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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【妖精の唄】
125/759

◇124



魔術は魔力とマナを詠唱中に混ぜ、発動する魔法。魔術を得意とする者もいれば、魔術の気配───魔力の微妙な変化を感知する事を得意とする者も存在する。


魔力感知を得意とする冒険者や、直感で魔術や何かを感知する冒険者が集まっていたユニオン本部に突然現れた人物の声で凍りつく。

感知出来なかった...正確には感知した時には遅かった。

直感も同じ結果に

その人物が現れて初めて、ユニオンにいる者が気付く程、レベルの高い空間魔法が展開され現れた人物は奇妙な嗤い声を溢し、挨拶変わりに質問する。



「Lassen Sie das Puppenspiel───お人形遊びは好き?」






胸を焼く様な粘りつく不安感と、不快感がギルドハウスを今まさに出たプンプンの胸中で渦巻いた。


吐きそうな程、気持ち悪い感覚。

ベトつく様な空気がさらに煽る中、プンプンはそれを感じた方向へと急ぐ。

直感でしかない。理由もハッキリわからない。

それでも身体は半ば勝手に動く。


皇位持ちの商売ギルド【マルチェ】のセッカことこの大陸の女王セツカに「街中を縦横無尽に走り跳ぶのはやめなさい」と言われているプンプンだが、今はそんな言葉も忘れ、建物の屋根から屋根へ跳び、空気を小さく弾けさせ加速する。


防具の【ダークセーラー】が黒い影を残す様に進む先はユニオン本部。


途中、知り合いなどに声をかけられるもプンプンの耳には届かない。


───早く、速く。


そんな気持ちだけがプンプンを急がせる。


視界の街並みが線になる速度で跳び舞う黄金色の女性は集会場を過ぎた頃、聞き覚えのある声に一瞬視線を向ける。


「...プンちゃん!?」


「え?どこ?」

「どこニャ?」

「世界が回りゅニャ~」


ローズクォーツの長髪を左側に束ねたサイドテール、整った顔と黄緑色の瞳から送られる視線に気付き一瞬眼を合わせるも、プンプンは止まる事なく屋根を蹴りユニオン本部へ。


近付けば不安の理由、不快感の理由がハッキリし始める。


───いる...この中に。


高さはそこまで無いものの、城の様なユニオン本部を睨み、鉄格子の様な門と門番をしている冒険者を飛び越え、庭をひと蹴りで過ぎ去り中へ。


閉じられた大きな扉の奥。

そこが女王セツカが使う女王の間であり、ギルドマスター達が会議するユニオンのメインフロア。


プンプンは背中の長刀を抜き、躊躇なく扉を斬り捨て鋭い視線で中を睨んだ。


睨んだ相手は両眼を丸くし驚くセツカや顔見知りの冒険者達ではなく、プンプンが来る事を予想していたオッドアイの人物。


「アハ、久、しぶり、ね。プン、プン」


独特な句切りを持つ声がプンプンの耳に届き、すぐに斬り捨てられた扉が騒がしい音で上塗りする。


グレーのツインテールとオッドアイ、黒紫のドレス。

下唇の両端には黒い針、あるいは牙の様な、コーンピアス。青白い肌には無数の縫い痕を持つ女性。


プンプンから平凡を、日常、妹を奪い嗤った人間。ギルド【レッドキャップ】の死体術師ネクロマンサー人形術師パペットマスターと呼ばれてる───リリス。


「...、アハ」


リリスは床に転がっているビンを拾い、声を溢した。

イスも床もテーブルもボロボロ、冒険者達にも傷が見てとれる。


プンプンが現れる数分前にリリスはユニオン本部に。

感知が遅れ、現れたリリスに反応、対応する暇もなく、冒険者達はこの結果に。

個々のステータスが高く、人数は圧倒的に冒険者達が上。リリスも感知不可能な奇襲がなければ今頃戦闘になっていた。


拾いあげたビンのコルクを抜き、中身を出す様に振る。


冒険者達もプンプンもそのビンの中身を知っている。

リリスがコルクをへ手を伸ばした瞬間、全員が動こうとするも、身体は見えない力に拘束され命令を無視する。


「リリス...ッ、何するつもり?」


動かない身体を強張らせるも、見えない力はキツく硬くプンプンを拘束する。


ビンから現れたのはキューレのディアで小さくされていた【レッドキャップ】の【ロキ】。

ビンに入れる独特な拘束方でレッドキャップのメンバーの拘束に成功したバリアリバルはロキから情報を聞き出していた。クチは固くコレと言った情報を聞け出せないまま日々が過ぎ去り、今日も同じ様に情報を聞き出すためユニオン本部に集まった所をリリスが襲撃。


リリスはプンプンの質問に短く答え、


「後、始末」


床で何かを必死に叫ぶロキを、仲間を、人間を、可愛らしいドールブーツで踏み潰した。


プジュっと果実が潰れる様な不快音が小さく響き、床は真っ赤に。


「アハ、ッ」


リリスは頬を染め、喉から声を溢れさせ快感を全身で味わう。その姿、形、全てがプンプンの記憶の蓋をこじ開ける。

今まで何度かリリスと遭遇してきたが、リリスはプンプンの前で...あの日の様に命を摘む事はしなかった。

しかし今は甘美な快感に声を濡らし、ギルドメンバーであったロキの命を潰した。


リリスは瞼の裏側まで眼球を上げびくつく。全身を駆け回る快感の痙攣が止むと、左右色の違う眼球を廻し、プンプンを視る。


当たり前と言えば当たり前だが、10年前よりもリリスの威圧感が増している事にプンプンは喉を鳴らした。


「怖が、らな、い、で?。私、はま、だ、プン、プン、と遊、ばない、わ」


床に広がる血液をリリスは撫で、指に付く血液を舐める。


「...ッ、ボクから逃げるなリリス!」


震える声で叫んだプンプンへ、リリスは歪んだ笑みを浮かべ近付き、耳打ちする。


「お人形遊びの準備はもうすぐ終わるわ。それまで妖精と遊んで待っててね、プンプン」


独特な句切りのない、リリスの声がプンプンの耳を刺激した。

意味がわからない。言葉も見つからない。でも黙る事も出来ないプンプンはクチを開いた瞬間、プンプンではない別の声がユニオンに響く。


「プンちゃん!」


「...、ひぃちゃん...」


「あら、半、妖精、さん」


「....リリス」



プンプンが所属するギルド【フェアリーパンプキン】のマスターでプンプンの相棒。半妖精ハーフエルフの【ひぃたろ】はリリスを知っていたものの、数秒見た程度。こうして正面からリリスと顔を会わせるのは初めてだった。

プンプンはクチを動かせるも身体は動かない。ユニオンにいたセツカ達は身体もクチも動かない状況。

眼の前にいるゴスロリドールは噂以上の威圧感を持っていた。ひぃたろは素早く身構え、リリスの行動に注意する。



───少しでも怪しい動きを見せたら、斬る。



ひぃたろは左腰に吊るされている剣【エタニティ ライト】へ手を伸ばし、リリスへ鋭い視線を送る。


「...、ここ、で、あたな、と、遊ぶ、の、は楽、しそ、うだけ、どお仲、間、さんが、増え、るの、は、面、倒ね。帰ら、せても、らう、わ」


「帰れると思っているの?」


ひぃたろが素早く言葉を返すと、口角を震えさせ小さく嗤った。

その直後、リリスの後ろに魔法陣が展開され、ひぃたろは魔力を感知するや素早く踏み込み抜刀斬りするも、攻撃は硬い音で弾かれる。


「ッ...、召喚魔術!?」


ひぃたろの攻撃を弾いたソレは岩の様な腕。

防御系魔術ならば攻撃を弾いた時点で効果が終わり消滅する。例え効果時間が長いタイプの防御魔術でも、パリィ後リリスを掴む様な動きはしない。

しかし岩の腕はリリスを掴んでいる。


「半、妖精、さん。ま、た会え、た時、遊び、ま、しょう」


リリスがそう言うと岩の腕は魔法陣の中へリリスと共に。


「あれが...リリス?」


呟くようにプンプンへ質問したひぃたろは、プンプン達がまだ拘束されている事に気付く。


消えていない魔法陣の前に2つの影が天井から降り立った。


ひぃたろよりも濃く、ゆりぽよ よりも薄い、桃色の長髪を持つ幼い少女が2人。



「...やっぱり来てたんだね、モモカ」



優しい瞳と悲しそうな表情で、プンプンは2人のモモカへ話しかけるも、色の無い瞳は無言のまま魔法陣の中へ落ち、魔法陣が消え拘束から解放される。



「今のが妹の...?」


「そう...だけど様子が違った」



まるで心が無い、本物の人形の様な瞳と反応さえしないモモカ。

1人の瞳は蜘蛛ギルドのネフィラの瞳。もう1人は作られた腕の様で。




「...ひぃちゃ、速いよ」


「翔ぶにょはズルいニャ」


「んにぁ~吐きそうニャ」



終わった頃にワタポ、クゥ、ゆりぽよ、リナが到着した。






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