第3試合です1
第1試合は見ていて胸糞悪くなるような内容だった。プラチナタイガーの首輪にリビングアーマーが吸収されたのを見てすぐに鑑定したところ、その首輪の名前は『隷属の首輪』。そんなものを使っているということ自体がもう腹が立って仕方なかった。
もともとあのヴァルミネという女にはムカつくところはあったが、それでも今はもう完全に怒りに変わっている。『鑑定』の効果で詳しく調べることができたのだが、『隷属』は対象の意思、思考、行動のすべてを奪い、ただの操り人形に変えてしまうのだ。そんなことができるあのアイテムを使用する許可を出している大会の運営側もそうだが、そんなものを平然と使うあいつも頭がおかしいんじゃないか。
第1試合終了後、俺はポールと話そうと思いヴァルミネの下に向かったというポールを追いかけた。
そしてようやく見つけて声をかけようとしたところ、ぐっと路地裏に引き込まれた。
「何をする」
「いやすまんな。少し気になる所があってな。あやつらの話が完全に終わるまでは待っていてもらえないだろうか?」
「とりあえず名乗ってもらえないか? 理由はわからなくもないが名前も名乗らないように奴は信用ならない」
「おっと、忘れていた。私はノノという。第1試合に出ていたワイバーンの主だ」
ノノと名乗ったその女性は、第1試合で決勝に進んだワイバーンの主だそうだ。あいつはかなり強そうだったが、それを従えるあいつの実力もそうとうなものだと思う。
「そうか、俺はメ…シャドウだ。第3試合に出る」
「よろしくシャドウ。あのプラチナタイガーの首輪はかなりやばいものだった。それが気になったのだ」
ノノもあの首輪のやばさに気が付いていたようだ。まあ見ればすぐわかるようなことだったが。
それから、会話が聞こえるような位置にこっそり移動した俺たちは、最後までそのやりとりを見ていた。途中でバルが殺されかけた時には飛び出そうになったがノノに止められてなんとかおさまった。そして、最後までやり取りを見た結果、ヴァルミネの奴に対して並々ならぬ怒りを覚えてその場所を後にした。
コロシアムに戻ると、第2試合も終盤を迎えていた。残っていたのは4体。キングスライム、レッサーワイバーン、パラウルフ、シャドーモグリューの4体だ。実際に戦っているのはシャドーモグリューを除いた3体なのだが、その余波で隠れていたシャドーモグリューがリタイアした。あんまりその場から動かないキングスライムの影に隠れるとかなかなか賢いな。
そして今レッサーワイバーンがキングスライムの触手につかまった。そのまま体内に引きずり込まれる。レッサーワイバーンも必死にブレスをはいて抵抗するものの、キングスライムのほうが強かった。レッサーワイバーンは溶かされてリタイアになった。
『決まったぁあああああ! 第2試合の勝者は、スライム一筋20年、ジルビダ選手のキングスライムと今大会が初出場、タミア選手のパラウルフ!』
パラウルフは何体か戦ったことがあるな。いきなり転移されてびくりしたなぁ…。キングスライムほんとでかいな。
それから第3試合までそんなに時間がないということだったので、俺はヒメを呼んでコロシアムの広場に出た。
広場では、ついさっき第2試合が終わったところだというのに、すでに大半の出場者は広場で各々のモンスターの最終確認をしていた。俺もしようかな。
ヒメを頭の上から降ろして俺の顔の高さで抱き上げてヒメに話しかける。
「ヒメ、調子はどうだ?」
「かう!」
「調子よさそうだな。ヒメ、どうしても決勝で戦わなきゃいけない理由ができたんだ。あのプラチナタイガーだ。あいつの首輪を、決勝の舞台でぶっ壊してほしいんだ。頼めるか?」
「かうかう! かああうかうかう?」
ヒメはいつものように右足を上げて返事をすると、まるで「思い切り戦っていい?」とでも言っているようだ。ヒメの言葉がわかるようになりたいな…獣人のレベルが上がれば話せるようになるかな…。
「いいぞヒメ。予選から思いっきりやってやれ。なんならアンセスタークイーンアントを呼んじゃってもいいぞ?」
「かうかう」
違う違うと首を振るヒメ。違ったか…。
『間もなく第3試合を始めたいと思います。モンスターを参加させる皆様は手早く結界の外に出てください』
アナウンスが流れた。俺はヒメを一度ギュッとしてから結界のぎりぎりにおろしてそのすぐそばに俺も出る。別に遠くにやっておくのが不安だとかそういうのは一切ないからな? かかかかか過保護なんかじゃないからな!!
ちょっと動揺したが改めて全体を『鑑定』しながら見渡してみる。
大きなやつから小さいやつまで様々だが、周りの奴より一回り大きいのがいる。あいつがおそらくノノのライバルのモンスターだろう。鑑定をしてみても、そいつは竜種だった。
『ランドドラゴン(竜種)』
東洋の竜というよりは、翼のない西洋の竜といった感じだ。色は茶色だが、腹の方は色が白かった。腹を除いた全身をうろこが覆っており、あまり攻撃は通りそうにない。俺ならなんとか下に潜り込んで殴りつけるか切り刻むかだな。あれ、俺そういえばまだドラゴンと戦ったことないな。そのうち戦う機会があるかな。
『準備が整ったようです。それでは、従魔の部予選、第3試合開始!』
「かあああああああああああああああう!!!」
開始と同時にヒメがコロシアム全体に響き渡る大音量の雄たけびを上げた。他のモンスターの中にも叫び声を上げようとしたり、実際に叫んでいた者はいたが、完全に飲まれた形だ。
その大音量の発信元であるヒメに全観客、選手、モンスターの視線が集まっていた。
正確に言えば、ヒメの後ろに現れた、直径6mほどになる魔法陣に集まっていた。
---------------------------------------
そいつは生まれた。主を守るために
そいつは戦った。主を守るために
そいつは傷ついた。主を守るために
そいつは鍛えた。主を守るために
そいつは喰らった。主を守るために
そいつは倒した。主を守るために
そいつは殺した。主を守るために
そいつは捕えた。主を守るために
そいつは強くなった。主を守るために
そしていつしか群れのボスになった。
それまで以上に頑張った。
そいつはさらに鍛えた。強くなった。勝った。勝ち続けた。
そいつは進化した。主を守るために。
1層、また1層とどんどん減っていった。
それでもそいつは戦い、傷つき、倒し続けた。
すべては主を守るために。
しかしある時、そいつは負けてしまった。初の敗北だった。
そして完全に吸収された。
そいつは己を恥じた。吸収され、消え去ったはずが、それだけはできた。
恥じて、恥じて、恥じ続けた。
自分の中から主との繋がりがなくなった。
主が死んだ。
しかし、同時に2つのリンクがうまれた。
1つは自分を喰らった男のもの。もう1つは死んだはずの主のもの。
主のリンクは弱かった。以前とは比べ物にならないほどに。
そいつは思った。
今度こそ主を守ると。自分は再び主に尽くすことができるのだと。
そいつは体を作った。吸収されて消えたはずの体を。
ともに喰われた配下の魂もすべて使った。配下たちも望んですべてを差し出した。
そしてそいつは進化した。更なる高みへと。
そしてついに主に呼ばれた。
お前の力を借りたいと。
そいつは歓喜した。ようやく主の盾に、剣に、力になれると。
そいつはこの世に顕現した。
真っ赤な5mもの躰に、太くてそれでいて無駄のない手足、頭にその象徴たる2本の漆黒の角をもつそいつ。
----------------------------------------------
「ぐがぁがああああああああ!!!!」
オーガキング種亜種、数多のオーガを総べる、オーガキングを超えたもの。
オーガエンペラー。
圧倒的な力を持つそいつが、主の力となるべく、現れた。
どうもコクトーです
『ヒメ』
種族
『白虎』
主
『刈谷鳴』
眷属
『アンセスタークイーンアント
オーガエンペラー
???
??? 』
今回はヒメの情報です
といっても少ないですが…
前回の話で実は記念すべき100話でした!!
ぶっちゃけ気づいてませんでした(笑)
思えば思い付きから始まったこの物語(あ、今もか)
これからものんびりいきましょー
ではまた次回




