◇221
赤色の髪と赤色の瞳を持つ───人間。
今回のターゲットであり、赤いお宝、赤い宝石とフローが言っている人物の名はわたしも知る冒険者の【ルービッド】だ。
魔女───雲母と琥珀にギルドの仲間を殺された人間をフローは欲しがった。
「.....誰だお前は」
落書きレベルのピエロメイクは想像以上の効果を発揮しているのか、わたしの正体が魔女のダプネである事をルービッドは気付いていない。ただ頬や眼元に絵を描いてあるだけのメイクだが、謎が多すぎる魔女フローが作った薬.....さすがの効果と言うべきか。
「ルービッドだな? 話がしたい」
声も変わっているワケではないが、相手は全く気付かない。姿や声以外の何かでわたしをダプネだと確信するまでは看破される事のない隠蔽アイテム.....これは便利だな。
「話? そんなもの私はない。さっさと行け」
ルービッドとは長い仲ではない。しかし以前のルービッドとは最早別人と言える。
口調だけではなく、心に余裕もなく、何よりも......酷い顔だ。今すぐにでも誰かを殺しそうな堕ちた瞳と、生きながら死んでいる顔。
こんなヤツが使い物になるのか?
「わたしはクラウンのピエロって所かな? お前に魔女の件で話があるのだが───」
魔女 というワードがスイッチになっているかのように、ルービッドは死んでいる瞳を燃やし、腰に吊るしているサーベルを抜いた。
「───話も聞けないのかお前は」
わたしはぼやくように言い、空間魔法の中へルービッドを落とし、自分も後を追った。
◆
アスランはセツカの指示通り、ユニオンへ連絡を繋ぎある冒険者の出身を調べた。
キューレやその冒険者と仲の良い者へ連絡し訪ねる方法もあったが、この騒ぎだ。夜になるにつれアイレインはざわつき、フォンに気付かない事も無いとは言えない。ユニオンならば必ず管理の者が残り、交代制で回しているので無人状態にはならない。
アスランが調べた冒険者の出身はセツカの記憶通り【アイレイン】だった。
それを聞いたセツカは通話相手へすぐにその冒険者を探すよう命じ、ここでキューレへ連絡し、情報拡散を依頼した。
赤い髪と赤い瞳の女性、ルービッドを探すべく、アイレインに居る冒険者や騎士、軍の者達は動き始める。
それを眺める道化師はグルグル眼鏡を月光に染め、歪んだ笑いを浮かべていた。
「箱庭娘のセツカちゃんもバカではなかったか.......それにしても、今日の玩具箱は豪華だな~グフ」
◆
セツカからルービッドを探すよう命じられた後天性悪魔のナナミは、まず一緒にいる後天性吸血鬼のマユキと天使のみよ へ説明した。そのまますぐにリピナへ通話を飛ばし、リピナ達と合流すべく雨具屋へ向かっていた。
「ルービッドってどんな人なの?」
両手に食べ物を持つ暴食天使のみよはナナミへ質問すると、後天性吸血鬼も同じ事を聞きたかったらしく、ナナミを見る。
「セツカよりも赤い髪で、髪と同じ色の瞳をした女。たぶんリピナが写真持ってるから急ぐぞ」
スラスラと答えたナナミは速度を上げつつ、フォンを操作しメッセを組み送信した頃、目的の雨具屋へ到着した。
「ナナミ! さっきの話は本当なの!?」
合流するやすぐにナナミへ駆け寄り質問したのはリピナ。その後ろにはキノコ帽子と狼耳、錬金銃師と盛り髪雨具屋、エミリオに付いてた子竜がいた。
「あくまでもセツカの予想だが......私はルービッドが狙われてる線で間違いない気がする」
「なんで!? なんでルビーが狙われてるの!?」
「わからない」
「わからない!? なにそれ、わからないのになんで.....」
声を荒立てるリピナへナナミは何も言えずクチを閉ざす。普段落ち着いているヒーラーだが、友人.....それも幼い頃から一緒にいるルービッドの事となると落ち着いていられない様子だった。
「とにかく手分けして探しつつ、知り合いが居たら軽く説明して手を増やそう」
ナナミはそう言い、捜索を開始しようとすると、
「話は聞いたニャ! 猫の手でもいいにゃら貸しちゃうニャ?」
猫人族の ゆりぽよ、リナ、るー、が小雨を鬱陶しそうに睨みながら現れ、全員でルービッド捜索を開始した。
その頃、ルービッドは───
「どうする?」
「........」
ピエロ の言葉に踊らされていた。




