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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【クラウン】
204/759

◇203



「よぉ.....相変わらずダラダラしとんな、お前さんは」


という第一声にわたしの可愛らしい耳はピクリと反応する。


「キューレ、遅すぎるぜ───お?」


ダラダラと溶けていたわたしは顔を起こし年寄り染みた口調のキューレへ待ちくたびれた声を出し視線を向けると、隣にはだっぷーと狼人間がいた。


イフリー大陸で生活していた魔銃使いの錬金術師【だっぷー】は、ギフトレーゲン事件で錬金スキルを使い解毒薬を作り、毒状態の人々を救った。あれから3日経過した今、だっぷーは錬金術師や錬金魔銃師などと呼ばれている。


だっぷーの恋人で元人間、現....人間と呼ぶには少々見た目がぶっ飛んでいる男【カイト】は瑠璃色の髪や似た色の模様が身体にある事から瑠璃、ギフトレーゲンを斬り消す力ワザを披露した時、狼から狼男に成り変わった事から狼の単語がとられ、瑠璃狼ローウェル.....若い狼の名で呼ばれ始めていた。

服───防具が昔のモノらしく侵食狼時も装備していたのでボロボロ、ヘソ出し状態で堂々とバリアリバルの街を歩いているカイトを、わたしはヘソと呼ぶ事にした。


「エミーおはよぉ!」


わたしの事をフローではなく、エミーと呼ぶようになっただっぷー。フローと呼ぶのはどこぞの野良猫族だけになったワケだが、正直フローでもエミーでもわたしが呼ばれている事に気付けるなら何でもいい。


「おっす、だぷとヘソ」


「.....ヘソって俺か?」


「カイトやったねぇ! 新しい名前!」


キューレ単体よりもだっぷー&ヘソがいる事で賑やかさが変わる。ヘソと直接話すのはほぼ初だが、だっぷーと同じノリで問題ないだろう。と考えているわたしの後頭部に刺さるような痛い視線。それを感じた直後、狼にも負けないレベルの咆哮───ハウルが炸裂する。


「もー!エミリオうるっさい! 三階にわたくしの部屋がありますので皆様そこでお話してください! ここは遊び場や溜まり場ではありません!」


女王のヘイトを知らず知らず稼いでいたらしく、セッカは主にわたしへ怒りの声をぶつけてきた。ここで噛み付けば死刑にされそうな勢いなので、わたしは黙り従った。

顔を真っ赤にし怒っていてもユニオンでダラダラする事を認めてくれているフレンドのセッカに感謝しつつ、ウンディーの女王セツカ様をこれ以上刺激しないようにわたし達は移動した。





気持ちいい雨が降る青空と、綺麗な街並みのアイレインを見通せる背の高い宿屋で、グルグル眼鏡の魔女【フロー】は、一枚の紙を増やす魔術を発動させた。


「よーしよしよし、雨粒に当たると5時間は消えんよーにしたぞ~この紙切れ」


フローは紙を数百枚に増やし “紙に雨粒が当たると消滅時間が延長、海水が当たると即消滅” という術式をかけた。


複製魔術と術式を組み合わせる行為は魔女子が悪戯で遊ぶ時に使われる手口。攻撃的でもなければ被害もない。しかし迷惑な結果に繋がる場合もある悪戯魔術。四大魔女─── 変彩の魔女(アレキサンドライト) の名を持つ【フロー】が今さら使うにはアクビが出るレベルの魔術。


「よーし! じゃ、この紙をアイレインの空からバラ撒くぞ~グフフ」


口元へ手を当てわざとらしく笑うフローを見る人物。

紅玉のような瞳と黒緑の髪を持つ強魔女─── 黒曜の魔女(オブシディアン) ダプネは溜め息混じりに言う。


「ジョーカーとして連絡して来たかと思えば.....くだらない悪戯遊びか?」


「ヒッヒッヒッヒ、いいねジョーカー。トランプじゃ強かったり弱かったりアタリだったりハズレだったり、でもキーになる存在。いいねいいね~」


道化師ピエロでもあるけどな」


「だからいいんじゃないかー! .....何十年も休ませてた道化師クラウンが今度はどんな遊びを始めるのか.....わたしも楽しみで楽しみで」


「勝手にしろ。わたしは魔女界さえ手に入ればそれでいい」


「なんで魔女界が欲しいの? お菓子独り占めしたい子?」


めちゃくちゃに絡まるネクタイに苦戦しつつ、ふざけたグルグル眼鏡の魔女は気まぐれか暇潰しか、ダプネへなぜ魔女界を欲しがっているのかを訪ねた。


「一番強い魔女になりたい」


「ぶふぉ、何を言い出すかと思えば最強さいつよになりたい魔女かいな! 面白いわそれ」


わざとらしく吹き出すフローを無視し、ダプネは続ける。


「だから他の魔女の瞳───マテリアも使えそうなモノは全部欲しい。わたしが最強って事を全魔女が理解できればどんな形でも構わない」


「はーん? それで黝簾エミリオの魔女力を解放する役目を買って出たのか。お前も暇だな~」


絡まるネクタイの攻略を終えたフローはオレンジジュースをブクブクと泡立て、暇そうにダプネと会話する。ダプネの目的や狙いはフローにとってどうでもいい事であると同時に、利用出来る部分があるなら利用するだけ。

フローから見たダプネの存在は、無きゃ無いでいい、あるならあるでいい、正直どうでもいい、グミにまとわりつく粉末オブラートのような存在。


「魔女に産まれたからには、全魔女の頂点に立ちたいじゃん?」


「そんなもんか? でもまぁわたしがやろうとしてる事は、みんなをめちゃくちゃにして遊ぶ事だから魔女にも怨まれるかもなー!」


「いいよ別に。魔女界を手に入れる、つまり最強の魔女になる。その近道がフローと組む事だと思ったし、最強になれるなら地界や外界、天界がどうなろうと知った事じゃない」


魔女の中で最も強く在りたいという思いを持っているのが黒曜の魔女。普段はそう思わせない態度をとっているものの、どの魔女よりも力を求め、どの魔女よりも危険な思考を持つのが魔女ダプネ。

フローはエミリオが魔女界から消えてすぐにダプネの才能───力を求めている事に気付き、自分が楽しめるオモチャのひとつにダプネを選び声をかけた。


「......そか、まぁお前はお前の好きにやればいい。わたしはわたしの好きにやるだけだし、楽しければ何でもいいや。グフフ───」



───やっぱりいいねぇ。



グルグル眼鏡の奥で瞳をギラつかせたフローは、新しいオモチャを見る眼でダプネを見て、ゾワゾワと震えるものを耐えた。


「んまぁ、そんなこんなで、この紙切れをアイレインの街に降らせるぞ~、手伝えよ最強魔女さいつよマゾ


「今はまだアンタ達 四大や天魔女の方が強いだろ」



───今はまだ、か。言ってくれるじゃん黒曜の魔女ちゃん。



変彩の魔女はニヤリと笑い、黒曜の魔女の危うい輝きにヨダレを呑んだ。







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