守護龍の試練です9
この試練が始まって以来最大のピンチを前に、俺は自然と笑みを浮かべていた。
『再生』が始まっているのを感じながら、肩から発せられる鈍い痛みに今自分が命のやり取りをしているという感覚が強くなる。これまでのような、骨はあっても半ば一方的な殲滅になってしまうような生ぬるい戦いではなく、本当の意味での戦い。1体を仕留めたことで残るデビルガーゴイルたちは9体。感情というものを持たない無機物たちは、仲間がやられたところで臆さずに攻撃を続けようとしている。
あぁ、この高まる感情を何と呼べばよいのだろう。迫りくる死の恐怖の中で、回復されてだんだんと痛みが薄れていくこの感覚さえ惜しいと思ってしまう。
『スキル:魔力砲弾LvMAXを習得しました。 』
『ダークネスニードル』と共にデビルガーゴイルに連射した『魔力砲弾』のスキルレベルがMAXになった。ハンマーに殴られたことで骨が折れた鈍い痛みで悲鳴を上げそうになるのをごまかすために連射した『魔力砲弾』だったが、こちらが先ほどのデビルガーゴイルへのとどめになったのだろうか。
スキルのレベルが上がったアナウンスが頭の中に響き、それが鎮静剤となったかのように、俺は冷静さを取り戻すことができた。いや、完全に冷静になったわけではないだろう。まだ若干の高揚感がある。
ここまでの試練の中でピンチというピンチがなかったのがこんなところに影響してくるだなんて思いもよらなかった。まだレベル2でしかない『欲望増大』のせいなのだろうが、こちらの世界に来てからどうも好戦的になった気がする。レベルMAXの『精神耐性』にはもっと仕事をしてほしいところだ。
落ち着いたところで、俺は全方位に展開していたシールドを一瞬だけ解除し、改めて前方以外の全方向に貼りなおした。その一瞬の隙をついて再現攻撃の弓矢が後ろから右肩に刺さるも、『迦楼羅』の炎に焼き尽くされて消える。
他の攻撃が再度出現した数多の盾に弾かれる中、盾をあえて貼っていない前方から迫るのは再現による5本の槍と、本体の2本の槍だ。阻むもののなくなった槍は、それぞれが重力を無視して俺を貫こうと迫ってくる。『獣の一撃』を付与した拳で先の5本をへし折った後、お目当ての2本の槍がそれぞれ俺の腹と太ももに突き刺さった。
『スキル:魔法槍召喚Lv1 を習得しました。 』
「ぐっ」
腹に刺さった魔法を帯びた方の槍が『喰らう瞳』に吸収され、開いた穴から血が噴き出る。少し遅れて足に刺さった物理槍の方も、最初に俺の頬をかすった時のように消えてデビルガーゴイルの手元に戻った。すぐに『再生』が始まるが、この痛みは消えてくれない。
「『クエイク』『ダークシールド』『ハンドレッドナイフ』『シールドバッシュ』!」
大砲の発射口のようにまっすぐ俺と槍持ちのデビルガーゴイルを結ぶ形に土壁を作りつつ、手元に新たに盾を生み出し、『空蹴り』で宙を蹴って加速しながらまっすぐに突っ込んだ。
両手に槍を構えたデビルガーゴイルは、まっすぐに青い瞳でこちらを見たまま、その槍を動かすことなくじっとしている。何かを待っているように。俺はどうやら賭けに勝ったようだ。
『シールドバッシュ』によってパージされた盾の代わりに槍持ち以外のデビルガーゴイルの攻撃が土壁にささり、あっさりとそれを破壊してのけると、地面に刺さらなかった分が角度を変えて俺に迫る。しかし、『シールドバッシュ』と『空蹴り』で加速する俺には追い付けず、槍持ちに『ハンドレッドナイフ』によりトゲ付きの盾と化した『ダークシールド』で突っ込み、その頭を拳で打ち砕く程度の時間は稼ぐことができた。
槍がカランと地面に落ち、青い瞳から色がなくなったのを確認すると、すぐに『ダークネスシールド』を何重にも貼って迫っていた攻撃群をしのぐ。
ロックオンされていなければ攻撃をしてこないという俺の予想は正しかった。俺もスキルとして活用していた『ロックオン』は、通常一発当てたら再度し直す必要があった。その仕様はデビルガーゴイルたちの使うそれも同じようで、ダメージと引き換えではあるが、相手を一時的に行動不能にできるのは大きい。俺自身当たる個所をうまく調整してやらないと大ダメージになるが、そこは妥協しよう。身を切らせて骨を断つ。あいかわらずの『再生』頼りの戦法だが悪くはない。
『スキル:魔法手槍召喚Lv1を習得しました。 』
最後の一体、短い手槍を投げるデビルガーゴイルの攻撃を籠手で受けてスキルを得る。最初のハンマーを使うデビルガーゴイル以外すべてからスキルを回収することができた。もう完全に欲に負けた。
時間が経ったことで再現の攻撃はかなり増えてはいるが、それを含めても初めのうちに感じていたような弾幕感はなくなっており、盾を広げて十分に捌ききれる量になっていた。
スキルの回収も終わり、再びロックオンをされる前に潰すべく『ダークネスランス』をばらまきつつ集束型の『ブレイクショット』を当てる。そのままデビルガーゴイルは瞳の光が消えた。かなり危ないところもあったが、なんとかWAVE60クリアだ。
『WAVE61/99』
ひとまず命の危機を乗り越え、どっと疲れが出る中、すぐに次のWAVEが始まり、魔法陣が現れた。ただ、これまでのように広間中に広がるほど大量に出てくるわけではなく5つだけ。そこから出てきたのは少し前にWAVE41で見た姿だった。
『真ゴブリンジェネラル』
『鑑定』によるとこいつらは41層で見たその上位種だった。全員持っている武器はばらばらだが、いずれも遠めに見ても一線級のそれと分かる代物で、正直鹵獲できるのならば是が非でもほしい武器だ。惜しいな。
俺が自身に各種エンチャントをかけなおすのとほぼ同じタイミングで一体の真ゴブリンジェネラルが他の4体にエンチャントをかける。それが終わると、一斉に真ゴブリンジェネラルたちが動き出した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
有効職業
聖魔??の勇者Lv17/?? ローグ Lv52/70
龍人 Lv11/20 精霊使いLv21/40
舞闘家 Lv34/70 大鬼人 Lv13/40
上級獣人Lv8/30 魔導士 Lv33/90
死龍人 Lv3/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
非有効職業
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100
アーマーナイト Lv1/99 剣闘騎士Lv1/99 』
先週は普通にダウンしてました。すみません。
夜勤ラッシュの2月が終わり、多少落ち着いてきましたが花粉がつらいです…。鼻水くしゃみが止まらない…。
世間では卒業シーズンですね。卒業の方、おめでとうございます。自分の大学卒業からもう3年も経っているなんて信じられない。ツキヒガタツノハハヤイナー。
ではまた次回




