梅雨始めました
季節は夏になり港町にも夏の気温がやってくる。
とはいえ夏本番はもう少ししてからである。
そんな中日本では梅雨が始まっている様子。
異世界にも梅雨はないが雨季はあるという事らしい。
「少年、すっかり快復したみたいね」
「ああ、風邪でダウンするとは、僕とした事が迂闊だったな」
「とりあえずよかったのかな」
そんな理津子は暖かくなったという事もあり、少し涼のあるものを作っていた。
お菓子作りもすっかり手慣れたものである。
「お、和菓子かね、ずいぶん綺麗なもんが出てきたね」
「水まんじゅうを作ってみたんだけど、どうかな」
「和菓子ってこんなものまであるのか、凄いな」
「水まんじゅうは今では和菓子の定番だよね」
「とりあえず食べようよ、いただきます」
水まんじゅう、葛粉とわらび粉を使って作る和菓子だ。
冷やして食べるのが定番であり、もちもちしている。
包んだあんこが透明な見た目から透けて見えるのも水まんじゅうらしさだ。
「うん、美味しいわね、プルプルでひんやりしてていいわ」
「だね、和菓子そのものは売ってないけど、材料だけなら割と手に入るんだよね」
「それはたぶん他に使い道があるから売ってるんだろうな」
「この世界ってあたしの世界とはまた違うお菓子があったりするのかな」
「材料だけ手に入るっていう事はそういう事だもんね」
和菓子に使う材料だけは普通に店で買えたりする様子。
それはつまりこの世界には他に何かしらの使い道があり、料理やお菓子があるのだろう。
何に使うのかはよく分からないが。
「でも水まんじゅうなんて洒落てるわね」
「夏になったしね、日本だと梅雨入りしてるっぽいし」
「梅雨っていうのは確か雨季みたいなものでいいんだよな?」
「うん、梅雨とは言ってるけど、簡単に言うと雨季なんだよね」
「雨季かぁ、この国だと雨季は確か秋のはじめ辺りだよね」
こっちの世界にも雨季はあるという。
国によって季節は違うが、この国では雨季は秋のはじめ辺りになるらしい。
ちなみに学校の入学式なども秋なので、まんま雨季と被るという。
「雨季って嫌なのよねぇ、ジメジメするし、洗濯物は乾かんし」
「まあ日本の梅雨もそんな感じだよ、近年は豪雨災害の方が何かとあるらしいし」
「日本の雨季って豪雨になるぐらい降るのか」
「実際ここ近年は災害級の大雨とか普通にニュースで流れてた気がするし」
「災害級の大雨とか日本の気候は割とおかしいよね」
日本の梅雨は今や災害級の大雨が降るようになっている。
そもそも日本という国自体が自然災害大国である。
歴史の中で船で上陸しようとした侵略者が嵐に阻まれて上陸出来なかったなんて話もある。
「日本の雨季ってやばくね?なんでそんなに雨が降るんよ」
「まあこっちに来る前から、日本は異常気象が頻発するようになってたしなぁ」
「異常気象が頻発するような国に住んでる日本人はおかしいだろ」
「火山はたくさんあるし、台風は高確率で日本に上陸するし、地震は頻繁に起きるしね」
「日本っていう国が自然災害と戦ってきた国なのはなんとなく分かるかも」
日本は自然災害大国だからこそ個人主義な人は煙たがられるのかもしれない。
団結するという選択を取ったのはそんな自然災害と付き合っていくためだ。
個人が好き勝手するようでは日本では暮らしていけないからだ。
「日本は異常気象国家っていう事でいいんか?」
「昔はそんな事はなかったらしいけどね、近年にそうなってきてるって聞くよ」
「災害級の大雨、頻繁に来る台風、たくさんある火山、頻繁に起きる地震、凄い話だな」
「冬になれば北の地方なんかは世界屈指の豪雪地帯になるしね」
「もはや試されてるとしか思えない話だね」
日本という国自体が自然災害と戦い続けてきた国である。
そんな国で生きていくには自然災害への備えをとにかくしっかりするしかない。
だからこそ驚異的な耐震技術や排水に使う地下神殿のようなものがあるのだろう。
「日本っていう国は人が住める国にはおおよそ思えない話が多いわね」
「しかも国土の多くが山だからね、天然資源も水ぐらいしかないし」
「資源にも乏しいのに、国として成り立ってるのもまたすごいな」
「資源や食べ物の多くは輸入品だしね、自然災害に農作物がやられる話は多いし」
「そう考えると凄い話だと思うよね、日本ってそういう国なんだね」
自然の力は恐ろしいものである。
日本人はそれを何よりも理解しているからこそ、立ち向かうのではなく再生を選んだのか。
何度自然災害に国土を破壊されても立ち直ってきた不死鳥のような民族であるのは確かか。
「水まんじゅう美味しかったぜぇ」
「それはどうもね、またこういうの作ろうかな」
「涼を感じるっていうのも悪くないな」
「和菓子は食べる芸術だよね」
そんな夏の始まりを感じさせる時期。
これから本格的に夏が来る。
夏の食事もまた気をつけねばならないという事か。
夏は特に食材も痛みやすいからこそである。




