キャラビーとユウカの物語です14
今回もキャラビー視点です。ご注意ください。
部屋を案内された後、昼食のために食堂に移動した私たちをこのお屋敷で働いている方々を紹介していただきました。門番として交代が来るまでここに来られないハンナさん、ハンスさんたちの他、非番でお休みの方も何人かいらっしゃるようですが、明日には顔合わせができるとのこと。お休みであってもユウカ様が来ていると知れば挨拶に来るだろうと。ユウカ様も口では「休みなんだから職場にこさせるな」とおっしゃっていましたがどこか嬉しそうですし、自身を慕ってきてくれるわけですから嫌ではないのでしょう。
執事長兼現在のこの屋敷の実質的な管理人であるシーラさんを筆頭に、今日いる方だけでも15人。全員が冒険者時代、訓練所の所長時代問わずにユウカ様にお世話になり、冒険者に戻った今でも合わせて20人の方がここで働いているそうです。
フレアさんの話にもありましたが、その20人のほとんどは既に騎士や冒険者を引退した方なのだそうです。比較的若い方や既に騎士として職を持つ方、貴族など他に果たすべき義務を持つ方など、王都にいた頃にここで働いていた方の多くはユウカ様とシーラさんの説得によってここに残ることは許さなかったと後からお聞きしましたが、貴族ですら魅了してしまうユウカ様はすごいですね。
一人一人軽い自己紹介をされた後、アレフさんの作ってくださった料理は絶品でした。いつもよりも豪華だと皆さんにからかわれていましたが、ユウカ様も含めてそうやって笑い合える間柄なのでしょう。
食事を終えた後、冒険者ギルドに伝令に向かっていたエスタさんが戻ってきてお話を聞きました。
「冒険者ギルドからの伝言ですが、まだ来られていない方がいるのでひとまず待機をと。数日単位で外に出るのは困るが、連絡さえ取れるのであれば多少の外出は問題なく可能だそうで」
「ふむ、あまりに長ければ『タイラン』にでも挑んでみようかの? 一日二日続けて入ったところであのやばいところまではたどり着かんじゃろうし」
「ユウカ様、さすがにダンジョンに向かうのはどうなんですか?」
「キャラビーもここでゆっくりしておるだけでは体が鈍るじゃろ?」
「時間があるようでしたら訓練を見てやってはどうですか? キャラビー様もご一緒に。招集予定の冒険者たちには既に連絡は取れているみたいでしたから、早ければ明日明後日には呼ばれるかもしれませんし」
「ふむ……それもありじゃの。発案者のお主は特別に厳しく鍛えてやるのじゃ」
「ははは……お手柔らかにお願いします」
「エスタってば余計なことを……」
仕事前の休憩だと一緒に聞いていた方々の一部が天を仰いでいました。おそらく訓練に参加予定の面々なのでしょう。シーラさんの満面の笑みが気になりましたがもしかして参加予定なのでしょうか?
「フレッド、他のやつらの情報は入っておるか?」
「んみゃー、現実逃避の時間が欲しい」
「今晩にでも好きなだけしなさい。今はユウカ様の質問に答える時間ですよ」
「失礼しました。改めて精査しないといけないですが、何名かは王都に入っていることを確認済です」
「具体的には?」
「普段から王都にいらっしゃるセンガ様はもちろんとして、ジョー様、ゴールド様、アーカイブ様、ドレアム様は既にいらっしゃるみたいです」
「思ったよりも多かったの」
「私たちは連絡を取るまで数日かかっていたみたいですし、それを考えるとむしろ少ないのでは?」
「即断即決でその時の活動拠点から王都に移動できる者がどれだけおると思っておる。カラカリやモモを除けばほとんどが何らかの組織の長じゃぞ?」
「あ」
私たちはご主人様を探すと言う用事はありますが、実質決まっている予定というものはなく、日々訓練に明け暮れている状態であるのが現実です。一方で他の方々はそれぞれがギルドのトップとして普段から多くの予定が決まっているはず。すぐには予定が入っていなかったとしてもご自身の鍛錬や研究などもあるでしょう。魔王軍という強大な敵が一国に対して戦争を引き起こしたという大事件がきっかけではありますから優先はするでしょうが、既に何とか勝利した戦いに対して意見が欲しいと言う理由。絶対とはいかないと思います。
「まあわしらほど自由には動けんはずじゃ。気長に待っておればよい。もしかしたらジョー辺りはわしが来たと聞いたらここに来るかもしれんしの。王都におるギルドメンバーを鍛えるにしてもずっとというわけにはいくまい」
「王都にはそこまで強い方はいないでしょうし、皆鍛錬に耐えきれずにダウンしてしまって暇になったからと、ふらりと訪れる可能性は否定できませんね」
「まああやつであればかしこまる必要もあるまい。一応門番組には他の招集されたSランク冒険者たちが来るかもしれんと伝えておいてくれ」
「承知しました。すぐに展開しておきます。フレッド、あなたは引き続き情報収集を。他の方々の状況は定期的に連携できるようにしておきなさい」
「了解です」
シーラさんから指示が出て、残って一緒に話を聞いていた方々も解散だとパラパラと部屋から出ようと動き出しました。それに合わせるように失礼しますと立ち上がり移動を開始したフレッドさんですが、途中で何かを思い出したように立ち止まり、くるりと反転して、ユウカ様ではなく私の方に向かってきました。
「ところでキャラビー様、一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
「私にですか?」
人当たりのいい笑顔で話しかけてくるフレッドさん。お願いとはなんでしょう?
「はい。実は離れにいらっしゃるキャラビー様の従魔、みぃちゃん様でしたか? あのプラチナタイガー様、彼女を撫でまわす許可をいただきたく」
「はいはーい、猫狂いはおとなしくしようねー。説教かましますよ」
「いたたたた! フリックさん、耳が、私の耳が千切れる!」
「その時はあなたの望み通り猫型モンスターの耳でも移植しなさい。キャラビー様、ユウカ様、失礼しました。この馬鹿はきちんとしつけておきますので」
「あーーー! 私の、私のネコライフがーー!」
話を始めて素早く背後をとったフリックさんがその耳を引っ張りながら彼女を連れ去っていきました。みぃちゃんが嫌がらなければ私としては別に構わないのですが、あの様子だと撫でるだけで済まないかもしれませんし、ここは確固たる意志でもって断っておきましょう。
「かっかっか。相変わらずおもしろいやつじゃのう。精々仕事に支障が出ん程度に済ませるのじゃぞー」
廊下に向かって呼びかけたユウカ様の声に対して「わかりました」と返事が聞こえてきました。それを聞いてうんうんとうなずくユウカ様ですが、私の目線を受けてすっと目を逸らしたシーラさんを見るときっとだめなのでしょうね。
それから、最近王都で起きたちょっとした事件などの話を午後から非番だというフレアさんたちから聞きながら私たちは王都での初日を過ごしました。
それから王都にやってきて二日後、冒険者ギルドからの伝言で、集まれる方が全員揃ったのでギルドに来てほしいと連絡がありました。
どうもコクトーです。
今回もキャラビー視点のため職業レベルは無です。
先週はすみませんでした。ちょっと平日が忙しく、その反動かゲームが止まりませんでした。
みんなはほどほどにね!
ではまた次回




