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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第三章 友達を追いかけて
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3.1.居なくなった友人

第三章です。

予約投稿を忘れかけました。危ない


 閑散とした神社の近辺を、木の葉が大量に舞っている。

 木枯らしを感じさせるススキが山道を挟むようにして立ち並んでいた。

 乾燥しきった木の葉がくしゃりと足の裏で音を鳴らす。


 小脇に抱えられたカバンの中から、カメラを取り出した。

 パシッと音を立ててシャッターが切られると、データの中に画像が保存される。


「……どこ行ったんだよ」


 忌々しそうにそう口にした男は容姿端麗の美男子だった。

 髪の毛は少し長い。

 それは茶色に染められており、耳にはピアスがぶら下がっている。

 ぱっと見ただけではヤンキーに見間違えられそうな容姿ではあるが、成績はそこそこ優秀だ。


 ベージュのコーデュロイジャケットを着こみ、手にはカメラの他にパイプを持っていた。

 これは先ほど拾ったものだ。

 手入れがされていない道なので、これで草を掻き分けてここまでやって来た。


 その後ろを、おどおどした様子で着いてきている女がいる。

 男の苛立ちを感じ取っているようで、常に口を噤んでいた。


 彼女は少し背が低く、気弱そう優しい顔立ちをしている。

 ロングの髪の毛はよく手入れされているようで艶があり、後ろで束ねられていた。

 先ほどの男と横に並べばカップルだと思われてもいいほどの美しい容姿だ。


 ロングコートを寒そうに着込み、手には手袋をはめている。

 マフラーも綺麗に巻かれており、防寒対策はばっちりなようだ。

 寒がりなのだろう。


「り、陸さん……」

「なに?」


 眉をひそめたまま、陸と呼ばれた男が振り向いた。

 やはりまだ不機嫌そうだ。

 だが彼女、雪野彩(ゆきのあや)は彼が不機嫌な理由を知っている。


「どうやって見つけるの……? いない友達(・・・・・)を……」

「いるって言ってんだろ!」

「っ……」


 境内に響く大きな声がぶつかってくる。

 言い過ぎた、と思った早瀬陸(はやせりく)は、はっとしてから自分の頬を殴りつけた。


「いて。……すまん……」

「ううん、大丈夫……」


 早瀬は昔から明るい男の子だった。

 そんな彼は大学に入って面白い奴を見つけたと言いながら、オカルトサークルに入った。

 三人だけしかいないサークルだったが、それでも楽しかったことは覚えている。


 だが今は、二人しかいない。

 二人しかいないことになっているのだ。


 早瀬と雪野は、オカルトサークルのメンバーが三人だったと確信している。

 だが他の誰に聞いても、元から二人だったとしか返ってこない。

 携帯の連絡先にも、学校の名簿にも、小中高のアルバム写真にもその存在が見当たらない。

 いたはずの友達がすべての記録、記憶からいなくなってしまっていたのだ。


 だが確かに覚えている。

 顔も思い出せないもう一人の存在が、共にサークルで笑い合った日のことを。


「携帯の履歴にも何も残ってない……。だけど最近調べようと思っていた場所はここの筈。他に予定はなかった」

「その……もう一人が、ここに一人で来たって事?」

「俺が行かせたのかも。でもここは調べよう」


 自殺スポットと名高い富ノ裏神社。

 こんな所に来る奴なんて、本当にその願望を持っている者たちだけだろう。

 おっかなびっくりしながらではあったが、二人はついにこの神社までたどり着いた。


 普段ならお気楽な調子で適当に散策するのだが今回は違う。

 居なくなった友人を探す重要な調査だ。

 ぶっちゃけここで手がかりがなければ、もう打つ手がない。


「ん?」


 茂っている草むらの中に、きらりと反射した何かが視界の中に映った。

 晴れているから光物が反射したのだろう。

 なんだろう、と思ってそちらの方まで歩いていく。


 神社の横を通り過ぎ、裏手に出た。

 なんとなく光を見た場所の近辺を探っていると、黒い塊を発見する。


 それは見覚えがあるカメラだった。


「これ……」

「サークルの備品……! 私たち、ここに来たのは初めてだよね……?」

「そうだ。そのはずだ」


 この神社には一度も来たことはないはずだ。

 だがここに、サークルの備品が落ちている。

 ということは、やはりもう一人がここに来たということが確定する。


 意外にも早く大きな手掛かりをつかんだことに、ガッツポーズを思わずとった。

 もしかしたらこのカメラの中に、何か残っているかもしれない。


 いそいそと電源を付け、中のデーターを確認していく。

 最近雨は降っていなかったので、無事に動いてくれた。

 カチカチと操作し、中身を確認する。


「……え?」


 一番最後に撮った写真。

 ここに……今目の前にある神社の裏扉から、悍ましい腕がこちらに向かって伸びてきていた。

 ずいぶんブレてしまっているが、それくらいならこの写真からでも分かる。


 隣にいる雪野それを見せてみるが、首を横に振られてしまった。

 やはり知らないようだ。

 こんなもの、誰も知るわけがない。


 もう少しデータを確認してみると、この神社の麓からここまでを丁寧に一つずつ写真を撮って登って来ていたらしい。

 階段、鳥居、拝殿、周囲の風景、そして神社の裏手……。

 居なくなった友人は、確かにここにオカルトサークルとして調査をしに来ていたのだ。


 また、あの腕の写真を見る。

 これが友人を連れ去ったのだとしたら……。


「……」

「ちょっ! ま、待って!」


 おもむろに神社の裏門にカメラを向けようとした早瀬の手を、雪野がすぐに降ろす。


「何も考えずにやっちゃ駄目……!」

「だけどこんな得体のしれないもの、どうやって調べればいいんだ? 同じことやって、同じ場所に行かないとだろ? 助けないといけないんだから」


 淡々と説明する早瀬から、恐怖は感じられなかった。

 友人を助けたいという強い想いがありありと伝わってくる。

 そのためならば、何でもやってやると言わんばかりの。


 だが雪野としても、居なくなった友人は助けたい。

 自分たちがその友人にここの調査を一人で任せたから起こってしまった事件だ。

 責任は全員にあると考えている。


「やるとしても、一緒に……」

「……そうだな」


 カメラを二人が手に持った。

 そしてそれを、神社に向ける。

 シャッターを切った。


 だが、何も起こらなかった。

 腕が出て来ることもなければ、音も聞こえない。


 違う。

 これだけではあの腕を呼び出すことはできないのだ。

 ではどうすればいいのか。


「……ここは自殺の名所……」

「え……本気、なの……?」

「いざとなったら助けてくれな。さすがに死にたくはない」


 カメラストラップを外し、きつく結ぶ。

 それを後ろにあった木に引っ掛けた。


 ここは自殺の名所。

 であれば、自殺志願者と同じことをすれば呼び出せるのではないかと考えた。

 カメラストラップだけでは千切れるかもしれないが、本気で死ぬつもりはないのでそれでいい。

 最悪雪野に助けてもらう。


「よし、行くぞっ!!」


 バン、と大きな音がした。

 凄まじい速さで迫って来たしわがれた腕は、まず雪野を捕まえた。


「きゃああああ!!?」

「ゆきっ!? ぬおわああああ!?」


 同時に早瀬も一緒に捕まえ、強制的に引っ張り込む。

 神社の中に吸い込まれていったあと力強く閉じた扉の音だけがこだました。


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