死の草原です7
俺がくぼみから出てくると、外ではすでに戦闘が終わっており、真ん丸男は首が落とされ、ドワーフの方はヒツギの物理的な鎖とコルクの魔法の鎖の二重の鎖で縛られていた。ドワーフの使っていた武器はドワーフからは離れたくぼみの近くに落ちている。呪いの武器ならば呪い吸収、呪われていなければ普通に武器として使えるかもしれないな。
俺は『小規模ワープ』で武器を拾いに行き、アイテムボックスにしまってヒツギのもとに向かった。
先に移動を始めていたマナたちに遅れて俺はヒツギたちのところに着いた。みんなマナのヒールによって傷は無くなったが、ユウカはかなり疲れているようで、マナに肩を貸してもらっていた。
警戒を解かずに捕らえたドワーフの監視を続けているコルクとは違って、戦闘が終わり次第不意打ちで俺の上に跳んでいたヒメはいつものだらーん体勢で休んでいた。まあ活躍したとは思うし、今回は見逃そう。
「みんな、お疲れ様。ユウカは大丈夫か?」
「魔力を使いすぎたのじゃ。お主らと違ってわしは魔力はそれほど多くないからの」
「マナ、変わるよ」
「お願いね」
俺はマナと代わってユウカに肩を貸す。これでもまだ辛そうだし、帰りはおぶっていくかな。
「それにしても、よく生け捕りにできたな」
「相性の問題かな。それに、壊れない鎖と魔法の鎖を何重にも重ねてるから、動けないと思うよ」
ヒツギの言葉で改めてドワーフの方を見る。足の先から口元までぐるぐると鎖が巻かれており、舌を噛んで死なないようにコルクのダークネスチェーンが口も開かせていた。
「こいつの魔王珠は?」
「右腕に埋まってたよ。使われる前にコルクが砕いたけど」
「そうか、よくやったコルク」
「あれは危険なものだ。せっかくヒメ様が壊したというのに、復活させるなどとバカげたことをしてくれた」
「やっぱ『アントホーム』にあったやつか?」
「ヒメ様が言うにはそうらしい。その欠片から作り出した物なのだろうと」
「なるほどな。でも、こいつを捕まえられたのはラッキーだな。誰がユウカを狙ったのか吐かせることもできるし、闇の爪のメンバーに関してもいろいろしゃべらせることができるかもしれない。魔王珠なんて物を与えられて、第二段階で暴れているようなやつだ。前に俺とアールムが捕まえたやつよりもよっぽどいろんなことを知ってるだろうよ」
「そう簡単にはしゃべってくれないじゃろうがな。過ぎてしまったことはどうしようもないが、あのエルフを生け捕りできておればのう」
「仲間割れで殺されちゃったからね。もう死体もどこにあるかわからなくなっちゃった」
マナの言葉で俺たちは軽く周りを見渡してみた。ただでさえ散らばっていた死体は、3か所で行われた戦闘によって、さらにバラバラになってしまっていた。俺のヴァンハルトの戦闘では死体自体がなくなっているものもたくさんあるし、ヒツギたちのほうではドワーフが空けた穴に落ちたものもありそうだ。
真ん丸男くらい特徴的な死体ならともかく、杖も回収されて、頭もなくなったエルフの女だ。エルフ自体はアンデッド冒険者の中にもいたし、俺が頭を潰したのもいる。探すのは難しいだろうな。
「ないとは思うけど、復活されないように死体を全部焼いてこいつを冒険者ギルドに連れて行くか。キャラビーも気になるし」
「ゼルセかみぃちゃんからはなにもないの?」
「俺の魔力に戻ってないからわからないかな。ヒメ、どうだ?」
「かうかうー」
ヒメは頭の上で首を振る。何も連絡はなさそうだ。
「主!」
みんなの視線がヒメに向いた時、コルクが焦ったような声を上げた。見ると、ずっとおとなしいと思っていたドワーフが様子がおかしくなっていた。
「マナ! 回復を」
「ヒール3」
顔がどんどんと青ざめていくドワーフ。マナの回復魔法でもまったく治る様子がない。
「毒だよ!」
「そっか、アンチポイズン!」
ドワーフの体にさらなる魔法が降りかかる。それによって進行は止まったものの、その様子からはもう助からないだろうということだけはわかった。
「コルク!」
「解除」
コルクのダークネスチェーンが消え、口元が露わになる。
「あまちゃん、どもめ」
ドワーフが口を開く。その際に、口の中にいる細い何かが見えた。
「芋虫?」
ドワーフの口の中で蠢くそれは小さな芋虫のようだった。散々暴れていたのか、血だらけで真っ赤になっている。
「これで終わりだと思うなよ!」
毒が完全に回復しきれなかったのか、目と耳から血が流れ始めたドワーフはそう叫んで命を落とした。ドワーフが死んだのがわかったのか、口の中から指が出てきた。すぐに地面に逃げようとするそれに『アイスレーザー』をぶつけて凍らせる。凍り付いたそれは、そのままドワーフの頭から滑り落ちて地面にぶつかり、砕け散った。
「せっかくの情報源が……」
「闇の爪もそう易々と情報はくれんということじゃな。死者から情報を抜き出す方法もないわけではないが、ここまで来るとそれも厳しそうじゃのう」
目の前でドワーフの体が朽ちていく。真那が回復しきれなかった毒がいかに強力なのかがうかがえた。
「見て!」
マナの指さした先でドワーフと同じように真ん丸男の死体も朽ちていた。それを見た俺は『ファイア』を飛ばして焼いた。進行具合を見ると、あちらが先だとは思う。『気配察知(魔物)』に反応はないが、万が一もう一匹いるのなら危ないしな。
「他の死体も触らない方がいいかもしれんの。魔法で焼くか、ダンジョンが吸収してくれるのを待った方がよさそうじゃ」
「接触で毒が移ると危ないし、私が焼くよ。それより、ドワーフが気になることを言っていたよね」
「『これで終わりだと思うな』か。まだまだ狙われる可能性があるってことだよね」
「わしを狙う者がまだまだおるということじゃな。巻き込んでしまってすまんの」
「気にするな。ユウカにも都合があるだろうしな。早いとこ焼いてギルドに向かおう。キャラビーも待ってるだろうし、いつまでも放置してるとゼルセが問題に巻き込まれ……」
そう話していると、みぃちゃんが俺の魔力に戻って来た。ヒメもそれを感知したのか頭をペチペチ叩く。
「みぃちゃんがやられた?」
戻って来たみぃちゃんだが、いつものヒメや黄龍のように自分で戻ったわけではなく、やられて戻って来たようで、すぐに再召喚ができないほどにダメージを受けていた。
「キャラビーが危ない! コルク、死体を焼いて戻れ!」
「火炎壁、ファイア」
コルクが指示に応えるように死体に火魔法を撃ち始める。俺がぽつりとつぶやいた言葉が聞こえたユウカはともかく、マナたちは状況がつかめていないようだった。
「みぃちゃんがやられた! やつらまだ仲間がいたらしく、キャラビーが狙われてる可能性が高い!」
「やばいじゃん! すぐに行こう」
「入口は……向こうだね。ゼルセは?」
「まだ戻ってきてないから生きてるはずだ。あいつが生きてる間は守ってくれてるだろうが、そういつまでももつわけじゃない」
「魔王珠を持っておると考えた方がよさそうじゃしな。わしは後から合流するのじゃ。お主らは先に」
「行くぞ!」
俺はこの場で待とうとするユウカを背負い、背中に幸せと妬みの2つの感情を感じながら転移陣まで急いだ。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv16/?? ローグ Lv44/70
重戦士 Lv53/70 剣闘士 Lv47/60
神官 Lv38/50 龍人 Lv8/20
精霊使いLv15/40 舞闘家 Lv27/70
大鬼人 Lv10/40 上級獣人Lv5/30
魔導士 Lv15/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
久しぶりのメイ視点でした。
次回はまた別視点になると思います。
あと2日で自分も社会人としての生活が始まります。
そうなったら投稿は遅れると思います。
なんとか時間を見つけて続けますので宜しくお願いします。
ではまた次回




