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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【クラウン】
274/759

◇273



「......この雨はどうして降ってると思う?」


雨空を見上げながらフローはウンディー大陸の女王【セツカ】へ質問するように問題を出した。


「アイレインの空は特種なマナが濃く、晴れる日は滅多にありません」


「そだねぇ~その特種なマナってのは何だと思う?」


「.....霧山のマナ?」


アイレインには年中霧を吐き出し纏う山がある。ピョンジャピョツジャが生息していた危険指定の【プリュイ山】が。


「残念、不正解~。プリュイ山の特種な霧も、ここの雨も、ウンディーの気温や湿度も全部───四大シダイの影響だよ」


空から視線を戻したフローは四大というワードをクチにした。聞きなれないワードに半数以上が理解できないという表情を浮かべる中、瑠璃狼のカイトと錬金銃士のだっぷーは表情を鋭くした。


「ウンディー大陸のウンディーは、水の四大ウンディーネからつけられた名前。ノムーは地の四大ノーム。イフリーは火の四大イフリート。シルキは風の四大シルフからとられた名前。地水火風の四大の特性に合った大陸になってるでしょ?」


掴めない雰囲気はそのままだが、先程からのふざけた態度は無く、口癖のようだった ~わさ も消えていた。

グルグル眼鏡を嫌な色に輝かせ、フローは全員の反応を確認するように見渡す。

四大の特性という言葉に各々が記憶を探る。


ウンディー大陸は他大陸よりも気温が低く、一番雨が多い。霧山や湖、氷山など水系のエリアも多数存在している。


ノムー大陸は一番広く、建物などもノムーで採掘される石材が使われている。大陸の土台───土地は他大陸よりも優れ、洞窟や山脈が多い。


イフリー大陸は四大陸でずば抜けた高気温、厳しい環境。砂漠や荒野、火山も多く、火山では特種な鉱物が採掘される。


シルキ大陸は謎に包まれている。しかし過去にシルキへ渡った者が残した情報や、シルキから物資を送り届けてくる者の話だと、風が吹く大陸だと聞く。


「なんとなく、四大の属性、特性にあった大陸に仕上がってると思うでしょ? それは四大がそうしてるだけ───そこにみーんなが寄生してるだけナリ」


雰囲気も口調も戻ったフローは、グヒヒと笑い始めた。


「........何が言いたいのですか?」


セツカが代表としてフローとの会話を続け、その会話の中から何か拾えないかとキューレはピーピングスキルを全開にし、聞き耳を研ぎ澄ます。


「四大は各大陸で眠ってる。わたしはそれが欲しいのだよウンディーの女王様」


「眠ってる? おとぎ話の中では確かにそういう風に書かれていますが、それが現実で実際に四大が存在していると?」


「そうだよねぇ~そうなるよねぇ~。んでも、そこにいる狼男とホムンクルスは知ってるよね? シ・ダ・イ」


グルグル眼鏡のピエロはキシシと歯を鳴らすような笑い声をあげ【カイト】と【だっぷー】を指差し言った。だっぷーの事を “ホムンクルス” と。


「.....ホムンクルス? だぷちゃんが?」


意外にもいち早く反応したのは美食の街【アルコルード】でお弁当屋さんを営む【しし】だった。ポーションなどの消耗品も生産、販売しているしし。同じく消耗品などの生産をしているだっぷー。性格こそ似ていないが、同じ生産者として気になる存在だったのか、ししはだっぷーを見て眼を丸くする。


「あぷりこ......今はだっぷーか。その娘ちゃんはイフリー大陸で産まれた本物のホムンクルスだわさ。四大───イフリートを叩き起こすために作られたフラスコなしでも生きられる高い適応力と、自己再生能力を持ったホムンクルス。適応力と再生力を盛ったから不老不死って部分がカットされてるけどねん。して.....お前は しし だったかい? チミが使ってる便利な便利な高級品! 【合成ポット】を作ったのはだっぷーの前のホムンクルス【あぷりこ】だわさ。まぁ.....あぷりこ も だっぷー も同じなんだけどもね」


ペラペラと語るフローは勢いを緩めず、すぐに次の話題へ飛ぶ。


「でなでな、わたしはクラウンとして大昔から、そりゃもうチミ達が生まれる前から走り回ってたんですよ! ビックリした? こう見えて大人なんですわよあちし。ウフ」


「......四大だとか、ホムンクルスだとか、年齢だとか、そんな事どうでもいいわ。クラウンの目的は何なの? 楽しげに踊りたいだけなら別に邪魔したりしないわよ? 迷惑さえかけなければね」


黙っていた半妖精の【ひぃたろ】が深い部分へ切り込むように発言すると、フローはニヤリと笑った。


「そろそろ切り込んでくる頃だと思ったわさ。そういう部分は母親似だねぇ~半妖精の半女帝ちゃん」


「! ───お前、何を知ってる?」


「全部知っとるでぇ~! だって双子魔結晶ジェメッリの実験も、 純妖精エルフベースの女帝も、裏の裏で糸を引いてたのは全部わたしだもん! てへ、自分で言うと照れますな」


「───ッ!」


半妖精は剣を取り一歩踏み込むと眼の前に虹色の空間が突然開かれ、数秒前に居た位置に出るよう、空間移動させられた。


「ナーイス、空間ピエロ!」


赤眼ピエロ───【ダプネ】が素早く高度な空間魔法を使い、半妖精が反応出来ない距離に空間を開き前屈みだった半妖精は空間へ、しかしすぐに空間から出し、元居た位置へと返すだけの阻害空間。


「まぁまぁ落ち着きなさいって。今うちのピエロちゃんがやらなかったらお前グチャグチャだったよ? さっき言ったじゃん、次は圧し潰すよって」


「ひぃちゃん落ち着いて。アイツのペースに乗ると本当に危ないよ」


半妖精の隣にいる魅狐【プンプン】は、半妖精を落ち着かせるため言った。両義手の白黒騎士【ワタポ】も歩みより、半妖精はフローを睨み舌打ちしつつも剣を鞘へ戻した。


「おぉ、おぉぉ~! お狐様と蝶騎士様! あれ?.....いいのかい? 魅狐族ミコを殲滅させたのは人間だぞ? 竜騎士を辺境へ追いやったのも、混合種キメラ能力結晶ディアスター を作ってたのも人間だぞ? それに蝶騎士様、そこにいるノムー王は人工魔結晶の素材にチミの故郷を使うことを許したヤツだぞい? あ、もういいのかそんな事。こりゃ失礼! いらん事ゆーてもーたナリ。許せサスケ」


今度の挑発対象はプンプンとワタポ、ふたりの過去を刺激するような言葉を並べニヤニヤするフローだったが、ふたりは、


「凄く気になる話だけど、ボク達は」

「自分で調べて自分で知ってくから大丈夫」


フローの挑発に乗る事なく会話を終わらせる。


「ありゃま、もう少し興味もってくれれば話すのも楽しいんだけどねん......そんな風に言われたら 邪魔おうえんしたくなっちゃう! 自分でしっかり知れるように頑張るんだぞ若者!」


うんうん、と頷く仕草をするフローへ半妖精は話を戻す。


「クラウンの目的は? まだ聞いてないんだけど」


「お、こりゃ失礼! そーゆー話だったわさ。クラウンってか......わたしの目的は大きく言えば “遊びたいだけ” ナリ。でもひとり遊びってつまんないじゃん? だからクラウンを作ってみーんなで遊ぼうって思ったの。素敵な考えでしょ? 仲良くしてね」


「───黙って聞いてたけど、さっきから掴めない事ばかりだ。遊ぶって何して遊ぶの? 遊ぶにしても限度があるのはわかってる? 四大の話は必要だったの? 今回アイレインに来た目的は? 昔話なんかよりも、この辺りを詳しく話してもらいたいものね」


黒赤の瞳を持つ後天性 悪魔の【ナナミ】は半妖精以上に切り込んだ聞き方をする。吸血鬼や天使、猫人族がクチを開こうとするも、それを止めるように前へ出た後天性悪魔は昔話で挑発を繰り返されても話が進まないと踏み、自ら切り込んだ。


「悪魔ちゃん! わたしはチミに個人的興味があるわさ!」


「そんなのも今いらないから、早く話を進めてもらえる?」


「あいやー! フラれちゃった.......まぁ、そろそろ進めますかい───この世界は楽しい。地界、外界、天界、そしてあんまり知られていない【冥界】っていうオモチャ箱があって、人間や魔女、天使.....色々な種族のオモチャが詰まってる。わたしはこの綺麗に整ったオモチャ箱をひっくり返して、オモチャを全部出して、遊びたいの。そのために大昔から準備をしてた。わたしにはオモチャ箱がパンドラの箱にしか見えなくてねぇー。そしてそろそろ準備が終わるから、遊ぼうかなって」


「.......準備?」


悪魔や半妖精を制し、セツカが前へ。


「そ。好みのオモチャを用意したり、自分で使いたいオモチャを用意したり。他人が綺麗に整えたモノを端からグッチャグチャにして遊ぶのって最高じゃない?」


「.....何を言ってるいるの?」


「四大陸は不安定な土台の中でも綺麗にバランスを保ってる。ここ最近は種族同士も不安定ながら綺麗に。幸せそうに、楽しそうに、お互いがお互いを気にかけて。そういうのをグチャグチャにして遊びたい、楽しみたい。仲良しが喧嘩するのを見て楽しんだり、無茶な事を必死でやろうとしてる人を見て馬鹿にしたり、つまらない様ならわたしが外から横槍を刺す。そうやって綺麗なモノを徐々に徐々に壊して、最後はひっくり返したい」


フローの言葉を聞いたセツカは気付く。

クラウンは、グルグル目玉のピエロ【ジョーカー】は、何かを憎んで動いてるワケでも何かを変えたくて動いてるワケでもなく、ただ本当に自分が楽しめればそれでいいのだと。

そしてそれが一番悪で一番厄介な存在だと。


「必死に変えようとして、ぶつかり合って和解して、一緒により良い世界にしようと生きてる者達をオモチャ? 遊びたい? 壊したい? そんな事許されると思っているの?」


「誰が許さないの? それに、許されないからやらない、なーんて選択肢わたしの中にはないわさ。止めたきゃ止めなされ。それもわたしから見れば楽しい遊びのひとつだし、大歓迎ナリ」


「......人を何だと思っているの」


「大事な大事な───オモチャ。壊れないように頑張ってね?」


独特な雰囲気を一瞬溢れさせたフローはひらりと跳び仲間のピエロの前へ。


「わたし達はこれから、チミ達と遊ぶための新しいオモチャを手に入れるため頑張りますわい! そのオモチャが何なのか特別教えてあげるナリ! それは.......四大、遺物、特異個体に色々な魔結晶、黄金魔結晶も欲しいなぁ。そして愉快な仲間達も! どんな遊びをするのか気になるよね気になるよね!? だから本日は特別に体験させてあげるわさ!」


フローは楽しげな大声で言い、指をパチンと鳴らした。するとピエロメイクが崩れ落ち、【フロー】【ダプネ】【リリス】の存在が明らかになる。


「ネクロフィリアで人形操師で 愛人形ラブドールなリリスちゃん!......はバレてましたな。んで、この子はダプネちゃん! 魔女やで魔女やで~! そしてわたしはフローさん! ある時は猫人族になり、ある時は人間の研究者になり、他にも色々な存在になってチミ達と絡んだ事もあったかね? ちなみにわたしも魔女ね」


そう言い、得意の変彩魔法で姿を何度も変えて見せるフロー。ボサボサ頭の猫人族や、ボサボサ黒髪の研究者、悪魔や騎士、貴族や商人だったりと様々な種族と顔を見せる。各々知る顔もあり、驚きの表情を浮かべる中でフローは普段の姿、ボサボサ青髪の魔女になり、


「そんじゃお遊び体験、ゆっくり楽しんでくださいまし! プ、プレゼント......頑張って.....選んだの.....。よ、喜んでくれると、嬉しいなぁ.....。 んじゃ、ばいに!」


最後の最後までふざけ倒したフローは上空に空間魔法を展開させ、ダプネ、リリスと共に一瞬で姿を消した。


展開された空間魔法からはフローが用意したプレゼントとやらが落下。全身をビリビリと刺す異質な雰囲気、一瞬でアイレインに広がる息苦しく濃いマナと魔力を持つ───特異個体。


「なんだあれ.....」


「おいヤバくないか!?」


大勢の者達が焦りざわつく中、セツカは全員へ戦闘準備を命じた。危険なモンスターや犯罪者とやりあった事のあるウンディーの冒険者数名、ノムーの騎士数名、イフリーの騎士数名は驚きつつも落ち着いて戦闘準備を済ませる。


「この感じ...........女帝、だ」


両義手を露にしている白黒の騎士ワタポは地面に落ちた影を見て呟くと、さらに周囲はざわつく。

女帝───同種族を喰い力をつけたものの末路。SSランク指定の特異個体。


「何ベースの女帝かで行動や特性が変わるわよ。まずはそこを見極めないと───」


半妖精のひぃたろが妖精の秘剣を構え、女帝を睨む。


謎の女帝が上空の空間から落下し既に3分が経過するも、未だ動きを見せない。セツカがこちら側から仕掛けるべきか、と迷っていると、教会から走り続けていたリピナが到着する。


「リピナ......すみません、すぐに戦闘準備をお願いします」


セツカはリピナの精神面を気にするも、この状況でヒーラーの存在は大きい。それがリピナともなればメンバーの安心感も増し、落ち着きも生まれる。


リピナは息を整えつつ、対象と思われる何かを見る。


「.......、え」


まだ整っていない息を鋭く吸い込むほど、リピナは眼の前の現実を疑った。

そんなリピナの小さな声を聞いた女帝はゆっくりと身体を起こす。


赤茶色の肌と同色の髪、六本の腕。眼球には瞳がいくつもありギョロギョロと忙しく動く。異形とも言える風貌を持つ女帝は───


「ァァ.....ピァ.....」


反響する悲しい声で、何かをクチにした。


「やだ.....嘘でしょ.....嘘.........ルビー」



異形な姿を持つ【雨の女帝 アイレイン】は無理矢理フローが作り出した女帝。そのベースは人間【ルービッド】だった。








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