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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【クラウン】
201/759

◇200



魔女が地界へ現れ、ウンディー大陸の首都バリアリバルに毒雲を浮かべ毒雨を降らせた事件は、ノムー大陸、イフリー大陸、おそらくシルキ大陸にまでその話は広まった。

毒での死者はゼロという驚くべき数字に深く関わった4名の名も面白いように広まり、毒雨事件から3日ほど経った今、ウンディーの女王セツカは忙しそうにしている。


そんなセツカを、無造作に伸びたアイスブルーの長髪をだらりと下げた、魔女の冒険者エミリオはつまらなさそうに見詰め、深いため息を床へ落とした。





「おっふぉっふぉっふぉ、クチがユルむユルむ、ユルむのじゃわい」


と、しまりのないクチから奇妙な笑い声を出しフォンを見る赤茶髪の女性。結び上げている前髪の揺れが彼女の機嫌を表しているならば、相当に上機嫌。

冒険者ランクSS-S2で皇位の称号を持つ情報屋【キューレ】は集会場の二階で不気味な笑い声を響かせていた。年寄り染みた口調の彼女は情報を売り買いし、生計を立てている。戦闘力については未知数だが、情報の質や鮮度は高く、その部分を評価され、SS-S2ランクというハイランクを持ち、皇位という貴族ランクの称号を与えられている。


キューレが見ているフォン画面はウォレット機能───つまり財布だ。自分の所持金を見てキューレはニヤニヤ、ニマニマと楽しそうにしている。情報屋として本格的に活動を始めたのは今から十数年前。その頃から情報屋としての才能をばら撒いていた彼女は平均的な冒険者よりも確実に金銭的余裕がある。そんな彼女が今さら所持金を見てとろけている理由は───増えた金額に対してではなく、情報が売れに売れた事に対しての喜びだろう。

所持金が増えるという事は情報が売れたという事になる。キューレの情報は誰もが求める一級品のアイテムだが、情報によっては値段も相応となり、買った瞬間に自分がその情報を求めた、という情報がキューレの手に渡る。利用する場合はしっかり考えて利用すべき相手であり、キューレ自身も初見の客にはしっかりと説明するのだが.....それでも初見の客が求めた情報があった。


毒雲を消した人物の情報。

解毒剤を生成した人物の情報。

そして、魔女の情報。


最初の2つはスクリーンショット───つまり写真付きで売り出しており、面白いように売れる。

魔女の情報についてはキューレ自身も多くは知らないため、あまり売るつもりはないものの、それでも売ってくれと言われれば断る理由をキューレは持ち合わせていない。そのせいか、冒険者で魔女のエミリオは朝から様々な人に追われ、今はユニオンで身を隠しているらしい。

【魔女の魔力】と【魔女の魔術】について詳しく知りたいと思う冒険者が一気に増え、手っ取り早く情報を手に入れるには直接魔女に聞くべき、と判断した冒険者達はエミリオを探し求めた。【魔女の薬】と【魔女の薬品調合】について知りたいと思った者も現れ、その者達もエミリオを探し、帽子の魔女は朝から苦情の連絡をキューレへ飛ばしてきている。が、キューレはそんな事イチミリも気にもしていない。

エミリオもキューレという人間───相手が求め、売れる情報ならば友人の寝言の詳細でも売る。という事を理解した上で関係を持っているため、苦情を言っても無意味だと理解したのだろう、今では苦情連絡が途絶えている。


今回の毒雨事件はキューレに大きなギフトを与えた。


途絶える事のない客、入り入ってくるヴァンズ、キューレはとろけるクチで甘いミルクティーをひとくち楽しみ、今も情報を売り、新たな情報のまとめに勤しんでいると、


「やっはっはー、キューレちゃん」


ヘラヘラとした声で言い、キューレが座る席へ迷う事なく座り、ホットココアを注文した女性。

大きなグルグル眼鏡を装備した女性の名は【フロー】、去年の闘技大会でキューレはフローと出会っていた。


「相変わらずのトンボ眼鏡じゃの、ネクタイ曲がっとるぞぃフロー」


エミリオよりも少々緑混じりの水色ヘアーで、ボサボサとした短髪を持つ───人間。

謎の収集癖があり、キューレへ情報を提供する場合はお金───ヴァンズではなくフローが求めているモノでの取引となる。


「昨日言った情報はまとまったか? キューレ」


曲がったネクタイを気にする様子も見せず届いたミルクココアへキューブシュガーをぼとぼとと落とし入れるグルグル眼鏡に、キューレは胸焼けしそうになりつつ、答えた。


「あと少しじゃよ、そこで待っとれ」


「うぃ~、忙しそうですな」


ジャリジャリと擦れる音を奏でホットココアを混ぜるフロー。見た目の雰囲気もだが、砂糖の量もエミリオと似ていて、身長までも似ている。エミリオは小柄のレベルではなく、チビ。フローもチビで甘いモノを好んで食す。一般常識が欠けている点や少々好き勝手過ぎる点まで似ているが、エミリオとフローは対面済みで同一人物ではない事をキューレも知っている。

そもそも魔力の量と質が全く違う。


「うし、お前さんが欲しがっとる情報を送ったのじゃ」


「おっけー、報酬金を送ったのじゃわいさ」


キューレからのメッセージを確認したフローは報酬金を送り、フォンをしまった。


「そうそう、わたしこれから忙しくなるから情報交換とかできないかも」


「ほぅ、いい客じゃったのにそれは残念じゃのぉ。力になれるかも知れんし、どう忙しくなるか聞かせてくれんか?」


「わたしがそんな手に乗ると思うかい? キューレちゃんや」


いい客だったのに残念、と言い相手との別れを悲しむ雰囲気を出し、力になれるかも? と、相手を大切に思っている雰囲気を出し、情報を収集する作戦はキューレに限らず全ての情報屋が使うスキル。フローも収集家のひとりなので、形は違うもののよく使うスキルのひとつ。


「乗らんか。まぁ忙しい中でも欲しい情報があったら売ってやるのじゃ」


「本当に売ってくれんのー? んし、んじゃわたしは行くわいな」


「どこへ行くんじゃ?」


キューレは足止めする気ではなく、最後の最後まで何か情報を引き出せないかと声をかける。するとフローはグルグル眼鏡の奥で笑い、楽しげに言う。


「グフフ、宝探し」


「宝? 何探しとるんじゃ?」


「真っ赤で綺麗な宝石だよ」


何とも言えない笑いを見せたフローは、ココアの料金をテーブルへ置き集会場を出ていった。



「もっと真っ赤で綺麗になるのか、粉々に砕けてなくなるのか、楽しみだ。グフフ」







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