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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【クラウン】
251/759

◇250



呼吸が安定した後天性悪魔───ナナミを見て安心する後天性 吸血鬼のマユキ。数歩離れたところには天使みよが唇を噛み、先程までマユキがいた場所を見る。


数秒前に吸血鬼は魅狐とチェンジし、今魅狐は死体操師と視線をぶつけている。


「吹っ切れた様子デスねぇ、お狐様。あたし達はどうするデス? 教会前へ向かうデスか?」


吸血鬼のマユキは髪と瞳の色を戻し、キバもなく人間と変わらない姿でみよへ言う。戦闘スイッチが入ると吸血鬼化し相手を壊す事を楽しむ少々危険な癖を持つマユキの前で、魅狐をじっと見つめる天使は普段見せていた小生意気な表情ではなく、


「私はここで......プンプンを待つ」


心配に染まる表情と、強い信用を持つ視線で言い放ち、その場を動こうとしない。


「そうデスか......それじゃ、あたしも残るデスよぉ。ピエロの方は誰かがどうにかすると思うデスし、悪魔さんには悪いデスが、もう少しここで我慢してもらうデス」



ピエロ───クラウンにこれと言った興味を持たないマユキは、みよと共に居る事を選んだ。





綺麗な銀色に染まった毛と、広げられた九本の尾にリリスは瞳を丸くした。

以前から毛を銀に染め、尾を広げてる変化系能力を使っていたプンプンだが、今の姿は以前のものとは違い、色も鮮やかでいて、雰囲気そのものが全く違っていた。


「やっと、私、を、殺る、気に、なった? 魅狐、さん」


魅狐───シルキ大陸に生息していたアヤカシと呼ばれる存在の魅狐族。今ではその存在もプンプン以外には確認されておらず、シルキ大陸ではプンプンの存在も伝わっていない。言わば、レアな存在。

リリスはそういった理由でも、人形を求める癖がある。


「ヴァン、パイア、も、いいけ、ど、魅狐、も、いいわ、ね。欲しい、わ」


とろん、と瞳を溶かしプンプンを隅々まで観察する視線。爪先からゆっくりと視線を上げ狐耳を見て、最後は瞳を見る。


「ウフ、決めた。プン、プン........」


リリスは左手を広げ右手を奇妙に動かし、次は逆、右手を広げ左手を奇妙動かした。

その動きに人形モモカが反応する事もなく、新たな人形が現れる事もなく、プンプンは警戒しつつも様子を見る事を選ぶ。


動きを止めた両手をダラリと前へ伸ばし、指先───千切れた指先は地面を向く。リリスは一度嗤い、手首を上げ指先を空へ向けるとヒュルヒュルと空気を斬る音が微かに響き、千切れた第一関節に自前の指先が。


「縫い、繋ぐ、の、なんて、簡、単、なのよ? 見て、いない、で、止める、べき、だった、かしら? プン、プン」


黒い糸で縫い繋げられた指先を観察し、指を動かして満足そうな笑顔を見せるリリス。プンプンは表情を変える事もせずリリスを睨む。


「怖い、わね、そんな、に、睨ま、なく、ても、よく、なくて? 待たせ、てし、まった、事は、謝る、わ───さぁ遊びましょうプンプン」


リリスの態度や発言は余裕というより、油断。完全にプンプンを格下と判断しての態度と発言。しかし今のプンプンは違う。格下と判断した事が間違えだった事をリリスはすぐに知る事となる。


自身の指先───死体を操る能力を持つ能力───をフルに使い、人形達モモカを操る。リリスは駆け引きの暇を与えるつもりはないらしく、召喚した人形も含めた30体を越える人形モモカを一斉に動かし攻める。


姿形はプンプンの妹モモカでしかない人形を相手に、プンプンは───瞳を一度閉じ、強く瞼を押し上げた。

閉じて開ける。この行動で1秒使ったプンプンの前には大量の人形が既に。防御は不可能、回避するにしても後ろへ飛ぶしかなく、その場合はマユキやみよが人形モモカの攻撃範囲内に入る恐れも充分ある。プンプンに残された選択肢さ2つ。

人形の攻撃を受けるか、人形へ攻撃を仕掛けるか。


プンプンの選択───答えは、攻撃を仕掛ける事だった。


人形達の武器がプンプンへ届く前に、右腕を大きく構え薙ぎ払う。すると点火音にも似た音を奏で、青白の炎が腕の振りに合わせ横薙ぎ。ふざけた範囲と速度で人形達を通過した。


「.....な、に.....、それ.....」


青白い雷を自在に操っていた魅狐だが、今人形達を攻撃しているのは雷ではなく、炎。

腕の振りだけで広範囲に広がり燃える青白の炎は人形達に燃え移り、リリスの指示は途切れる。


「なん、で、なん、だよそれその炎なんなんだよ化け狐ェ!!」


全く反応しない指先の糸と人形。プンプンを眼の前にして停止状態の人形と、初めて見る青白の炎にリリスは苛立ちを露にする。


「......モモカ」


リリスの声に反応する事もせず、プンプンは青白の炎を纏うモモカ達を見て、泣き出しそうなほど優しい声で名を呼んだ。





九本のうち、一本の尻尾が青白の炎となり消えた。痛みはない。ボクの尾は蓄電尾で、雷を沢山使えば消える。切断されても痛みはない。もちろん切断されれば消えて、その分の雷を失うけど、一回の攻撃で一本消えたのは初めてだった。しかも攻撃は雷ではなく、炎。


時間が経てば尾は戻るし、この力を使おうとすれば尾はすぐに生える。尻尾を無理に生やす事にリスクは......正直わからないけど、多分あるだろう。


雷を操る力はボクの特性みたいなものらしい。この炎は魅狐族の特性.......任意の対象の魂を還す、送り火。


この力─── 魅狐火おくりび と、もうひとつ、 魅狐炎きつねび を使えて初めて魅狐と呼ばれるらしい。

全部、魅狐ボクがボクに教えてくれた事で、魅狐火を今ボクは使った。



「......モモカ」



魅狐火おくりび は相手の魂を行くべき所へ導く火。

この炎には熱がなく、相手が送られる事、還る事を望んでいなければ何の効果もダメージもない。つまり、死者や終わった存在にしか効果はない。

今モモカ達は炎に包まれ、動かない事から───送られる事を望んでいるという事になるのかな。



「......お姉、ちゃん。わたし、作り物、なのに、偽物、なのに.......助けて、くれて、ありがとう」



───作り物でも、偽物でも、ボクにとってはモモカだ。そう気付いた瞬間から、ボクは何も出来なくなった。みんな本物なんだ、ボクにとってはみんな本物のモモカなんだよ───



「───ボクはモモカのお姉ちゃんだもん。妹を助けるのはお姉ちゃんの役目。あとは全部ボク任せて、モモカ達は先に行って待っててよ」


「ありがとう......ありがとう。お姉ちゃん───大好き」


───お姉ちゃんもモモカの事が大好きだよ。


ボクは胸中で答え、モモカ達を不安にさせないよう、悲しませないよう、くしゃくしゃの笑顔で───モモカがよくやっていた癖であるブイサインを見せ、見送った。



アイレインの雨は優しくモモカ達の頬を撫で流れ、モモカ達は青白い炎に包まれ、一緒に消滅した。







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