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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【モノクローム ナイト】
158/759

◇157



【人工魔結晶】その名の通り人工的に作られた魔結晶。

材料は───人間。

魔力やマナの質がどの種族よりもシンプルなのが人間。探さなくとも地界全土には大量に存在していて、集まって暮らしている人間。【クリアストーン】なる球体の希少鉱石を用意し、あとは簡単だ。

材料を凝固する様に───





まるで陽炎。一定の形を持たず気に入った形をとる様に揺れ動く腕。

振られた腕はバサバサと音をたて空気を焼く。酸度の高い陽炎は触れただけでも激痛を伴う───生身ならば。


「───ッ!」


陽炎の腕を凝視し、形を変えない事を確認したワタポは義手を陽炎へ伸ばす。ジュッと小さな音を上げたものの義手【エンプレスキラー】は溶ける事もなく陽炎を掴んだ。


───すり抜ける性能はない。


ワタポは防御として陽炎を掴んだワケではなく、特性を知るべくして義手を伸ばした。すり抜ける性能を持っていた場合は、すり抜けて終わり。しかしその性能が無かった場合、確認と同時に掴む事が出来る。剣ではなく義手を使い確認しなかったのは次の一手へ素早く移動する為。

掴んだ腕───陽炎を引き抜く事は可能なのか、そして陽炎の正体は何なのか。


まず引き抜く事は不可能だった。強く掴み引いても陽炎は伸びる。細くなり伸びる事から伸ばせる距離に限界がある....とはいえ、伸ばせるのは厄介。

そして陽炎の正体は───マナを吸引する炎とでもいうべきか。

マナは生物の命とも言える。マナを失えば生物は活動を停止し、命を失う瞬間にリソースマナを放出する生物も多々存在する。モンスターは命を失う際、必ず大小なりにリソースマナを空間に放出する。しかし人間や他の種族はリソースマナを持たない。つまりワタポが今、全てのマナを吸収されてしまえば死ぬ。

義手部分はマナではなくマテリアで神経を繋ぎ操っているので、この義手からマナを吸収する事は不可能。


───斬り離す事は可能?


ワタポは右腕に握る剣【エウリュ クストゥス】を構え、陽炎へ斬撃を入れようとする。しかしその動きを見たエミリオが、


「ダメだ!」


と叫び、反射的にワタポは陽炎を手放し下がった。


「その剣は爆破だろ!?あの腕は酸、つまり熱も持ってる!爆破が熱に反応して爆発するのはワタポも知ってるだろ!」


手を出したいが、グッと我慢しクチを出すエミリオ。

特種効果の爆破は一定以上の熱によって強制的に爆破を引き起こす事が可能で、そしてそれをエミリオは過去にやってみせた。

今ワタポが剣で陽炎を斬っていれば、あの時と同じ様に爆発を起こし、義手部分も吹き飛んでいた事になる。


「....ありがと、助かった」


ワタポはエミリオの言葉で “自分の片腕” が吹き飛んだ瞬間を思い出す。爆破鱗粉を纏った剣にファイアボールが触れ、大爆発を起こした教会での戦闘。


クリアストーンのマナを吸引吸収する特性を持つという事は吸収状態になった場合、一定量の魔力ならばあの陽炎は吸収するだろう。そして酸毒も持ってる。


「厄介な腕だね...りょう」





わたしはワタポへ助言....といえば大袈裟だが、戦闘にクチを挟んだ。しかし重要な事を言えず、唇を強く噛んだ。


「いいのか?」


ダプネは横眼でわたしを見て、気を使ってなのか魔女語で小さく囁きかけた。わたしが言えなかった事の内容をダプネは気付いてる。


空気中に無限と言える量のマナがある。そのマナが明らかにオカシイ減りを見せた───と言ってもマナ自体は眼には見えない。マナは魔術や剣術、他にも沢山の事に絡んでくるエネルギーの用なモノ。使っても使っても増えるマナだが、魔術も剣術も使用していない状態で上級魔術と同じ程のマナが一瞬にして減った。

セッカやワタポはまず気付けないだろう。ナナミンも気付いてない事から、魔力やマナに敏感な者か、そういった種族───今この場ではわたし達、魔女だけが拾えた情報。


「いくない」


わたしは短く返事をし、クチを閉じた。剣術や魔術ではないのにマナを一気に減らした現象───あの腕がマナを吸い込んだ。一度生身部分に触れているワタポなら、あの腕がマナを吸い込む特性を持っている事には気付いているだろう....なら、その先を考えるんだ、ワタポ。


マナを吸い込む特性を持つモノが、マナを持つ者に触れているという事は、どういう事なのかを───。





「....うぅ、」


酷く荒れた場所、全身にのし掛かる瓦礫を避け、後天性吸血鬼の【マユキ】は起き上がる。

深く抉れた傷はグジュグジュと音を立てて再生される。

旧フェリア遺跡内でリリスと戦闘したマユキだったが、リリスに敗れ大剣【マリス】を奪われる結果に。


「あの子強いデスねぇ....この身体がなければ死んでいたデス」


捻られ潰れていた手足は勢いよく回り、元の形へ戻ると休む事をせず、マユキは外へ向かった。







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