ヒツギのお話です
「私の当時の仲間は5人いたんだ。もしかしたら1人は生きてるかもしれない」
「900年前の人だよな?」
「エルフだからね。エルフの女の子。当時はたしか…10歳だったかな。魔法に秀でて、そのかわり筋力が全然なくてね。いじるとポカポカ叩いてくるんだけどまったく痛くないの」
「ほのぼのしそうだね」
「その通り! 背が低くてね。ちょっと頭のとこ押さえると腕届かないからかわいくてかわいくて」
「その子なら生きてる可能性があるんだよね?」
「うん。エルフは寿命がかなり長いからね。私は強いから1000年くらいなら生きるって言っていたかな」
「普通なら200年くらいなんだっけ? 1000年ならあと100年くらいは生きられるんだな」
「あくまで彼女が言っていた目安からね。200年はっていうのは平均寿命って言ったほうがわかりやすいかな。それまで生きる人もいれば、その途中で亡くなる人もいる。怪我や病気、それからモンスター。他にも要因はこの世界にはこれでもかってくらいあるからね。命の価値は低いんだよ」
「実際に殺されかけてるから何とも言えんな。ほかには?」
「魔法をつかえないけど刀の達人で、片角の龍人のお兄さんのオルス。腕力はそこそこでスピードに長けていて、うちのパーティで罠の発見、解除を担当してた猫獣人のおっさんのエルギウス・ファントム。あとはその当時の騎士団長のセン・グーテン」
「騎士団長が冒険者として働いてたのか?」
「王直々についていけっていう命令書があったらしいよ」
「そんな簡単に騎士団長派遣しちゃっていいのかよ…」
「どうにも出発の前日には次の騎士団長を指名してきたんだって。代々世襲してるらしいからすぐ決まるそうだよ。まあ長男ってわけじゃなくて、子供たちに決闘をさせて最も強かった子が騎士団長の座を受け継いでいくんだって」
「それだと長男は継げない可能性があるんだな」
「長男は3人、次男と3男は2人次の騎士団長を決める決闘にそれぞれ自分の子供を出場させられるみたい。あとは騎士団長になった人の子が全員と、その人の兄たちの子が1人ずつ。弟たちの子供の中から1人出場するんだって。センは次男の子として出て優勝したんだよ」
「強かったんだな」
「うん。自身のスピードと力を上げる呼吸法を独自に編み出してその力で他の義兄弟たちをねじ伏せたんだって自慢してた。もう満場一致で、反対する人はいなかったんだって。圧倒的過ぎて」
「そりゃすごいな」
「冒険の中で何度も助けてもらったんだ。他の人は冒険してる中でだんだんと仲間になったんだよ。冒険していく中で奴隷として購入したのが最後の1人。犬獣人の女の子で、名前はシルフィード」
「…」
「言っておくけど、奴隷扱いしたことは一度もなかったよ。娘として扱ってたもん」
「…いや、ひどいことしてないかってのは心配してない。どんな子だったんだ?」
「初めのうちは完全に目が死んでた」
ヒツギが何気なく言った言葉に俺とマナの背に冷や汗が浮かぶ。
「なんでも前の主にそうとうひどい扱いを受けてたらしくてね。はじめは「はい」か「わかりました」しか言わなかったんだよ。それでもゆっくりゆっくり少しずつそれも治っていった。私としては彼女のことを救えたと思ってる」
「そんな簡単なものでもないだろ?」
「まあね。でも、彼女は心から笑えてたんだよ。それはもう救ったといってもいいんじゃないの?」
「そうなのかな…。でも、ヒツギが言ってるとおり、奴隷として買った人を仲間として迎え入れていけばいいんじゃないかなって思えてきたよ…」
「まあ実際に奴隷を買ってからじゃないとなにもできないけどね」
「買うかどうかを決めるんじゃなかったか?」
「でも現状で奴隷以上に条件を満たせる人はいないと思うよ?」
「…」
たしかに、俺たちには秘密が多すぎることを考えると、まず第一に絶対に他人に俺たちの情報を漏らさないことが絶対条件になる。仲間になった人に強く言っておくしかないとはいえ、この世界では貴族という存在がとても大きい。もし圧力をかけられたとしたら人間ならあっさりと話しかねない。まして、金を積まれて情報を漏らしましたじゃ話にならないのだ。
その点でいえば、奴隷が最も有効な手段だ。奴隷ならば、命令として情報を話すことを禁止すれば話そうとしても強制的に話せなくなるので絶対に漏れることはなくなる。たとえ貴族が相手で、金を積んできたとしても問題はなくなる。
まあ詳しいことは奴隷商人(?)に聞かないとわからないけど。ヒツギの知識は基本的に900年前のものだから変わってないとも限らない。確認しないで後から変わりましたとかは嫌なのだ。
「あーまあ2人がいいならいいや。あとは自分で自分に言い聞かせるよ」
今はこう言ってごまかしておこう。実際オークションまでは20日もある。その間に納得できればいいんだ。
「ねえヒツギ、罠担当って言ってたエルギウスさんから何か習ったりしてないの? ほら、罠の見つけ方とか」
「何も教わってないよ。エルが言ってたのは、『俺の一族は代々罠が探知できるんだ』だって。ただ、『代償を払ってきたけど』とも言ってた」
「代償?」
「うん。エルの数代前から血が呪われてるんだって。もし解除できるならば解除したいって何度も言ってたよ。子孫がかわいそうだって」
「でもそれ解除しちゃったら罠の探知もできなくなるんじゃないの?」
「そうでもないらしいよ。あらゆる効果を一時的に無効化する空間ってとこに入った時も探知はできていたって言ってたし」
「呪いなら俺がなんとかできそうだな」
「あーあ、メイが昔いてくれたらなぁ…」
「無茶言うなって。エルギウスさんの子孫に会う機会があったら呪いを解いてみよう」
「お願いね。彼には返しきれない恩もあるし、もしかしたらそれを理由に成仏できないでいるかもしれないし」
「案外900年の間にもう解除されちゃってるかもしれないよ?」
「それはないと思うけどな…まあ子孫の子に会ってみないとわからないんだよね」
「その辺はあってから考えるか」
その後は、900年前の冒険の話などを語りだしたヒツギに、俺とマナが質問を交えながら聞いていき、時間は過ぎていった。
次の日、ギルドの前は大勢の人であふれていた。
特設会場ともいうべきステージができており、そこで行われることを見に来たのだ。その中に俺たち3人もおり、よく見るとムウルマルのおっさんたちやカーマスさんたちもいた。そういえばムウルマルのおっさんに誘われてた飲み会完全にすっぽかしてたな。後で謝って…いや、その場で飲み会に連れていかれそうだ。挨拶だけにしておこう。
「さあみんな、今日はよく集まってくれた!」
ガラハムさんが手に持った、拡声器の魔道具と思われる石を口に近づけながら話し始めた。周りの観客も負けずに大声で歓声をあげる。
「つい先日、とても、とても大きな出来事があった。なにかわかるよな?」
「「「「迷宮踏破だぁあああああああああああああああ!!!!!!!! 」」」」
つい耳をふさいでしまった。いや、それくらいうるさいんだ。現に耳をふさいでる人はけっこういる。
「その通り! これが、そのダンジョンコアだ!」
ガラハムさんが掲げた右手にはなにやら透明な箱に入れられたダンジョンコアがあった。結界みたいなものだろうか。あ、また耳をふさぐことになったのは言うまでもない。
「お前らの言いたいことはよくわかってる。さっさと魔道具の発表をしろってことだろ?」
そう。この場はダンジョンをクリアした人に贈呈される魔道具の発表会でもあるのだ。メインとしてはダンジョンがクリアされたということを大々的に発表することなのだが、ほとんどの冒険者にとってはそれより魔道具のほうが気になったりするらしい。これで発表されたものによっては他のダンジョンへ移動することを考えるそうだ。
「さて、このダンジョンをクリアした報酬となる魔道具は4種類だ。数は1、3、7、9こ。合計で20個ある。まあクリアしたパーティが3人パーティだからあと17人だ」
ガラハムさんが説明している後ろでは数人のギルド職員が4つの魔道具を1つずつ並べていた。
並べ終わるとガラハムさんの説明が始まった。
1つ目はハウステント。
見た目はただのテントなのだが、中は別の閉鎖空間につながっており、一軒家とその周りに少しの土地がある。これが一番の目玉というわけだ。これがあれば野宿が野宿じゃなくなる。
見張りを立てる必要はあるが、テント事態の耐久力は相当高く、実際にガラハムさんがハンマーで打ち付けてもまるで変化がなかった。
2つ目は初級魔法が1つ使える魔導書。
ファイアボール、アクアボール、エアボ-ルなどの初級魔法と言われる魔法を1つ魔力を通すことで放つことができる魔導書だ。というかなにが初級で何が中級でとか全然知らないからよくわからない。
発動する魔法は魔導書によってランダムで、1冊につき1種類しか使えない。使って確かめろとガラハムさんも言っていた。これ全然ほしいと思えないんだが…。
3つ目は魔法袋。
アイテムボックスが道具化したようなものだ。俺たちとしては全員がアイテムボックスを使えるから使い道が限られるな。
4つ目は解体の短剣。
これが一番数が多い。それだけ出回っている品だそうだ。倒した敵に対してこの短剣を突き立てると、『解体』の魔法がかかり、その死体が解体されるらしい。感覚としてはボス部屋のドロップに近いとのことだ。
実演として突き立てたアントの死体は『アントの甲殻』にかわった。だいぶ無駄になる部分が多いな。自分たちで解体できる冒険者ならそっちのほうが売れる部分が多くなるが、それが面倒だったり、持ちきれないほどの量を倒したときには大活躍するらしい。
と、すべての説明が終わったところで盛り上がっていた観客が静かになった。その時を狙いすましたかのようにガラハムさんが言った。
「お前ら、これがほしいか? なら…」
大きく息を吸う。
「早い者勝ちだ! 自らを鍛えろ! センスを磨け! そして、ボスを倒して力を示せ!」
「「「「うぉぉおおおおおおお!!! 」」」」
「ぜってぇ死ぬんじゃねえぞ! 死んだらそこでしまいだ。命を粗末に扱うような奴はこれを手にする価値はねえ!」
「「「「うぉおおおおおおおお!!! 」」」」
「生きて、これらを手に入れろ!! 」
「「「「うぉおおおおおおおお!!! 」」」」
冒険者たちの大音量の叫びが響く。
俺たちは、それを聞きながら宿に戻っていった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX
格闘家 LvMAX
狙撃手 LvMAX
盗賊 LvMAX
剣士 LvMAX
戦士 LvMAX
魔法使いLvMAX
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
????の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60 』
今回は長くなりました
ヒツギの話だけではありませんがいいタイトルが浮かばなかっただけです
予定では次の話でこの章は終わります
あくまで予定だからね!?
ではまた次回




