ちょっとした思い出
こっちの世界には馴染んだもののたまにやらかす理津子。
そんな中夜の風呂上がりには週に一度体重計に乗っている。
身長に対して大体は平均体重なので至って健康体ではある。
そんな中アノットに少し不思議がられる。
「りっちんってさ、体重の割に体型がスラッとしてるよね」
「でも痩せすぎよりはいいだろ?僕は健康な女性は好きだぞ」
「ロザリオってそういうのが好みなんだ」
そこに風呂上りのラフな格好で理津子が戻ってくる。
その格好だけは今でも慣れないようだが。
「りっちん、相変わらず刺激的な格好しおって、少年の性癖が歪んじゃうでしょーよ」
「そういう事を言うアノットも人の事言えないよね」
「でも体重の割には体型はスラッとしてるよな、そこは意外っていうか」
「そうだねぇ、この写真見て、これ全部同じ体重の人ね」
「同じ体重なの?その割に細い人から太い人までいるね」
理津子が言うには筋肉が多いか脂肪が多いかの違いだという。
それによって同じ体重でも人のスタイルは千差万別。
スレンダーから太めの体型まで並んで同じ体重だというその写真。
「まーあたしが言うのもなんだけど、体重ってのは重けりゃデブってわけでもないぜ」
「そうなんだよね、大学の時にやたら痩せたがってる子とかいたよ」
「お前の世界の女性はミイラでも信仰してるのか」
「なんていうか細い事が美しいみたいな風潮はあったからね」
「それで痩せたいっていう女の子がいたんだ」
医学的に見れば理津子の体重は平均であり健康的な体重だ。
その一方で特に女性は痩せたいという人も結構いたと覚えている。
健康診断もあったのでその際に周りに重くないかと言われた事もあったらしい。
「りっちんの体重で平均なんだから、デブって言うなら10キロぐらい増してからよね」
「まあそれでもデブじゃなくて肥満に膝まで突っ込んでるぐらいかな」
「でもなんで女はそんな軽いものだと思われてるんだ」
「創作の影響もあるんだろうけどね、だから現実的な設定のキャラがデブ扱いだし」
「創作の影響だとしたら罪深いような」
なんにせよ痩せすぎは言うまでもなくよくない。
肥満も確かに問題ではあるが、痩せすぎも決していいものではない。
それは創作の影響や細いという事が美しさという風潮もあるのだと理津子は言う。
「なんにせよミイラみたいになる前に止めてやらんとそのタイプは死ぬよね」
「実際過度なダイエットによる拒食症とかになった人もいるって聞いたからね」
「拒食症?食べ物を食べられないって事か?」
「うん、無理なダイエットのせいでそうなったケースは聞いた事はある」
「そんなになってまで痩せたいっていうのも怖くない?」
実際理津子の周囲にはいなかったものの、そういう話はあるという。
それにより痩せるどころか健康を害してしまうような話も。
理津子は料理人の親がいたという事もあり、そういう事は厳しく言われていたらしい。
「なんかおっかないねぇ、まさに頭を使わない努力は余裕で裏切るってか」
「でもこの写真で分かるけど、同じ体重でもここまで差があるんだよね」
「右の写真を目指せばいいって事でいいのか?」
「別に体重を落とさなくても右の写真みたいになれるんだから、軽いが正義ではないよね」
「軽い細いが正義っていうのもなんかなぁ」
本人が言う60キロに限りなく近い59キロと自称する理津子。
身長を考えればほぼ平均体重なのでデブでもなんでもない。
こっちの世界ではそういう考えは聞かれないのが理津子の世界との違いか。
「でもダイエットするならきちんと頭使えよって事だよね、結局は」
「うん、あたしの世界でもダイエットって言葉が世に出た時から勘違いされてたらしいし」
「なんていうか、文字が読めない文盲の国なのか?」
「あたしの住んでた識字率は世界でもトップクラスなんだよ、それなのにだからね」
「なんにしてもダイエットって頭で食事をしろって事だよね」
セルベーラの言う事もまんざらでもないとは思う。
ダイエットとは頭で食事をする、例えとしてはなかなかに秀逸だ。
そんなダイエットに関する昔話だ。
「そんじゃそろそろ寝ようぜぇ、明日も早いから」
「だね、ホットミルク作ってあげるからそれ飲んで寝るよ」
「すまないな」
「そういうところはリツコだよね」
理津子のちょっとした昔話。
ダイエットは頭で食事をするというセルベーラの例え話。
理津子はそういうところは何気に感心している。
美しさとは細さや軽さの事ではないのだ。




