もうすぐクリスマス
すっかり冬の寒さが本格化した冬の港町。
そんな中理津子はあの日の準備を進めている様子。
とりあえず美味い飯をたくさん作るのはもちろん、お菓子も作る。
それの試作品などもまずは作る事に。
「りっちん、またいろいろ作っとるみたいね」
「もうすぐクリスマスだからだろ」
「そういえばそうだったね、こっちにはクリスマスなんてないし」
異世界なので当然クリスマスなんて日は存在しない。
とはいえ理津子がやりたいのだからやればいいのだ。
「クリスマスに作るお菓子とかの試作品かしら」
「うん、シュトーレンとかパネトーネとか他にもいろいろね」
「毎年作り方を変えてるのか?」
「とりあえずレシピは守ってるけど、分量とかは少し調整してるかな」
「いろいろやってるんだね、とりあえず食べようか」
パンやチキンなどを一通り作って試食する。
理津子曰くレシピは守っているが、ちょくちょく調整は入れているという。
なので味は毎年微妙に変わるようではある。
「でもクリスマスって宗教の教祖様の生誕祭なんよね?」
「一応はね、でも今はそういうのはあまり関係なくなってる気はするけど」
「そういうのも形骸化してるって事なんだな」
「うん、少なくとも他宗教の人でも普通に祝ったりするし、宗教は特に関係ないかも」
「つまりあくまでも美味しいものを食べてワイワイやる日みたいな感じなのかな」
今のクリスマスは形骸化していると言っても特におかしくはない。
なので美味しいものを食べてワイワイやる日みたいな感じと言われてもおかしくはない。
とはいえ日本自体他宗教の行事を全部やるみたいな国なので、そういう国民性なのか。
「そういやりっちんって元の世界では何かしらの宗教を信仰してたりするの?」
「うーん、特定の信仰はないかも、神道は宗教とは違うし、しいて言うなら仏教なのかな」
「仏教?神とはまた違う何かを信仰してるって事なのか?」
「神様に似てるけど、日本だと仏様っていう表現の方が一般的ではあるかもね」
「仏様、神様のようなものだけど神様とは違うのか」
日本は宗教的に言えば仏教の国であるとは言えるかもしれない。
宗教自体は他の教徒もいるとはいえ宗教的にいえば仏教が主流だ。
神道は宗教とは少し違う気がする、それは信仰とはまた違う何かがあるからなのか。
「日本って宗教的にはその仏教が割合的には多いって事なんね」
「うん、それに仏教の仏様って外国に逃げても普通に罰を与えてくるみたいな存在だし」
「要するに悪い事をするとどこに逃げても罰が下るみたいな感じなのか?」
「仏像を盗んだら外国が国ごと不幸にも見舞われたみたいな話もあるし」
「仏様は外国に逃げれば安全なんて事はないのか、凄いね」
日本は国教というと神道になるのかもしれないが、宗教という意味なら仏教になるのだろう。
それでも宗教自体は多様に入り混じっているので、信徒自体は多様に存在している。
とはいえやはり日本は仏教の国なのかもしれない。
「そういや神道っていうのは宗教ではないのん?」
「宗教には近いけど、宗教かと言われると違う気はするんだよね」
「つまり古くからその教えが続いてるだけで、神様を信仰してたりするものでもないのか」
「神道ってそれこそアニミズムとかヒューマニズムの仲間ではあると思うしね」
「アニミズム?ヒューマニズム?つまり自然信仰的な?」
神道はアニミズムやヒューマニズム的なもの。
自然信仰という表現が近いと感じるのが神道なのかもしれない。
なので神道はアニミズムやヒューマニズム的な考え方が近いのだろう。
「神道は自然信仰、それか精霊信仰みたいなものが近いっていう事なんかしら」
「うん、八百万の神っていうものがあって、その辺に落ちてる石とかも神様扱いするし」
「なんにでも神様を見出すっていう感じなのか」
「そんな感じ、万物に神様は宿るみたいな考え方が神道だし」
「万物に神様は宿る、だから神様はそれだけたくさんいるって考えてるのか」
神道は八百万の神という考え方が浸透しているもの。
なので神様はあらゆるものに宿るという事が神道の根底にある考え方だ。
神道は宗教なのかと言われると返答に困るのかもしれない。
「神道は神様はたくさんいるっていう考え方なのね」
「うん、氷の神様とかトイレの神様とか、他にもロボットの供養をするお寺とかあるし」
「つまり機械であっても神様は宿るし、人の手で作られた道具にも神様は宿るとかか」
「そんな感じだね、職人が魂を込めて作ったなんていう表現があったりするし」
「それが人工物であってもそこに神様が宿る事はあるみたいな考え方なんだね」
万物に神様は宿る、機械であって陶磁器であってもそれは変わらない。
神道としての考え方は八百万の神という事である。
ロボットの供養をする寺があるような国だからこその考え方なのか。
「美味しかったぜぇ、今年のクリスマスも楽しみにしとくわね」
「ならよかった、クリスマスはご馳走にするからね」
「こっちにはクリスマスなんてないのにな」
「まあ別にやっちゃいけないっていう法律があるわけでもないしね」
異世界なのでクリスマスなんてものは当然ない。
それでも美味しいものが食べたいのでクリスマスをやるというのが理津子だ。
クリスマスは美味しいものをたくさん食べられる日という認識なのである。
理津子にとってのクリスマスはご馳走が食べられる日なのだから。




