。

これが剣術を使った時の代償...と言えば大袈裟に思えるが強力な攻撃の対価と言えば納得できる。

剣を、武器を手離す事は出来ない。重い武器で自由に動く事も出来ない。

小距離の移動や回避は可能だが今相手も私と全く同じディレイ状態。移動も回避も必要ない。

距離を詰めたり、武器や体術での追撃はディレイ中不可能。しかし1つだけ可能な攻撃、または防御が存在する。

それが 魔術。

私達は魔女の様に自由な動きの中で詠唱する事は不可能。停止している時だけ詠唱可能な生き物。ディレイが終わるのをそのまま待つならばそれもいい。ただ...私はこの瞬間も攻撃する事を選ぶ。


素早くクチを動かし魔女語を、魔術を発動する為の詠唱へ入る。

エミリオの様に省略系では魔術は発動しない。1文字も余さずキッチリ詠み唱える事で魔術の使用が許される。


光属性魔術 ホーリーアロー。

光の魔方陣が展開され魔方陣が光の矢へ姿形を変え、放たれる。

相手は魔術を詠唱している様子は無い。ディレイもまだ終わらない。初撃ダメージはもらった。


確実にヒットすると思っていた私の視界を染める光。魔術の光ではなく無色の光を纏う盾...あれは防御術。


迂闊だった。

盾を装備している者は必ず、防御術を使用してくる。

剣等、武器でも防御術は使用でき、武器専用の防御術も存在する。しかしそれはあくまでも防御。武器は攻撃する為のモノであり、防御術を好んで使う者はまず居ない。

その逆で、盾にも攻撃術は存在するがこちらも盾での攻撃よりも盾での防御術を使うのが本来の使い方。

その防御術まで気が回らなかった。

1度歯を噛むも、私は魔術を、相手は防御術。

防がれればそれはそれだ。こちらにマイナスはない。


私の予想を裏切る事なく、3本の光の矢は盾に防がれ消滅。ここでお互いのディレイが終了する。相手はどんな動きをとるか、何を仕掛けてくるか。硬直終了後の駆け引きは戦闘を安全かつ有利に進めるには大切...だが、私は迷わず前へ、相手を目指し直進する。

剣術で開いた距離を一気に詰め考える暇も与える事なく剣を振る。


盾に受け止められる衝撃音、剣と剣がぶつかる斬撃音が星霊界の夜を包む。



「す、凄すぎるっっっ!何者なんだあの女性!!十二星座の天才剣士、乙女座のヴァルア様と互角に渡り合う実力...実力だけではないっ!容貌までもが互角だぁぁぁ!激しい剣撃、攻防の中でも美しく冷たい表情は変わらないぃっ!星霊?人間?...いいや、2人の妖精が今我々の前で激しくぶつかり合っている!星霊界でこんなにも力強く、美しい戦いを見られるとは...もう、もう実況なんてやってられないぃぃぃぃっ!!」



仕事放棄を高らかと宣言する声さえも斬り捨て剣を振る。ここで1歩でも引けば捕らえられるだろう.....自分と同等または上の相手と戦える数少ないチャンス。今の自分がどのレベルなのか確認でき、何が足りないのかを知れるチャンス。こんな時に引くという選択肢は存在しない。


相手の剣を弾き飛ばす勢いで降り下ろした剣は空気を鋭く斬り、ぶつかり合った。

お互い1歩も引く気は無いと言い合う様な鍔せり合い。

幻想的または芸術的な剣 [メイリア ライト] を両手で強く握り押す。グッと姿勢が下がった瞬間に相手の盾が無色の光を纏った。あれは防御ではなく盾を使った攻撃術。

シールドバッシュ。

ダメージ自体は無いに等しいが衝撃が強く、下手な武器で受け止めると武器破壊の恐れも。

シールドバッシュの一番厄介な点は ヒットした場所によってはスタン状態に陥る点だ。

ここは無理に足掻かず...盾が身体に触れる瞬間を逃さず後方へ距離を。


この時相手は一瞬、それも小さな変化だったが確かに表情を変えた。口角が1センチ程上がった。

私のバッシュへの対応に驚いたのならば口角を上げる...笑う等ありえない。この状況で笑う理由は1つ。狙い通りまたは予想通りに事が進んだ瞬間だけだ。

銀髪の乙女座は左足を軸に前へ反転、右足を強く踏み込んだ。反転した速度等を剣に乗せ、その剣は無色に発光する...剣術だ。

バッシュのディレイで盾が、左腕が重くなハズ。ステップで開いた距離を詰め攻撃出きるとすれば突進系剣術。しかしディレイタイムでの突進系スキルは本来の速度を失う......違う、あの構え、振りは突進系特有のモノではない。


本来、突進系直進系の剣術は突き。斬りの場合は振り下ろす直前で剣は停止している。しかし今まさに相手は剣を振り...、


「...ッ!!?」


咄嗟に防御、剣で受け止める形を作った。その剣から伝わる重さと身体を突き抜ける衝撃が私を激しく押し飛ばす。

逆らう事も出来ず観客席の壁へ一気に叩きつけられた。


全身の骨を砕く様な痛みに堪え、謎の剣術の範囲等を予想する事よりも...場外は負けになるのかを必死に考える。



「こ、これは飛ぶ斬撃!数多の挑戦者を一瞬で流れ星の如く吹き飛ばしてきたヴァルア様お得意の一撃必殺!初見では反応すら出来ない剣術!ガードしていたとしても場外の地に身体が触れた時点で敗北!この勝負は完全に決まったぁぁぁ!!」





「プー!!」


ひぃちゃんの試合を見ていたボクを後ろから呼ぶ声。

ボクの事を プー と呼ぶのは1人しかいない。


「エミちゃん!ゆりぽよの怪我はもう平気なの?」


「今ワタポが治癒ってる...、それよりハロルドやばくない!?」


急ぎここへ向かったのか荒い息を整えつつ喋るエミちゃんへ答える。


「大丈夫だよ、今の剣術...見た事ないけど飛ぶ斬撃っぽかった。放出系剣術...かな?」



剣術と言っても種類は沢山存在する。

単発、連続、突進、放出...他にも種類があり、そこに効果名やらがつく。

例えば 単発系重剣術 や 連続系広範囲剣術、ゆりぽよが使ったのは広範囲高威力上級弓術。

高威力は重さはそこまで無いけど速度は重よりも速く、一撃の威力は凄まじい事を意味する。

重は一撃が重くなる分、速度は少し低下する。高威力重剣術 となればもう面倒なスキルだ。ガードすれば崩されヒットすれば高い威力と重い衝撃に襲われる....等々と様々な種類の剣術が星の数程存在する。

今、あの人が使った剣術...飛ぶ斬撃。速度と威力から考えて 単発系放出重剣術 と言った所かな?

見た事ないし相当高レベルの剣術か...オリジナル剣術かは不明だけど。


「大丈夫って、今モロに受けてたよ!?」


「あ、モニターで見てたんだね! うん、でも大丈夫だよ。斬撃は剣で受け止めてたし斬られてないよ」


それにしてもあの人...乙女座だったかな?相当強い。

他の冒険者やギルドと深く関わっていないけど、あの人レベルの人間もゴロゴロ存在するのかな?...あの人以上 も 存在する...気がする。


「...? プーどした?笑ってるけど」


「え? なんでもないよ」


今以上に強く。

あの人以上に強く。

もっと強く。

ボクは強くなりたい。だからこそ強い人と出会って戦って、凄く強くなったらボクは...。



「こ、これは飛ぶ斬撃!数多の挑戦者を一瞬で流れ星の如く吹き飛ばしてきたヴァルア様お得意の一撃必殺!初見では反応すら出来ない剣術!ガードしていたとしても場外の地に身体が触れた時点で敗北!この勝負は完全に決まったぁぁぁ!!」



思い出したかの様に司会が実況を始めた。

飛ぶ斬撃なのは間違いないみたい...って、


「「 場外は負けなの!? 」」


聞いてないよそんなルール!

大事な事はもっと早めに言ってもらわないと困るよ!


「おい星屑!ルール隠すとかズルすぎだしょ、罰として今のな...」


「大丈夫だよエミちゃん!」


「は?!大丈夫じゃないしょ!どー見ても場外判定炸裂するしょコレ!今のなしにするべきだしょ!」



ボクだったら もしかすると場外ルールの対象だったかも...んや解んないけど、、でも ひぃちゃんなら大丈夫。


「大丈夫だから、見てて」


瓦礫の落ちる音と衝撃時にひぃちゃんを包み込んだ砂煙。

そして微かに揺れる小さな光。


耳を澄ませば 空高くから届く音にボクは誰よりも早く反応し空を見上げる。

ボクを見てエミちゃんが、次に少し遅れて乙女座、そして全員が夜空を見上げた。



「あれはこの世界でフェアリー種だけが使える魔術でその中でも妖精エルフのが一番綺麗なんだ。魔術と言っても詠唱はいらないんだけどね。発動中は魔力を消費し続けるし他の魔術が使えなくなるんだけど.....、空を自由に飛ぶ ってどんな気分なんだろうね?」



ボクはそう言ってエミちゃんを見てみると、ボクの言葉なんて耳に届いていない様子。

夜空の一点を見つめて小さく笑って呟いた。


「エアリアル...初めて見た」


「フェアリー種だけが使える翼、羽根を造る魔術...造形魔法 エアリアル。これがひぃちゃんの奥の手の1つさ」



薄いピンク色の微粒子を夜空に溢しホバリングする姿はまさに妖精。

観客達がザワつき始めた頃、ひぃちゃんは空中で膝を曲げ身体を縮める。



「いってらっしゃーい」



そう呟きボクはひぃちゃんへブイサインを送った。

4枚の羽根を鋭く畳み、一気に空気を蹴る様に...幻想的に輝く微粒子を夜空に残しひぃちゃんはすぐに戦場へ戻った。





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