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明の森、休みです2



 扉を開けて中に入ると、ギルドの受付のような部屋が待ち受けていて、カウンターの内側には頭に赤いバンダナを巻いた猫獣人の女性が立っていた。


「ユウカ様、ようこそいらっしゃいました」


「今回は『赤の団』がホストなのじゃな」


「はい。ですが、アールム様直々に選んだ者だけで対応しますので問題は起きないかと思います」


「あやつも大変よのう」


「最近は特に忙しそうですね。今日は息抜きも兼ねていると言っていました。仕事なのに息抜きって」


 アールムのことを若干笑いを堪えながら話す女性だが、その視線が不意にこちらに向いた。


「失礼ですが、どちら様でしょうか? ギルドの証は……無さそうですが」


「わしのこれじゃ」


 俺が何かを言う前に食いぎみにユウカが小指をたてて答えた。


「だれが彼氏だ」


「そうじゃったな。言い換えるのじゃわしの夫じゃ」


「おい!?」


「ユ、ユウカ様に、男が!? 急いで知らせなくちゃ!」


「おい、あんたも!」


 ユウカの冗談を真に受け、女性は受付を飛び出して奥の部屋に走り去っていった。受付はいいのかよ。


「かっかっか。予想以上の反応じゃったな」


「ユウカ、あんまり嘘をつくな。真に受けて受付いなくなっちまったじゃねえか」


「さっきラムも言っておったじゃろ? 今日はアールムがおると。すぐに戻ってくる。……と、言った側からじゃな」


 そう笑いながら話すユウカにつられて女性が走り去っていった通路に目を向けると、アールムが目に涙を貯めたさっきの女性を首根っこを掴んで持ってきていた。女性は頭をさすりながら受付の席に戻ったが、横目でこちらを見ていた。


「ユウカ様、メイ様、うちの者が失礼しました」


「別にわしは構わんのじゃ。この後も同じようなことはあるじゃろうしな」


「中にいる方には既に伝えましたので、姿を見せて驚かれて、ということはないと思います」


「中にはだれがおるのじゃ? 一応集合まではまだ多少時間があったと思うが」


「『赤の団』からはティグレ様と私、『怒涛のティラノス』から3名、『青き空』と『黒き翼』は各々2名、他にも3パーティから1名ずついらしております」


「白のとこはまだ来ておらんのか?」


「『白き御旗』からは今回は不参加と連絡をいただいております。参加する予定だった方に冒険者ギルドの強制依頼が来たようで、来られなくなったと」


「なるほどの。それならば仕方ないのじゃ。しかし強制依頼は厄介じゃのう」


「ですね。私も以前苦労しました」


「だれもが経験のあることじゃろうて。さて、そろそろ受付を済ませてくれんか?」


「失礼しました。メイ様はユウカ様の同伴ということでよいのですよね?」


「うむ」


「それでは、メイ様、この会合の話は聞いておられますか?」


「詳しくは聞いてないな。それより、その話し方はどうにかならないのか? こないだとは別人みたいだが」


「今回はもてなす側として接してますからね。一人だけ接し方を変えるということは致しません」


「そういうことなら仕方ないか。今日はよろしく頼む」


「はい。注意事項としまして、正直に言いまして、運営の私たちではあなた方の喧嘩は止めることはできません。ご自分、もしくは紹介者であるユウカ様に止めてもらってください」


「かなり適当だな」


「今日の運営の中で最も強いのが私です。私では本日いらしている人の8割は勝てません。足止め……になればいいほうですかね」


 そういうアールムも決して弱いわけではないと考えると、第二段階に挑んでいる人々の実力がうかがえる。仮にも異名までつけられている男が足止めにもならないと言っているんだからな。


「そういうわけですのでお願いしますね、ユウカ様」


「わかっとるのじゃ。といっても、こやつがそうそう危ない目にあうとは思わんがな。トラブルには巻き込まれるじゃろうが」


「あまり会場は壊さないでくださいね。修繕が大変ですので」


「だそうじゃぞ」


「前向きに検討するよ」


「それでは中にご案内します。私のあとについてきてください」


 アールムの言葉に従って、俺たちはそのあとに続いた。


 廊下を進んでいくと、すぐに会場に着いた。入口の大きな両開きの扉をくぐった先には、パーティ会場と呼べるような会場が準備されており、入ってきた俺とユウカにほかの参加者たちが一斉に視線を向けた。


「かっかっか。注目されておるの。悪い気はせんが、良い気もせんの」


「俺は嫌な予感しかしないよ」


 会場にいる人々はお互いをけん制しあっているのか、遠巻きに見ているだけで何もしてこなかった。しかし、この沈黙はなかなかきついな。


「メイ、自己紹介でもしたらどうじゃ? お主がせんならわしがしてもよいが」


「あることないこと言われそうだし俺がする」


 ユウカがまた変なことを言い出す前に俺は1歩前に出て自己紹介を始めた。


「えー、あー、はじめまして。『マツノキ』のリーダーをしているメイです。今後第二段階に挑む中でどこかしらかで会うこともあるかと思うし、顔見せもかねてユウカからの紹介で来た。どうぞよろしく」


 俺の自己紹介に、え? それだけ? と言いたげな視線が大量に突き刺さる中、手前の方にいた女性の一人が手を挙げた。


「しつもーん。ずばり、ユウカさんとの関係は!?」


「恋び」


「居候と家主」


「と……つれないのう」


「油断も隙もあったもんじゃねえな。そこの人、質問の答えは居候と家主の関係だから。俺のパーティで所有してる館にユウカも住んでるってわけ」


「ユウカさん、ほんとですか!?」


「残念ながら今は(・・)まだ本当じゃ。『マツノキ』の館は朝の鍛錬の時にわざわざ門を出ないで済むから便利なのじゃ」


「門を? ……あー、あの呪われ屋敷ですか?」


「その通りじゃ。既に呪われてはおらんがな。ただの広い館じゃ」


「あんまりペラペラと話されるのは困るんだが」


「それはすまんの。ほかに質問がある者はおらんかの?」


 ユウカが尋ねたところ、奥でニヤニヤしているたしかティグレとかいう名前の獅子獣人以外の全員が手を挙げた。


「大人気じゃな。メイよ、誰からいくのじゃ?」


「手前から順番で。できたら名前も教えてほしい。正直かなり疎いんだ」


「そういうことじゃから、左からいこうかの。ほれ」


「あ、はい。『フリージア』のアーラです。ユウカさんとの出会いは?」


 その質問をきっかけに、ユウカとの話を根掘り葉掘り聞こうという質問が相次いだ。途中で何人かは俺自身、あるいは『マツノキ』のことを聞いてきたが、答えて問題のないようなことばかりだったので問題ではなかった。魔法のこととか武器のこととか聞かれてたらさすがに答えられなかったしな。


 そうして質疑応答を続けていると、バンと大きな音を立てて背後の扉が開かれた。


「ユウカ様! どこの馬の骨ともわからないやつと一緒というのは本当ですか!?」


 他のやつらは比較的軽装で来ている中、ごてごてとした鎧をまとって現れたその男は、会場を一通り見渡して、すぐ近くに立つ俺に苛立ちをこめた視線を向けた。


「お前が!」


「なんじゃデルクイオ、慌ただしい」


「ユウカ様! まさか、この男と!」


 デルクイオと呼ばれた男は、ユウカの言葉に、すがるような表情で聞いた。俺はその時にユウカがかすかに浮かべた笑みを見逃さなかったが、止められなかった。


「一緒に暮らしとる仲じゃ」


「そん……な……」


「誤解を生むような言い方をするな!」


「お前が……お前みたいなやつがユウカ様を! 貴様、今この場でユウカ様を賭けて俺と勝負しろ!」


「断る」


「俺が勝ったらユウカ様を開放してもらう!」


「知るか」


「ユウカ様見ててください! あなたの一番の教え子、デルクイオ・カモミールが、あなた様の期待に応えて見せます!」


「……めんどいな。『シャドウハンド』」


 俺は影の腕を伸ばしてデルクイオの全身を縛り付ける。


「くっ、離せ!」


「この程度の魔法も解けないのに勝負とか言ってんじゃねえよ」


「正々堂々」


「あぁ?」


「ひぃっ」


 俺は『咆哮』をピンポイントでデルクイオに向けて凄んだ。デルクイオは涙目、いや完全に泣いていた。『シャドウハンド』で伝わってくる抵抗も弱々しくなった。


「今からでも勝負するか?」


「ひっひぃい!」


 俺の言葉にデルクイオは泣きながら一心不乱に首を横に振る。この集まりに参加するということはそれなりの実力者のはずなのだが、なんだか拍子抜けだ。


「はっはっは! あー面白かった」


 奥で一人傍観していたティグレが急に大声で笑い始めた。


「影の使い手がいる目の前でその得意な魔法をこの程度と言い切るとか。アールム、お前の出る幕がねえじゃねか」


「私では止められないことはわかっていますから、何とも思いませんよ。それより、メイ様もその辺で開放してあげてください。デルクイオ様、そして『夕騎士』の方は問題を起こしたペナルティとして今回の参加は見送っていただきます。タウレル様もそれでよろしいですね?」


「ええ。今回は連れて帰りますよ。一緒に来ていたのが私でよかった……のかな。他の者だったら同じように激高していたかもしれないですし」


「なんじゃ、タウレルはメイのことを知っておったのか?」


「噂に聞く程度でしたが、ユウカ様と猫獣人の奴隷少女が一緒にいるところはよく見かけられていますし、その少女は彼とともにいるところもよく見る。それを頭に入れていたので、聞いた時に真っ先に思い当たったのです」


「なるほどの。こやつは知っておらんかったのか?」


「どうでしょうね? 私にはわかりかねます。皆さま、お騒がせしました。次回来るときに謝罪もかねてフルーツでも持ってきます。次回は『青き空』が主催であってますか?」


「そうです」


「それでは『青き空』のお二方、次回持ってきますのでよろしくお願いします」


「はいはーい。帰ったら伝えときまーす」


「失礼します」


 タウレルはいつのまにか気絶していたデルクイオを担いで会場から出て行った。

 

どうもコクトーです。


『刈谷鳴』

職業

『ビギナーLvMAX(10)

 格闘家 LvMAX(50)

 狙撃手 LvMAX(50)

 盗賊  LvMAX(50)

 剣士  LvMAX(50)

 戦士  LvMAX(50)

 魔法使いLvMAX(50)

 鬼人  LvMAX(20)

 武闘家 LvMAX(60)

 冒険者 LvMAX(99)

 狙撃主 LvMAX(70)

 獣人  LvMAX(20)

 狂人  LvMAX(50)

 魔術師 LvMAX(60)

 聖???の勇者Lv15/??

 薬剤師 Lv57/60

 ローグ Lv42/70

 重戦士 Lv44/70

 剣闘士 Lv41/60

 神官  Lv28/50

 龍人  Lv4/20

 精霊使いLv7/40

 舞闘家 Lv12/70

 大鬼人 Lv4/40

 死龍人 Lv1/20

 魔人  Lv1/20

 探究者 Lv1/99

 狙撃王 Lv1/90

 上級獣人Lv3/30

 魔導士 Lv1/90 』

またも遅くなってすいません。区切りがつかず、いつもより長めです。

途中に出てくる『夕騎士』ですが、読み方は「ゆうきし」です。

カタカナのタで、「たきし」ではありません。


ではまた次回

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