『マツノキ』の依頼です2
「ユウカ様もですが、『マツノキ』の皆様に緊急の指名依頼です。依頼者もまだいらっしゃいますのですぐに来ていただけますか?」
職員さんは困ったような表情でそう話した。
「え? 嫌ですけど」
「メイ、それはないよ……」
「さすがに何も聞かずにっていうのはね」
「ただの指名依頼とあらばともかく、緊急の指名依頼じゃからの。ギルドにおって、依頼があるという話を聞いた以上、特別な事情もなしに帰るともなれば罰則を受ける可能性もあるのじゃ」
「今回の依頼主は領主様ですので、さすがにおとがめなしというわけにはいかないかと」
「だそうじゃ」
「仕方ないか。行きます」
「ではこちらへ」
俺たちは受け取った金をいったん俺のアイテムボックスにしまい、依頼人の待つ部屋へ向かった。
以前、ダンジョンを攻略した時にカードを持ってきた部屋にやってきた。
「お待たせいたしました。『マツノキ』をお連れしました」
「初めまして『マツノキ』の皆さん。ユウカ殿はお久しぶりです」
「第二段階のダンジョンが現れてすぐ以来かの」
「そうですね。紹介してくださいますか?」
「それがよいかの。メイよ、こやつはグリム・ワール殿じゃ。このグリムの町の領主をやっておる」
「初めまして。『マツノキ』のリーダーをやっているメイです」
「マナです」
「ヒツギです」
こちらが名乗るだけの簡単な自己紹介を済まし、グリムさんに促されてソファに座った。
「よろしく。そっちの奴隷ちゃんはファントムの子だよね? あー、警戒しなくてもいいよ。何かするようになんて言われていないし、面倒だからね。これ以上問題を増やされても嫌だ」
「大丈夫じゃよ、メイ。こやつはせんと言ったならば本当にしない男じゃ。どれだけ必要なことであってもの」
「ユウカ殿、そこはもう少し言い方ってものがあるんじゃないですかね? これでも町1つ治めている領主なんですよ?」
「こやつらに見栄をはったところで意味はないじゃろうて。それより、指名依頼、しかも緊急の指名依頼だそうじゃな」
「ええ。早急に対応していただかないといけない案件が発生しましてね。別件でかなり人がとられてしまってまして、対処できそうな人が少ないんですよ」
「どこぞでモンスターでも暴れているんですか?」
「まあ簡単に言ってしまえばそういうことだね。よくある話さ。まあ場所が場所だから、こうして緊急という形で出させてもらっているけど、通常の依頼と変わらないと思うよ」
「お主ほどの権力者からの依頼であるという点だけでも通常とは大きく違うがの。もし通常の依頼で貼りだしたら依頼を受けたいという冒険者が殺到するぞ」
「以前から何度か依頼を出してますが、そんなことはありませんでしたよ?」
「何をやっとるのじゃ!?」
「ユウカ、話が進まないんだけど」
「あ、すまんのう」
ヒツギに注意されてシュンとなるユウカをかわいいと思ってしまったが、それを悟られないように、グリムさんに続きを話すように促した。
「あはは。隠せてないよ?」
「続きを」
「やっぱりおもしろいなぁ。ユウカ殿が選ぶだけはあるね。これは強さという点も期待していいのかな?」
「話がないのなら帰りますよ」
「きついことを言うね」
「緊急の指名依頼ということだったので来たんです。通常の指名依頼なら受ける気はないんですよ」
「はっきりと言うね。依頼を慎重に選ぶのはいいことだけど、指名依頼というだけで断るのは感心しないかな。そのあたりはユウカ殿が何かしら話をしていると思うから僕からはしないよ。じゃあ前座はこれくらいにして話をしようか。これを見てくれるかな?」
グリムさんは自身の魔法袋から紙を取り出した。
「つい先日、町の北地区にある貴族の館で斬殺事件が起こってね。その日に館にいた人間が全員死んだ。使用人も、護衛も、館の主もね」
「ずいぶん物騒な事件じゃのう。話題になっとらんのが不思議なくらいじゃ」
「話題を広げられるような人もいなくなっていたからね。その日にたまたま休んでいた使用人の1人がそれを見つ
けてね。警備隊に駆け込んできたそうだよ」
「そこから領主様に話がいったということですか?」
「そうだね。さすがに事が事だから。念のために警備隊だけじゃなくて僕の護衛も何人か行かせたんだけど、調査の結果、その館に秘密裏に地下室が作られていることが分かってね。結構やばいことをやっていたようで、アンデッドが徘徊していたと報告があがってるんだよ」
「町中の、貴族の館の地下がアンデッドの巣窟になっているということですか?」
「同じ貴族として恥を晒すようでつらいんだけどね。今は専門の部隊で抑えてはいるけど、奥に厄介なアンデッドがいるようなんだよ。そいつはきちんと自我を持ち、知性がある。中に入らなければ何もしてはこないけど、中に入った人間を明確に敵として認識している。今は、だけどね」
「それが外に目を向ける前に、討伐したいということですか?」
「正確には、すでに外を向いているんだよ。何体かのアンデッドが外に出てきているのを確認してる。実は例の使用人がもう耐えられないって全部話してくれてね。その館の管理をしてた貴族、相当やらかしてるみたいでね。少なく見積もっても数百人単位で殺してるようだ。一般市民、商人、冒険者、関係者、奴隷。人体実験もしていたらしいよ」
「それだけの数の改造アンデッドがいるということじゃな。それが外に出てしまえば被害は少なくはないじゃろう」
「そういうわけで、まだ中にいるうちに動いてほしくて緊急で指名依頼を出したんだ。話が広がっても困るから」
「『マツノキ』はアンデッドの対処はあまり得意ではないんですが」
「昨日までならもっと適任がいたんだけどね。少しだけ話したけど、別件で町を離れているんだよ。威力の高い光魔法、あるいは火魔法が使える魔法使いと、敵を近づかせない強い前衛がいる。さらに貴族という人種に対してはっきりと言葉を告げられる。そういう条件で絞り込んだ時に、残ったのは君たちだけなんだ。他の候補はみんな戻ってくるのは一月くらい先になる予定だし、何か起こってしまった時には間に合いそうにない」
「そういう話ですと、断れないという前提で話します。報酬はここに書かれている通りで特に異論はないですが、この依頼は何をもって完了となるものなんですか?」
「というと?」
「この紙に書かれているのは、自我のあるボスアンデッドの対処とありますが、対処というのは完全に消滅させることなのか、それとも外に出ないようにすることなのか」
「そうだね。完全に倒せなかったとしても、外に出ない確約があるのであればそれでいいよ。ただし、その場合は他のアンデッドもすべて出ないようになってないと困る」
「それをそもそもアンデッドの対処が得意と呼べないパーティに課すのは横暴としか言えんのじゃ」
「そう言われても、こちらとしてはどうしようもないから依頼をしているんだ。だから僕は『できないなら受けるな』なんてことは言わないよ。『君たちにはこの依頼を受けて、解決してもらう』そう言うだけだ。この町を治める人間としてね。でも、永遠に、とは言わない。一月の間なんとかしてくれれば専門家に依頼できるから」
「つまり、一月の間アンデッドが出ないようにすれば依頼完了ということでいいですか?」
「よしとしようかな。一度依頼書を戻してくれ。……はい。修正したよ」
改めて渡された依頼書には、依頼の期間が一月であるという旨が追記されていた。
「報酬は依頼完了時点で支払わせてもらうよ」
「つまり一月後ということですね」
「ボスを倒したのを確認出来たらすぐにでも支払うさ」
「確認は誰が?」
「ギルド経由で連絡をもらえれば、すぐに人をやるよ」
「お主がするとは思わんが、下手な人物を送ったら容赦せぬぞ?」
「せっかく町に定着してくれているSランクを敵に回すようなバカをよこすつもりはないですよ。では、この内容で依頼を受けてくれるということでいいかな?」
俺はグリムさんの問いかけを受けて4人に視線を向けた。みんながうなずいたのを見て、俺もグリムさんに向き合いなおした。
「お受けします。この依頼書はどちらが?」
「これ自体はギルドに提出するけど、写しを2枚もらって、お互いに持っておくのはどうかな?」
「それでいいです」
「じゃあ僕は失礼するよ。写しは後日職員に僕の所へ届けてもらおう。同一内容なのはそちらが確認してくれ」
グリムさんは席を立つと、小走りで部屋から出ていった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv16/?? ローグ Lv44/70
重戦士 Lv53/70 剣闘士 Lv47/60
神官 Lv38/50 龍人 Lv8/20
精霊使いLv15/40 舞闘家 Lv27/70
大鬼人 Lv10/40 上級獣人Lv5/30
魔導士 Lv15/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
誤字報告をめちゃくちゃたくさんいただいております。
ほんとにありがとうございます。でも、まじで大丈夫? 数日で1000件くらいやったけど…
無理してないですか?
本編が進まないのはいつものこととして、俺が勇者じゃ救えない!?3巻発売から1週間が経過しました。
まだまだ本屋に並んでいるようです(察し)
書籍版オリジナルキャラクター、黒虎と、ヒメのにらみ合いのシーンは見物ですよ!
ではまた次回




