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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【瑠璃狼】ローウェル
180/759

◇179



「いぃぃーー!」


と、奥歯に力を入れ、喉から声を出し走るわたしのすぐ後ろで、


「ピョンギィーー!」


と高い声を出し、わたしの長髪を掴む小さなドラゴンは、全力でプリュイ山を下山....爆走していた。

背後から足裏へ届く振動は山頂で確りと眼が合ったウルフの群れ。笑えない数のウルフがわたしを追ってきている。その理由、目的は恐らく....コイツだ。


「お前、離せよ! お前が狙われてるんじゃねーのか!?」


「ピジャ!」


「ピザ!? お前バカにしてんの!?」


子竜の大きな瞳はうるうると涙を溜め、見る人によっては可哀想にも思える姿だろう。しかし悪いな....わたしは全く、微塵も、可哀想だの可愛いだの感じる事のない自分勝手な種族なのだ。

むしろこの子竜が囮になり、わたしが逃げ切れれば最高じゃないか。そこまで考え、わたしは頭を振るも子竜はガッシリ髪を掴む。髪から引っ張り剥がそうと手を伸ばすも、噛み付きモーションで威嚇してくる子竜....いや、小さい白いウザいヤツ。

絶対コイツがウルフの目的だろ! と内心で叫ぶも、迫るウルフの恐怖はわたしを加速させる事だけに働き、もはや声は「いぃぃー!」と意味不明なモノしか出ない。

山小屋まで走ればダプネ達がいるハズだ。トレインしたウルフを押し付ける形になるが仕方ない。後で怒られるくらい安いものだ。グッと奥歯を噛み、わたしは子竜を無視し走る速度を上げた。


戦闘する事も一瞬考えたがこの霧の中、さらに細い道で、あれだけの数を相手にするのは危険すぎる。ましてやウルフはここの住人、霧を利用した戦闘に慣れているだろう。魔術をブッパなして消し炭にしてやりたいが、一歩間違えればウルフのお腹の中行き.....そんな恐ろしい現実を前に、こういうの久しぶりだな、と思い、少し楽しんでる自分がいる。ここ最近は本当にヤバイ奴、危ない奴系の相手ばかりで冒険感のない冒険者....いや、むしろ謎に犯罪者的扱いまでされ、公開処刑一歩前までいった。


悪者扱いには慣れているが、公開処刑はさすがにビックリしたなぁ.....と、過去の記憶に涙を浮かべていると背後で「ガルゥ」という苛立ちめいた声がわたしを過去から現実へと引き戻す。


そろそろ体力の限界。距離が離れているならば止まり、魔術を爆裂させてやろう。と考え、わたしは軽く後ろを振り向き、ウルフとの距離を確認しようとした。しかし、その時エミリオさんが持つ特種スキル、Bad LUK が素敵に発動してくれた。コツン、と石がわたしの【シャドーブーツ】をイタズラに突つき、バランスは大きく崩れる。前のめり状態で数メートル進む謎の移動術を披露するも、予想通りの転倒。

中層部と上層部の狭間と言える、まぁ広いエリアでついにわたしはウルフ達に囲まれる。


「~~~....いってー。くっそ、あと一層下ならダプネ達いんのに、お前のせいだぞ!」


赤チェックのキャスケットにしがみつく白い小さなヤツへ八つ当たりするように言うも、大きな瞳を見開き震えるコイツにはわたしの声など聞こえていないだろう。


そもそもこの小さいヤツはなんなんだ......わたしの目的は子竜じゃなく、多分大人竜、コイツの親だ。しかし山頂に大人竜の気配はおろか、影さえ無かった.....。もし、もしコイツが子供ではなく、噂の大人竜【ピョッジャ ピョツジャ】だったら、今とてつもなく、Good LUK ではないか? SS-S2のドラゴンがわたしに助けを求めている状況ではないか? ....ここを逃すのは美味しくない。

エミリオよ、まずは確認だ。犬なんて一旦無視だ。


「おい、お前は子供か?」


「.....?」


わたしの言葉に首を傾げた事から、言葉を理解出来るタイプのドラゴンだ。竜種は賢く、人語だけではなく、あらゆる言語を理解出来ると聞いた事がある。これは LUK 爆発の予感。


「お前がピョンジャ ピョツジャか!? それともキッズピョツジャか!?」


今度は頭を強く横に振る。どっちだよ! と叫びたくなったが、質問の並びが悪かったのはわたしの方だ。


「この山に暮らして何百年も経つか?」


「ピジャ!」


首を縦に一度振り、頷いた。山に生息して何百年も経つなら確定で大人の ピョンジャ ピョツジャ だろう。よく見ると立派な角が生えているではないか!


「よっしゃ、わたしがお前を守ってやる。その報酬として頭の角よこせ」


キャスケットを地面へ起き、ニッ と笑うと、ピョンジャピョツジャは驚きの行動をとる。

キャスケットから剥がれ、地面に足をつけ、両手で角のような棘を掴み、ポキンっと根本から綺麗に折った。


「え!? 痛そう」


「ピッ!」


自分の身体よりも長く存在感のある角棘を両手で持ち、わたしへと。プルプルと震える腕が面白さを湧かせ、もう少し放置してみたいと思うも、この角こそ最後の武器素材【濃霧の秘棘】に間違いないだろう。こんなお宝級素材を差し出され、待て、なんてわたしには通じない。


わたしは角を受け取ると同時にフォンを出す。見た目は氷柱つららの様に綺麗だが、ずっしり重く冷たさもなく、堅い。素早くフォンポーチへ収納すると固有名【濃霧の秘棘】と表示されるのを確認し、グッと拳を握った。


「っし! 下がってろチビ竜」


わたしはそう言い、立ち上がりキャスケットを被ろうとすると、ピョンジャピョツジャはキャスケットにしがみつき離れない。帽子を諦める、という選択肢はわたしにはなく、かといって引き剥がすのも面倒。


「.....ぶっ飛んでも知らないぜ?」


「ピッ!」


地面より帽子の上がいいらしく、わたしは竜付きのキャスケットを被りウルフへ視線を飛ばした。


「待たせたな、ってか、よく待ってくれたな? 優しいじゃん.....その優しさで、見逃してほしいんだけども、無理?」


ウルフ達へそう言いつつも、わたしはやる気満々でミストポンチョをバサリと揺らした。ウルフ達は警戒する様にわたしを睨むも、近付こうとはしない。その行動のおかげで棘の取引が出来たのは感謝だが、どうやら見逃してはくれないらしい。やる気になったわたしへ先程よりも強い瞳を向け、白い牙をチラつかせるウルフ。

わたしが何をしてくるか、わからなかったから観察していたのか、いざやる気を見せるとウルフ達もその気で構える。


「リソースマナにしてやるよ、ワンコロわんわん」



挑発するように言い放つと、一体のウルフが声を出し、戦闘は開幕した。





プリュイ山、下層部と中層部の境にある山小屋では【黒曜の魔女ダプネ】がエミリオの魔力を霧の中で探す。

霧自体にも微量の魔力が含まれているプリュイ山では、特定の魔力を感知する事が非常に難しい。しかしエミリオの魔力は魔女の魔力で、魔女の中でも異質。同じ魔女ならば感知しやすく、異質な魔力ならば尚更楽に探せる。ダプネが感知出来れば空間を繋げる事が可能となり、一瞬で移動出来る。


「───そうか....でも生きててよかったね」


赤い羽のマスターアクロスはルービッドから簡単な事情を聞き、カイトがモンスターではない事を理解する。モンスター化で心や記憶が残っている時点で異質。そんな存在をアクロスは簡単に信じ受け入れたのは、人柄か経験か。

音楽家や皇位商人もあっさりと受け入れ疑う素振りさえ見せない。


「戻す方法がないワケじゃないだろ? 俺も色々と調べてみるし、キューレの耳にも入れておけば何とかなるんじゃないか?」


マルチェのマスターで皇位商人のジュジュは特種魔弾の件でだっぷーの存在は知っていた。取引相手を大切にしているマルチェだからこそ、カイトの件にも出来る限り力を貸す姿勢を見せ、早速キューレにネタを飛ばす。


「無闇に拡散リバーブすると誤解されたりするから、今はキューレだけに?」


「あぁ。拡散するもしないもプロ、キューレに任せよう」


音楽家ユカの質問にジュジュは素早く答え、フォン操作を終えダプネへ視線を飛ばした。

アクロス、ジュジュ、ユカの目的はエミリオをバリアリバルまで連れ戻す事。その過程でイロジオンを受けた狼と出会っただけであり、目的はあくまでエミリオ。

しかし全員が冒険者。だっぷーとカイトをほおっておく気もないらしい。


「ま、とにかくバリアリバルへ一緒に行こう。私達が一緒なら街中でも大丈夫」


音楽家ユカは口笛を奏で、大丈夫 と言いだっぷーとカイトを見た。不安そうな顔をしていただっぷーだが、ユカの顔を見て頷き、カイトも頷いた。


「話はまとまったな? じゃ、エミリオの場所まで飛ぶぞ」


霧の中からエミリオの魔力を発見したのか、ダプネは珍しく自分から、他人の為に空間魔法の詠唱をし、エミリオの近くに空間を繋ぐため集中力を高めた。


「......」


───同じ魔女として、エミリオの事が大切なのかな。


とルービッドは思うも、言葉に出来ない何かが引っ掛かる。しかし何が引っ掛かっているのか、ルービッド本人もわからないので、黙ったままダプネを見詰める。


「繋ぐぞ!」


黒曜の魔女が声を出すと、眼の前に虹色の空間が開き、ルービッドは引っ掛かる何かから頭を切り離し、空間へ飛び込んだ。








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