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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【クラウン】
226/759

◇225



「教会前にクラウンが現れて、ウンディーの悪魔が相手をしてるらしい!」


どこの誰かも知らない声が強く響き、リピナは子竜姿のピョンジャピョツジャと共に教会へ急いだ。アイレインはリピナの故郷であり、子竜のホームとも言える。抜道も近道も知り尽くしているふたりは無言で雨降る夜の街を駆ける。


───なんでルビーが狙われているのか知らないけど、クラウンをどうにかしてしまえば全部解決する。


医者、治癒術師、再生術師、ヒーラーのリピナは普段アクティブな動きを見せない。走るにしても他の冒険者達よりは遅く、戦闘も後方型。身体を動かすのは得意ではない。そんなリピナが今全力で雨水を弾き、走っている。


教会に現れたクラウン───ルービッドの元を目指して。





「マユッキー! 教会前にエロだって!」


天使みよは教会前にクラウンが現れたとの情報を後天性吸血鬼のマユキへ伝えた。


「ピエロ、デスよ。教会デスか。いくデスよ」


「私も!? だっっる」


だるいと言いつつ確り付き添う天使みよにマユキはクスッと笑った───瞬間、耳元に声が。


「お、急ぎ、です、か?」


「───!?」


囁きが聞こえた方向へ反射的に振り替えると、ヒラリと揺れた黒紫の布が一瞬見えた。


「マユッキー屋根の上に.....なんか凄いのいる!」


吸血鬼の反応よりも速く、規格外の感知力を持つ天使の網も簡単に潜り抜け、接触してきた影はふたりへ独特な句切りの挨拶をした。


「こん、ばん、は」


「あら、こんばんはデス」


「あ、こんばんは。えっと、大天使の み よ っ ち だよ! みよっちって呼んでね! テヘ、可愛い挨拶しちゃった」





「おいおい.....そんなんで大丈夫なのか? 全然痺れねぇぞ」


緑の鱗を纏う太刀は黄色の刃を赤く濡らしていた。

倒れる冒険者や騎士達は既に息がない。


ノムーの騎士、イフリーの軍、ウンディーの冒険者を相手に容赦なく太刀を振った男はどこか余裕のない表情をしていた。


「雑魚に用事ねぇよ。半妖精ながミミ女も来てんだろ? 呼んでこいよ」


隠す気もない殺意は対立する三大陸の者達を後退りさせる。決して弱いメンバーではないものの、男との実力差が浮き彫りになり身体は恐怖に強張る。


「.....ハァ。めんどくせぇな」


動こうとしない者達を見て、男は面倒そうに息を吐き───独特な色合いの太刀を握り直した瞬間、


「───全員、頭を下げろ!」


よく通る声がフリーズする者達の耳を抜け、全員反射的に頭を下げた。その頭上をひずむ音と共に通過した飛燕系の剣術。

男は迫る飛燕剣術を太刀で受け、力技でいなし、数秒前とは違う声色で言う。


「いいねぇ、雑魚ばっかりでイライラしてた所だ。半妖精ながミミを殺る前に感覚も研ぎたかったし、相手してくれよお前ら」


「トリプル《SSS》指定の犯罪者 “パラベル” の討伐を始める。怪我をした者は下がれ!」


よく通る声を再び響かせたのはノムー大陸 ドメイライト騎士団の団長代理、レイラ。


「微力ながらお力をお貸しします、団長代理!」


「ほにゃー、そんにゃ感じにゃのか。にゃら......私達、猫人族ケットシーも猫の手にゃがら力をお貸しするニャ! 団長代理!」


「微力にゃがら、ヒック.....にゃんかするニャ! ヒック.....にゃあ~酒が抜けにゃい、オエェ」


バイオリン型の片手斧と剣を持つウンディーの冒険者、音楽家ユカのおふざけに続き、猫人族のゆりぽよ、泥酔猫人族のリナが声をあげた。





集団を見つけては術式を発動させ、閉じ込めるダプネ。それを背の高い屋根から見ていた男は、同じように上から観察していたフローへ。


「あんないい駒を隠し持ってたのかお前」


「隠してたワケじゃないけどな。それより.........赤帽子のボスがわたしになんか用?」


グルグル眼鏡を向け、ヘラヘラ笑うフロー。その視線の先にいる男はSSS指定犯罪者の中でも一際異彩を放つ【レッドキャップ】のリーダー【パドロック】だった。個性的な雰囲気や存在感を持つ男だが、背中に見える武器は本人と同じくらい雰囲気を持った武器。


「お前は俺の邪魔になりそうだから叩きに来た」


艶消し───ベタ塗りされたような黒髪の長髪が雨を叩くように靡きフローへ迫るも、


「そりゃー怖いな」


フローは紙のようにヒラリと移動し、悪戯笑いを向ける。

パドロックの危険度レートはレッドキャップが組まれる前から変わらずトリプル。つまりパドロック単体でも相当な危険度を持つ。そんな存在を相手にしてもフローが笑っていられる理由は、単純にパドロックより強いからだった。


「個人的にもう少し見ていたいんだよねぇ.....だからまだ退場しないでくれないかい?」


可愛らしく、憎らしく、首を傾げるフローは、やる気の無さを全身で表現しているような仕草だが、今突然パドロックへ攻撃を仕掛けてきても不思議ではない声色だった。


「そういう声も出せるんだな」


パドロックはどこか嬉しそうに言い放つと同時に、背中で妙な存在感を放っていた武器へ手を伸ばす。


「んむぅ......おぉおを! その雰囲気 遺物レリック かいな!?」


フローはその剣を見るやグルグル眼鏡を輝かせ、はしゃぎ始める。


「収集癖があるお前の事だ。遺物いぶつ 集めもしたいんじゃないか?」


「本物!? いいなそれ。欲しいな......ちょーだい?」


「殺して奪えよ。欲しいものは壊してでも奪うんだろ?」


「グヒヒ、正解。んじゃ品定めついでに遊んでやるかいな」









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