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死の草原です-sideキャラビー-3

前半はキャラビー視点、後半はまた違う人の視点です。

そしてあとがきは5月1日(明日)発売の俺が勇者じゃ救えない!?2巻の宣伝です。

お気を付けください。




 私とゼルセが苦戦していると、若い男と老齢の男性がやってきました。老齢の方は見たことはありませんが、燕尾服に身を包んでいますし、お付きの方なのでしょうか。そして、もう一人の方は非常に有名な方でした。


「なぜこんな奴がここに? ユウカ・コトブキ1人ならなんとかなるような戦力を集めてきたけど、Sランク2人なんて考えてないよ」


 タカもあせっているようです。現れたのはユウカ様と同じSランク冒険者のジョー様。『ガルチア』のギルドマスターで、一部では闇ギルドが嫌いという話でも有名だとユウカ様が言っていました。

 私はかすかに安堵の表情を浮かべ、ふっと息を吐きだしました。しかし、それを見たタカは何かを思いついたようで、先輩の方に頭を向けました。


「すまない! 町を襲おうとしていたモンスターを抑えている最中なんだ! 我々だけでは抑え切れない! 手を貸してくれ!」


 先輩が声を張り上げました。ジョー様たちからは角度的に見えていませんが、私からはゼルセを見る傘下の冒険者たちの表情がはっきりと見えていました。かつて何度も見たことがある、自分たちの勝ちだと確信して、絶望する相手を嘲笑う表情です。今の私はまさにその絶望の表情を浮かべていることでしょう。


「ほっほっほ、お困りのようですな。ここは老骨に鞭でも打ちましょうか」


「はぁ、爺さんは動かなくていいっす。この程度なら俺がやりますよ」


 そう言って、ジョー様は肩をぐるぐるとまわして感覚を確かめた後、ゼルセに向かって走り出しました。


「ゼルセ、気を付けて!」


「これであいつは終わったな。君もここで終わらせるけどね」


 タカのやりが再び私に伸びてきます。慌てて短剣で受け流します。流しきれずに槍が右腕をかすり、切れて血が出てしまいました。ゼルセを心配していられるほど余裕がないことをすっかりと忘れていました。

 腰につけた魔法袋にご主人様からいただいたヒール2の魔導書は入っていますが、それを取り出して使うほどの時間はありません。切れた服の布を軽く当てて血を吸わせますが、流れ出る血の量が多く、あまり意味がありませんね。


「おらぁ!」


 ゼルセと戦うジョー様の声が聞こえてきます。血が流れ出るせいか右手にあまり力が入らず、慣れない左手で短剣を持つ今がチャンスと見たタカが一気に攻勢を強める中、私は必死に槍をさばき続けます。腕はもうこの際多少かする程度ならば諦めます。ですが、足だけは確実に防がないといけません。ご主人様たちが来てくれるまで耐えるならそれだけは確実にこなさないと、逃げることになってもそれすらできなくなってしまいます。


「なかなかしぶといな」


「はぁ、はぁ、はぁ」


 言葉を返すこともできずに荒い息を吐くだけの私に、タカはさらにペースを上げて槍を突き出してきます。私はその槍を防ぎ続ける。

 攻撃を防ぎ続けるうちに、自然と周囲の音が何も聞こえなくなってきました。視界もだんだんと狭まってきて、タカと、タカが持つ槍の動きに全神経を集中させます。ゼルセが必死にジョー様を食い止めてくれている間にタカを止めないと。でも、今のままじゃ無理だ。少しでも強く、今の自分よりも、ほんの少しでも強くなる。一秒前、一瞬前の自分よりも強く。そうしないと、『バーニングバード』を救うどころか生きてご主人様に会えなくなってしまう。それは嫌! 


「あーもう! いい加減くたばれ!」


 焦れたタカの槍が私の横腹に突き刺さりました。槍が貫通して、腕の時とは比べ物にならない量の血が吹き出ます。ですが、不思議と痛みはありません。


「つか、まえました」


 私は右腕で自分の体を貫く槍をつかんで、固定します。タカが引き抜こうとする力の動きを感じますが、私の腕は離しませんでした。


「くそ! 離せ」


 私は槍を離さずに距離を詰めます。そして左手に握りしめた短剣をタカに突き出しました。


「いて!」


 体をひねってかわそうとしたタカの脇腹に短剣が突き刺さり、その反動でタカは槍を手放しました。

 支えを失って、私は、槍が刺さったまま後ろ向きに倒れます。


「-----。----!」


 なくなっていた痛みが体中に走り、誰かの声が聞こえる中、私は意識を失いました。


------------------------------------------


 俺、ジョーはうちのギルドのメンバーが急遽受けられなくなった護衛依頼を代わりに受けていた。

 事の発端は商人の護衛依頼を受けていたうちのパーティ『テラクス』が、その護衛対象のはずの商人に攻撃を受けたことだった。

 町から街へと移動するための護衛の最中、盗賊の襲撃を受けた。『テラクス』は『ガルチア』の中でも古参メンバーであるランクAのジャックが率いるパーティで、そこらの盗賊なんかに負けるような連中ではない。その時も、襲ってきた盗賊はあっさりと返り討ちにして、全員生け捕りにしたらしい。しかし、商人の中に盗賊に内通しているやつがいたようで、商人のまとめ役の指示で尋問を始めようとしたところ、突如飛びだしたそいつがジャックを後ろからナイフで突き刺した。

 すぐにそいつも捕縛し、まだ町からそう遠くなかったということで商隊は町に戻って、一命をとりとめた。刺さったところが悪く、流れたちの量が多すぎたこともあってかなりギリギリだったそうだ。しかし、すぐに依頼に復帰とはいかず、俺が代わりに行くことになったのだ。


 依頼主の意向で2人で歩いてグリムの町に向かっていると、入り口の近くで何やら戦闘しているバカどもがいた。


「何をやってるんですかね、こんな町の近くで」


「……ほう、見た様子とは違いますね。ジョーさん、あちらの今魔法を撃っている方、見覚えありませんか?」


「撃たれてるモンスターではなくてですか?」


「ええ。攻撃を受けている方はあちらの倒れている4人を助けようとしているみたいです。衛兵の2人が『闇の爪』、猫獣人とオーガ以外は傘下の闇ギルドですね」


「えっと……あー、あの男、断言できるわけではないですけど『コールドソング』のリーダーですね。爺さん、どうします?」


「一芝居しましょうか。あなたなら彼らでも余裕でしょう」


「動きを見る限りでは行けそうですね。では……おいどこのバカだ! こんな町の目の前でドンパチやってるやつは!」


「何やら事情があるようですよ? 風が教えてくれます」


 この人が言うと説得力が違う。やつらから手伝ってほしいという言葉が出るのを待ち、俺は体が動くのを軽く確かめて、まずはオーガが戦っている奴らを抑えに向かう。


「あなたが味方なら心づよアヴァ!」


「いったい何をうぅ」


「寝てろ」


 冒険者たちをさっさと気絶させ、俺は衛兵の格好をしている『闇の爪』のメンバーに殴りかかる。


「ジョー殿、何を」


「『闇の爪』が何を言ってやがる。ターゲットは倒れている4人か?」


「……Sランクはこれだから嫌なんだ。どいつもこいつも察しが良すぎる」


「何を企んでいるのかは知らんが、思い通りにいくと思うなよ」


 俺はそいつ突き出してくる槍を殴り折り、フルフェイスの兜に守られた顔面に拳を叩き込んだ。兜をぶち抜いて鼻の骨を折る感覚が伝わってくる。そいつはふっとんでそのまま動かなくなった。突きはそれなりに鋭かったがそれだけだ。何か奥の手でもあったのかもしれんが、使わせなければ何の問題もない。


 一人仕留めた俺はもう一人、猫獣人の嬢ちゃんが戦っている相手の方を見る。爺さんも見ていることだし問題はないと思うが、ありゃ周りが何にも見えていないな。完全に入り込んでしまっている。


 男の槍が嬢ちゃんに突き刺さる。その状態から嬢ちゃんは無理矢理短剣を男に突き刺した。男が槍を手放したことで奥までは刺さっていないようだが、ダメージはあるだろう。

 しかし、嬢ちゃんはそこまでだった。あちこちに傷があり、中でも最後の腹の傷から血が流れすぎている。爺さんのほうを見たら、すぐに手当ての準備をしていた。死なせるには惜しいよ、こいつは。


「嬢ちゃん、無理させて悪かったな。あとは爺さんに任せておけ!」


 俺は倒れる嬢ちゃんに声をかけて、逃げようとする男との距離を詰めて地面に叩きつける。つい強めに殴ってしまって腰骨が折れる感覚がしたがまあ生きていればいいよな。


 嬢ちゃんの手当てを爺さんに任せて、俺は闇ギルドの連中の捕縛に移った。




どうもコクトーです。


昨日は設定で1日使った気すらしています。

それは置いとくとして、今回も宣伝になります!


いよいよ明日(5月1日)に俺が勇者じゃ救えない!?の2巻が発売になります!

前話でもいいましたが、活動報告でイラストを公開しています。ぜひそちらもご覧ください!

北熊様の素晴らしいイラストが見れます!

ほんとすごいんですよ!最高です!


今回はなんとtwitter キャンペーンも実施しています!

購入していただいた2巻の写真と、

「#俺が勇者じゃ救えない」

のタグをつけてツイッターで投稿していただくと、特典SS

『ヒメで遊ぼうー棒跳び編ー』

を読むことができます! 詳しいことはHJ文庫の公式ツイッター、もしくは自分のツイッターで公開していますよー!


5月14日までの2週間しかありませんのでお忘れなく!


ではまた次回。

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