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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【クラウン】
260/759

◇259



真っ直ぐワタシを見る鮮やかな朱色に染まる瞳は、普段と変わらない雰囲気だった。


「プンちゃ、今.....誰って」


「うん。みんなボクを知ってるみたいだけど、ボクはみんなの事を知らないんだ」


口調、声の質もプンちゃそのものだった。でも全く違う存在にも思えた。今まで見た事のないほど綺麗な銀色に染まる毛、ワタシや他の人を見て首を傾げるプンちゃに嘘は感じない。そもそも今の状況でみんなを忘れちゃった様な嘘を付く意味もないし、プンちゃは嘘をつかない。


「みんなごめんね。ボクはみんなの事を知らない......のか、思い出せないのか......それもわからない。でも今はそんな事重要じゃないんだ」


「───そんな事?」


ワタシの耳にその言葉が妙に残った。


「うん。今ボクにとって大事な事はリリスを探して殺す事と、モモカを見つけて殺す事なんだ。だから、行くね」


「モモカちゃを.......殺す?」


「うん。だから邪魔しないでもらえると嬉しいな」


「......邪魔?」



違う、違う違う。

今ワタシの前にいるプンちゃは、ワタシの知るプンちゃじゃない。

妹を探して殺す、その邪魔をしないでほしい、プンちゃはそんな事絶対思ってない。誰よりも妹を大切に思っているから傷付けられなくて、どんな小さな事でも誰かの力になれるなら全力で力を貸す、それがプンプンだ。



「プンちゃ......ひぃちゃが今、大怪我してるんだ。ししちゃが助けてくれて今のところ命に別状はないけど.....凄い怪我でね。早くヒーラーや医者に診てもらわないといけないんだ」


「......ひぃちゃ?」


「うん。それと.....今ここに居ないって事は多分エミちゃにも何かあったのかも。さっき魔女の魔力が広がったしさ」


それに、クラウンやレッドキャップもこの街にいる。

いつから存在しているのかも知らないクラウン、迷惑でしかないレッドキャップ、放置すると地界は滅茶苦茶にされそうで、平凡で大切な日常を守りたくてみんな集まったんだよ。クラウンやレッドキャップに、自分達の日常を奪われたくないから。

それで戦って、死んでしまった人達もいる。それでもクラウンの実態や目的も、レッドキャップが何でこの街に来たのかもわかっていない状況で、まだ何も終わってない。


「そんな時にプンちゃは.........お前は何をやってるんだよッ」



自分でも驚いた。

泣きそうな程、怒りが溢れたのはあの日以来......故郷が潰された日以来なかったから。


それ程までにワタシはプンちゃを、みんなを、今の世界を大切に思ってるんだな、と確認できた。



───今度は守るよ。貴女ワタシが大切だと思ってるモノを。全部。


うん。もう泣いてばかりの力ない子供じゃない。今の自分ワタシ達に出きる事を全部やって、全部守る。プンちゃも。



『「 プンちゃ 」』


「.......なに?」


『「 少し休みなね 」』





ワタポの瞳に白と黒の円が描かれた。右の瞳は黒が外側で白が内側。左の瞳は白が外側で黒が内側。白黒の円は魅狐を捉え、離さない。


『「 みんな.....ごめん。少し力貸してくれると助かる 」』


ワタポは申し訳なさそうな声で、集まった者達に言った。

昔のワタポ───ドメイライト騎士のヒロ、蝶ギルドのマスター マカオンならば今の状況で他人に頼るなど有り得なかっただろう。しかし今は、昔とは違う。


「よし、私と猫人族はフェアリーパンプキンのワタポさんに従おう!」


音楽家ユカは指をパチンと鳴らし言った。猫人族のゆりぽよ、リナ、そして るーもワタポを見て頷く。


「私も手伝うよおー!」


「俺も何か出来る事があるなら手を貸すよ」


銃の特種魔弾ウルフバレットを装填しただっぷーと、フォンを素早く操作しポーチへ収納したカイトが声をあげ、


「私も! ほらマユッキーも!」


「いいデスよぉ、楽しそうデスし」


息を切らす天使と、小さく笑う吸血鬼もワタポに手を貸す事を選んだ。



『「 みんな、ありがとう 」』





「おいおいおいぃ~.....面白くない展開じゃんかよ~」


空間から覗いていたグルグル眼鏡は深い溜め息を吐き出して嘆く。


「もっと殺したり殺されたり殺し合ったりしてくれなきゃ面白くないってー」


フローはワタポ達がプンプンをSSレートの討伐対象と判断し、剣を向ける事を望んでいたがワタポは能力ディアについてフローの予想を越える知識を持っていた。まだプンプンは呑まれていない、と判断できるだけの知識を。


「......リリスちゃんや」


「ん? どう、した、の?」


指先を縫い繋ぐリリスはフローへ返事をしつつ、黒い糸を走らせる。


「それあと何分かかる?」


「あと、10、秒」


「おぉ、そりゃいいな。それ終わったら───」


フローは言葉を一旦切り、空中に円を描くように指を大きく回し、隙間系魔術を繋ぎ、円の中へ手を入れ何かを引っ張り出した。


「───これあげっから、白黒の騎士と金銀の魅狐 以外の相手よろしくナリ」


引き摺り取り出された物は大きな革袋。それをフローはリリスの前まで引き摺り、グヒヒと笑った。


「.....、これ、死体」


「正解ナリ~! そこらの雑魚とはひと味もふた味も違うレアモノだよ」


革袋の中にはバラバラになった死体が。

指を縫い終えたリリスはそれらを見てゾクゾクと震え、毒を溶かしたような甘い笑顔を浮かべる。


「まだまだ沢山あるぞー! それ組み立てて使ってみんしゃい。殺せそうなら邪魔な外野殺していいゾヨ」


「フフフ、素敵」


「白黒と金銀はダメだぞ! あのふたりは殺し合ってからどっちかに死んでもらいたいし」


フローのグヒヒ、リリスのフフフが妙に絡み合う中でもダプネは空間の先───エミリオが居るであろう先を見詰めたまま動かなかった。





フォンに届いたメッセージを開き、キューレは言う。


「さっきの雷は魅狐ミコさんで間違いないらしいのじゃ」


カイトは見たままの状況を───雷は狐の子だった、少し様子がおかしいみたいだ───キューレへ送信していた。


キューレも鳴き響く落雷の原因はプンプンではないか? と予想していて、プンプンの能力を知る者も同じ予想をし、心配が湧く。


「......ここで俺が単独行動に出たら、みんなはどうする?」


プンプンを心配するセツカを見て、アスランは発言した。

その意図をすぐに汲み取ったアクロスとジュジュは同時に、


「「 追いかけて連れ戻す 」」


ここでキューレもピンときたのかクチを挟む。


「そじゃのぉ、さすがに単独での行動は今許されん。ウチも追いかけて連れ戻すに1票じゃ」


次はお前の番だぞ、と言わんばかりの視線をキューレはセツカへ送り、何かに気付いたセツカがクチを開こうとした瞬間、アスランは───、


「それじゃ、連れ戻しを頼むわ」


と発言し、教会を出てプンプンの元へ向かった。


「アスラン......ッ、単独で動くなど許しがたい、ウンディーの者は私と共にアスランを追い、連れ戻します!」


あくまでもアスランは単独で走った。ここで無視するのは簡単だが、追う事を選んだセツカへビルウォールは黙っているハズもなく。


「ふざけるな! たったひとり見捨てればいいだろう! 単独で走り単独で死ぬ、それでいいだろう!」


「ウンディー大陸は人を見捨てたりしません。これは大陸のルールなので私自らが破るワケにもいきません」


「うむ、ここの指揮はウンディーに任せている。この場合は我々ノムーもウンディーのルールを守るべきだな。くぞ」



ノムー王はすぐにウンディー側の企み───プンプンの元へ行く企みを理解し、乗った。

もちろんそれだけではない。クラウンやレッドキャップが教会を襲撃してこない事から、ここに居ても話にならないとノムー王は思っていた。

ひとりひとりが自分で選択する自由を大切にしているウンディー大陸に、細かいルールなど存在しない。それを知っている上でノムー王は乗った。


「この場合、イフリー大陸側はどうなるんスか?」


ドメイライト騎士のヒガシンは王の思い切りが良すぎる発言に対しても驚く様子はなく、落ち着いてイフリー大陸の発言を待った。



「~~~ッ、.......我々も向かうぞ」



薄く中身のないプライドをへし折られたビルウォールは殺気立つ声で言い、同行する事を選んだ。

理由は簡単で、この場に残りクラウンやレッドキャップが攻めてきた場合、イフリーの護衛だけでは自分を守れないと判断したからだ。


何よりも自分を優先し、勘違いな権力を持つ者ほど操りやすいものはない。そうウンディーとノムーのトップは思うもクチには出さず、急ぎアスランを追った。







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